末村 篤さんのレビュー一覧
投稿者:末村 篤
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マネー崩壊 新しいコミュニティ通貨の誕生
2000/12/28 12:17
草の根「地域通貨」による,持続可能な社会・経済システムの再構築への展望を示す啓もう書
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今日我々が通貨として受け入れているマネーは銀行債務(預金通貨)で,管理通貨制度の下では価値の裏付けのない一種の共同幻想に過ぎない。通貨の機能は交換手段,計算単位,価値貯蔵手段といわれるが,国民国家と銀行制度が生み出した強制通貨は,様々な副産物と矛盾をもたらしている。
通貨収集熱は富を巡る万人の万人への競争をうながし,古くは国民国家の重商主義政策の源にもなった。貨幣経済の浸透が人間の労働を商品(賃労働)化して雇用関係に組み込み,分業体制の発達とともに地域共同体(コミュニティー)の解体を進めたことは,古典的な認識といってよい。
著者はユーロ創設に携った通貨専門家で,副題が示すように,中心テーマは生活空間としての社会との関係における通貨の役割である。人間の欲望を刺激して経済発展を促すメカニズムを内包する通貨システムを生かしつつ,強制通貨の持つ負の側面,経済循環と雇用(社会)の極度の不安定化を正す解決策の一つが,補完通貨としての地域通貨という位置づけになる。
地域通貨の機能は,物々交換の延長にあるモノ(財)とサービス(労働)の交換に限定される。使用価値と相互信用を裏付けとするいわば財・労働本位制通貨といえるから,価値の貯蔵機能はなく,信用創造とも無縁だ。独り歩きしないゆえに,人間と人間の直接的な関係を復活させて,顔の見える相互扶助のコミュニティーを出現させる効果がある。雇用(賃金)によらずに交換手段を獲得できる点で,失業問題への対応策にもなるという。
マネー先導の市場主義の奔流は,人間社会とどう折り合うかを問われている。近代市民社会のベースの通貨に着目し,持続可能な人間の生存環境としての社会,経済システムへの展望を示した本書は,知的刺激に満ちた現代市民社会再構築の啓もう書といえる。
(C) ブッククレビュー社 2000
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