松倉 秀実さんのレビュー一覧
投稿者:松倉 秀実
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紙の本ビジネスモデル特許
2000/10/13 00:15
データベースとして有用な書籍。日米のビジネスモデル特許実例および紛争事例を網羅。初心者には多少難解か
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ビジネスモデル特許を知るための入門書というよりは,特許実務をある程度経験した実務家,研究者向けの書籍である。初心者がこの本を手にした場合,多少難解な用語や豊富過ぎる事例紹介の故に消化不良を起こすことにもなりかねないかもしれない。
コンピューター関連特許およびビジネスモデル特許を一通り勉強した専門家が手にすれば,極めて強力なデータベースと成り得るだろう。プライスライン社の「逆オークション特許」,アマゾン・ドット・コム社の「ワンクリック特許」などの日本でも十分に紹介され尽くしている事例から,トヨタ自動車の「かんばん方式特許」,NTTデータの「電子取引システム」など日本を代表するビジネスモデル特許の特許公報・公開公報までもが紹介されており,その事例の多さには驚かされる。さらに,米国での紛争事件について我が国であまり情報として知られていないものも数多く採り上げられている。また,「プライスライン対マイクロソフト事件」や「ステートストリートバンク事件」についてもその概略を知ることができ参考になる。
惜しむらくは,ステートストリートバンク事件以前の米国の状況,特にソフトウエア関連特許,ビジネス方法特許についての米国特許第101条の審査上,訴訟上の扱いについて,章を立てて解説がなされていれば法定主題(保護対象)についての米国の考え方の大きな流れが浮かび上がってきたのではないだろうか。
しかし,全体を通して執筆者の見解を押しつけるような表現はほとんど見受けられず,どの章,どの事例から読み始めても違和感なく読み切ることができる。
なお,書籍の宿命でもあるのだが,本書の出版後に3極専門家会合の報告書が出され,我が国ではこれに基づいた「コンピュータ関連発明の審査基準」が公表される予定であり,一方米国ではビジネス方法の保護の歴史をとうとうと述べたホワイトペーパーがWeb上で発表されており,日米両国の今後の動向にも注目しておく必要がある。
(C) ブックレビュー社 2000
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