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藤井良広さんのレビュー一覧

投稿者:藤井良広

2 件中 1 件~ 2 件を表示

日本経済新聞2001/03/25朝刊

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 一九九八年秋に、世界中の金融市場を震撼(しんかん)させて破たんした米ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)。その栄光と挫折の航跡を追ったノンフィクションである。
 本書の魅力は、グローバル金融の最前線で起きたドラマを独自の調査で再現する一方、難解なデリバティブ(金融派生商品)の世界を、その理論形成過程から実際の運用までを比較的わかりやすく解き明かしている点だ。古代バビロンのハムラビ法典にオプション取引の原点を見いだし、米国の南北戦争での北軍の食料確保要請がシカゴ先物取引の基盤だった逸話など。
 ただ、そうした逸話は読者をデリバティブの世界に興味を引かせるための道具でしかない。本書の真のテーマは、伝統的な経済学が示す「均衡」の概念に対して、LTCMの野心家たちが、各国市場間や異なる金融商品、契約期日などの違いで起きるミスプライスを前提にした「裁定」のビジネスを打ち立てた点への評価だろう。
 プライシング理論でノーベル賞受賞のマイロン・ショールズ、ロバート・マートンらと、ウォール街きっての敏腕トレーダー、ジョン・メリウェザーとその盟友たちが連携すること自体、学界とビジネス界との領域を越えた裁定の一例といえる。
 リスクを徹底管理し、天空に浮かぶラピュタの王のごとき栄華を誇ったLTCMが、そのリスク管理の巧みさ故に、制御不能に陥って墜落していく過程は圧巻だ。著者の冷静な取材力に感謝する以外ない。グローバル金融の奥の深さと、その意外なもろさをのぞいた思いだ。
 破たん処理をめぐる欧米投資銀行の冷酷な交渉と、最後の一枚までカードを捨てないメリウェザーのしたたかさにも感服させられる。LTCMは伝説となったが、均衡に挑む裁定の理論とビジネスの挑戦はさらなる伝説を生むだろう。日本の金融がその伝説の一員に加わるにはかなり時間がかかりそうだが。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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日本経済新聞2000/3/12朝刊

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 本書は、八〇年代に低迷していた米国産業再生の処方せんを描いた米マサチューセッツ工科大(MIT)編の『メイド・イン・アメリカ』(一九九〇年)の続編になる。著者は当時のとりまとめ役だった。米経済は前著の成果か、競争力を回復し、ニューエコノミーをおう歌している。
 だから、米経済賛美の書かというと、そうではない。IT(情報技術)革命で、「景気変動を超えた」という楽観論とは一線を画す。前著では、モトローラ、リーバイ・ストラウス、ニューコアなどの「ベストプラクティス」を実現する企業群を取り上げ、彼らの競争力の背景には、組織を一貫したシステムとして改革する原則と、プロセスの堅持にあると結論付けた。本書ではさらに進めて、そうした組織改革の推進力は何かと問う。
 著者は、「市場の圧力」「顧客の声」などの予想される答えを飛び越え、「内なる声」をあげる。従業員も共有する企業内の信念あるいは理念。組織プロセスと構造に対する評価といい、なにやら伝統的日本企業を思わせる。
 ただ、「内なる声」はあくまでも、新たな技術革新や市場の発展に応じて、組織を柔軟に変革する意識的な力を伴って、初めて競争力に転じる。多くの日本企業が無意識的に「企業一家」を営み、景気低迷の中で、方向感もなく求心力を失いつつある姿とは、明らかに異なる。
 現代社会が不確実性との共存を避けられないとすれば、企業も従業員も、その不確実性に耐えねばならない。耐えられるかどうかは、労使が「内なる声」を共有し、意識的な組織改革をどこまで実践できるかにかかってくる、というのが著者のメッセージだ。
 企業はだれのためにあるのか、組織と個人の相互の在り様はどこまで変わるのか。本書の根源的な問いかけに、明確に答えられる経営をしているかどうかで、企業の競争力も推し量ることができそうだ。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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