ほりうちしのぶさんのレビュー一覧
投稿者:ほりうちしのぶ
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2000/08/17 15:27
夢みる気持ちは愛おしい。
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ヤーノシュといえば「おばけりんご」(福音館書店)「大人のためのグリム童話」(宝島社)の印象が強く、シニカルで一筋縄ではいかないおじさんというイメージだった。「ぼくがげんきにしてあげる」(徳間書店)にでてくる小さなくまくんととらくんのシリーズを知るまでは。本作はそのシリーズの代表作といわれている。
川のそばの小さな家に幸せに暮らしていたとらくんとくまくん。ある日、バナナのにおいのするパナマと書いた木箱をひろったことから、夢みるパナマへの旅が始まる。釣り竿と鍋をかついで、動物たちに道案内されて、パナマ目指して進んだはずが……。
シンプルな寓話として読む人もいるだろう。二人のおまぬけさを笑う人もいるかもしれない。でも、ページをめくるごとに、この小さな二人がとっても愛おしく見えてくるのはなぜだろう。疑わず、ただただ目の前のことに対処して進んでいく二人。自分を取り囲む大きな世界をはじめてかいま見て「きれいだねえ」とうなずきあう二人。ヤーノシュのまなざしを感じるイラストがやさしい。
外や人にばかり夢見てうじうじしてるのは、夢見てるんじゃないんだね。自分にすねているだけかもしれないよ。
紙の本とまとさんにきをつけて
2000/08/08 16:25
五味さんにはきをつけて!
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「五味さんは絵本でコンセプチュアル・アートをやってるんだから」と今は亡き絵本作家、木葉井悦子さんが雑誌の対談で、五味さんにエールを送っていたのを思い出す。
「らくがき絵本」「質問絵本」(ともにブロンズ新社)のときもそうだった。
五味さんの絵本は読み手が直接、本の世界に入っていかないと本自体が成立しない、そういうギリギリのところでできている。今までは<作者からの問いかけ>というかたちで本ができていたけれど、今回のとまとさん、かえるくん、テレビくんの本はちがうよ。本の中から直接とまとさんが「かわいいっていって」とか「うたって」とかいってくるんだから。安穏と「本は本、私は私」と思ってちゃ、太刀打ちできません。小さな声でおざなりにやりすごしていると「もっとおおきなこえで、げんきよくうたって」っていわれるんだよ。そういうの、ちょっとなーという人やびっくり固まっちゃう人もいるかもしれない。
でも、そういう自分を発見するのもおもしろいと思うよ。おためしあれ。
2000/08/08 16:18
はたらく車、大好き!
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小さな子どものための自動車絵本はたくさんあるけれど、近年まれに見るヒットは、このマットくんシリーズだ。本作は「マットくんのしょうぼうしゃ」に続く2作目。
ピーター・シスは細かいふるえるような線画が印象深い絵本作家なのだが、こんなにかわいい、あたたかな絵も描けるんだとびっくり。息子さんのために作った絵本ときいて納得しました。
部屋いっぱいにちらかったトラックが9台。それぞれ、はたらき方が違います。おかあさんに「かたづけなさーい」といわれて、動かしはじめるうちに、どんどんマットくんは小さくなって、トラックの運転手に。すくったり、もちあげたり、はこんだり……お仕事しているうちにおかたづけができちゃった。そのあと、お出かけすると、本物のトラックがはたらいているのに出会います。このシーンが入るだけで、絵本の世界がぐんと広がる、たのしくなる。うまいなあと思います。
トラックにだけ黄色が使われたシンプルな画面。小さな子によりそった展開。単純でリズミカルな訳文が唄みたい。一度読んでもらえば、すっかり覚えて一人でもいっぱい遊べるね。とっても気持ちのいい絵本です。
2000/08/01 11:35
どんどん、どんどん……のたのしみ
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「おかあさん、わゴムなあい?」
絵本を読んで、すぐ出てきたのがこのセリフ。なんとも単純で、笑っちゃうようなわが息子である。でも、キミの気持ちはよおくわかるよ。
どんどん、どんどん、わゴムがのびるから、自転車にのって、バスにのって、汽車にのって、飛行機、そしてロケットにまでのりこんじゃうんだからね。さいごは、ボーンとわゴムがはねて、自分のお家のベッドのなかへ。これぞ、絵本の王道をいくシンプル・ベスト・ストーリー!
描かれて25年以上もたっているのに、ページをめくるドキドキはいつまでも色あせない。読んだあとで、ぼくも、と思わせてしまう親しみやすさ。読み手の視点で描かれたイラストには、アップからロングへとアニメーションのテクニックをさり気なく、効果的に使っているのが心憎い。
図書館で子どもたちにぼろぼろになるまで読み継がれ、ずーっと再刊が望まれていた絵本だというのもうなづける。
あは、あは、あははとわらってしまう、こんなおおらかな絵本、なかなかない。
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