氷川竜介さんのレビュー一覧
投稿者:氷川竜介
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ウルトラマン対仮面ライダー
2001/05/28 16:23
ウルトラマン対仮面ライダー
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日本のスーパーヒーローと言えば、まずウルトラマンと仮面ライダーの名前が挙がることは間違いない。どちらも初登場から30年を数えるのに、いまだ初代の人気も衰えず、新作がつくり続けられている驚異の超人たちである。そして「○○対××」は夢の対決シリーズを意味する言葉。本書は、この2大ヒーローの対決を書名とした時点で、すでにもう「勝ち」なのだ。最強ヒーローの共演、これ以上の快楽はない。
単行本バージョンが出た1993年は、「磯野家の秘密」や「ウルトラマン研究序説」が話題となっていたころだ。これらが、大人の視点という名目で作品を別の角度から見ようとしていたのに対し、本書は作品そのものに対して真っ向勝負に出たのが嬉しかった。
編著者は評論家の池田憲章氏とスタジオハード主宰の高橋信之氏。特に池田氏はかつて名連載『SF特撮ヒーロー列伝』であらゆるヒーローに熱筆をふるった人だ。現在に連なる特撮評価のルーツの一人なのである。この2大ヒーローを語り倒して面白くならないわけはない。
誕生、敵、世界、科学、ドラマ、メイキング……と各章の各ブロックでウルトラマンがと仮面ライダーが相対するように語られていく。読み進むにつれて、なぜ面白かったのか、どこが面白かったのか、豊富な写真と資料、証言で立体的に浮かび上がっていき、少年時代のワクワク感がよみがえってくる。
トリになっているのは、当時の円谷プロ社長円谷皐氏と萬画家の石ノ森章太郎氏……そう、お二人とも本書の後に物故されているのだ。思い起こせば、本書と同名のビデオが出て、ライダーもウルトラマンもそれぞれビデオや映画で新作もつくられた。そしてついに世紀末の世に二大ヒーローが、現代にマッチした理想的な形でテレビに帰ってきた。その原点となったのが本書と思うと、改めて感動を覚える。
21世紀に続くヒーロー伝説の新たな主発点の確認として、本書が文庫化されたことを素直に祝いたい。ヒーローファン必読の書である。
(氷川竜介/アニメ・特撮評論家)
Animageアニメポケットデータ 2000
2000/07/28 00:22
貴重な文化遺産と言える本なのである
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オタクの本質的愉悦のひとつに、「データの整理」があることは間違いない。
録画ビデオのラベル貼り、好きなアニメの放映リスト作成、俳優の出演作品一覧などなど、何らかの作品のデータ化は誰でもやったことがあるだろう。こうやって好きな対象を一回無機質なデータに還元して並べ替えてみる。すると、自分の思考や感情を超越して思わぬところの相関や目に見えない流れなどが浮かび上がってきて、なんだか思いもよらない相対的な感覚が浮かんでくる。それを軸に新たにアニメをしゃぶりつくすのもオツなものだ。
そんなオタク必携と言えるのが本書である。昨年末までのあらゆる国産アニメ作品に関して、テレビ・劇場・ビデオという大分類の中で基礎データが漏れなく収録されている。作品題名、公開年月日、製作会社、主要スタッフなどが手際良く並べてある。作品題名も、細かな副題や仮名漢字、ナカグロの有無など恐ろしく正確だ。これさえあれば「メガゾーン23と北斗の拳はどっちが先に作られた?」などという一瞬首をひねるマニアなクイズも楽々突破だ。800円さえ出せば、とにかく「全部のアニメ作品」について基本的なものが判る安心感は何ものにも代えがたい。
貴重な文化遺産と言える本なのである。
(氷川竜介・ライター)
地球はウルトラマンの星 ウルトラマンティガ・ダイナ・ガイア
2000/07/18 21:45
地球はウルトラマンの星
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『ウルトラマン』は、後の日本映像文化に強烈な影響を与えた偉大な作品である。
一見単純にも見える物語には、さまざまな人の想い、情念がこめられていた。切通が93年に発表した『怪獣使いと少年』 は60-70年代の「ウルトラシリーズ」を支えた金城哲夫、上原正三、佐々木守、市川森一ら4人の脚本家を触媒に、各人の生き様、考え方、そこから逆照射される評者自身の人生観にまで踏み込んで書かれた論考である。ことに金城・上原の作家性を読み解く鍵たる「沖縄」とその境界性に関する取材と考察は、ウルトラマンが「日本生まれのヒーロー」だと思いこんでいる固定観念を大きくゆさぶるものだ。
切通が今年挑戦した『地球はウルトラマンの星』は、論考部分を押さえ、「平成ウルトラマン三部作」の徹底したインタビュー取材を重ねてスタッフの意識を浮き彫りにした力作である。
かつてウルトラマンは「光の国」から来た神のごとき存在だった。「平成ウルトラ」は根本設定が違う。人間だれもが「光」を持っている。だからみんな「ウルトラマン」になれる。それが本書の題名にもある「平成ウルトラ」の骨子だ。この変革の構図は、偉大な作品を見上げていた60-70年代の少年が大人になり、新ウルトラをつくり、観たとき「では自分の光とはなんなのだ?」と内面からわきあがった疑問から生まれたものなのだろう。
壮大な回帰と進化の構図が実に2000年らしい。二冊の併読を強く推奨する。
(氷川竜介・フリーライター)
怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち
2000/07/18 21:35
怪獣使いと少年
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『ウルトラマン』は、後の日本映像文化に強烈な影響を与えた偉大な作品である。
一見単純にも見える物語には、さまざまな人の想い、情念がこめられていた。切通が93年に発表した『怪獣使いと少年』は60-70年代の「ウルトラシリーズ」を支えた金城哲夫、上原正三、佐々木守、市川森一ら4人の脚本家を触媒に、各人の生き様、考え方、そこから逆照射される評者自身の人生観にまで踏み込んで書かれた論考である。ことに金城・上原の作家性を読み解く鍵たる「沖縄」とその境界性に関する取材と考察は、ウルトラマンが「日本生まれのヒーロー」だと思いこんでいる固定観念を大きくゆさぶるものだ。
切通が今年挑戦した『地球はウルトラマンの星』 は、論考部分を押さえ、「平成ウルトラマン三部作」の徹底したインタビュー取材を重ねてスタッフの意識を浮き彫りにした力作である。
かつてウルトラマンは「光の国」から来た神のごとき存在だった。「平成ウルトラ」は根本設定が違う。人間だれもが「光」を持っている。だからみんな「ウルトラマン」になれる。それが本書の題名にもある「平成ウルトラ」の骨子だ。この変革の構図は、偉大な作品を見上げていた60-70年代の少年が大人になり、新ウルトラをつくり、観たとき「では自分の光とはなんなのだ?」と内面からわきあがった疑問から生まれたものなのだろう。
壮大な回帰と進化の構図が実に2000年らしい。二冊の併読を強く推奨する。
(氷川竜介・フリーライター)
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