小森 雅夫さんのレビュー一覧
投稿者:小森 雅夫
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デジタル・ストリーム 未来のリ・デザイニング
2000/10/26 00:18
日経コミュニケーション1999/7/15
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過去を語る者は多いが,明日を予見しうる者は極めてまれである。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディア・ラボを創設したニコラス・ネグロポンテ教授が,「メディア・フュージョン」(メディアの融合)を提唱したのは,既に15年以上も前。放送,出版・印刷,コンピュータが一体化していくという概念であった。
本書の著者である杉山氏は,ディジタル・クリエイタを養成する老舗の専門学校「デジタルハリウッド」の校長であり,経営者でもある。87年から90年までの3年間をMITメディア・ラボで研究員として過ごし,その3年間がその後の進路に決定的な影響を与えた。「コンピュータとネットワークが人類全体に共通するメディア」という確信を得たらしい。
メディア・ラボは,インタフェースを開発する研究所であると同時に,教育の場であり,先端ビジネスの現場でもあった。著者はここで,ビジネス感覚と,優れた研究者との交流を通じたリテラシ教育の重要性を感じた。そこで,デジタルハリウッドでは,今後の日本にとってこうあるべきだという教育の方向性の一つを具体化した。教育カリキュラムに従った画一的な授業にはしなかった点である。
デジタルハリウッドには,元サラリーマン,主婦,大学生などが,CGクリエイタを目指し,自分自身の希望を持ち通学している。校長である著者は,こうした彼らに「環境」を与えることが重要な仕事であるとしている。MITメディアラボがそうであったように,自主性が能力を高めるからである。
著者はまた,コンテンツをビジネスとして成り立たせる企画を立て,資金を集め,実行に移すことができるプロデューサの必要性を説く。まったくその通りである。私も,昨年10月に,美術文化関連のコンテンツを扱う会社を設立し日々,そのことを痛感している一人である。
著者のビジョンは遠大である。コンピュータとネットワークにより,ビジネスのリ・デザイン,地球環境問題のリ・デザインから,人間そのもののリ・デザインにまで至る。スタンリー・キューブリック監督の古典的SF名画「2001年宇宙の旅」のエピローグは,新しい人類の出現を予感させた。著者の言う「大いなる未来」には,自分自身もメディア化した新しい人類が出現しているのであろうか。
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