菊地峰夫さんのレビュー一覧
投稿者:菊地峰夫
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沖縄、基地なき島への道標
2000/11/08 17:30
前知事が感傷を排して語る自治体起立論
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旅行代理店の統計によれば、この夏、サミット終了後の沖縄には、例年を遥かに上回る観光客が訪れる見通しという。
世界屈指の美しい海と渚を持ち、「めんそーれ」と各地からの観光客を迎える沖縄は、しかし、言うまでもなく基地の島である。
対国土面積1パーセント弱の島に、在日米軍施設の実に80パーセント近くが集中し続けているという事実。それが沖縄の現実であるばかりでなく、「戦後55年を経た日本の現実」であることを、前沖縄県知事の著者は淡々と説く。さらに本書では、歴史的背景や国際情勢をひもときつつ、海上基地構想の是非、基地返却後の地域振興策、島独自の外交政策、過去・現在・未来に亘る沖縄独立論に至るまで、冷静な解析と検
討が試みられている。
その沖縄県をよく知る時、中央(国家)と真剣に斬り結ぶことを強いられ続けた一自治体の姿が浮かび上がり、その姿勢には、あるべき凛々しさが秘められていることに気付く。
死んだふり
2000/11/08 17:22
あの事件の上を行く悪党&悪女の保険金詐欺戦争
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悪党が跋扈するピカレスク小説は、なぜベストセラーの一角を占めるのだろうか。スリルとサスペンスなら推理小説でも堪能できるはず。ひょっとしてよりカタルシスに富むからだろうか。本書は、破産目前の金満家、その妻、妻の愛人が三つ巴になって織り成す、喰うか喰われるかの保険金殺人の顛末だ。となると、どこぞの国の陰鬱な現実を想起してしまいそうだが、舞台は日本人ごひいきのハワイであり、作風は『太陽がいっぱい』にも通じるものがある。悪魔に魂を売り渡したような怪紳士ジャック、ナイスバディを誇る悪女ノーラ、マッチョなサーファーのチャド、この三人の誰に感情移入してしまうかは、読み手の性別や年齢によっても異なるかもしれない。売れっ子脚本家である作者はどんでん返しを連発して読者を慌てさせる。最後の数行まで安心できないところは、快作のお約束通り。この夏、浜辺で太陽を浴びながら、「死んだふり」をして読破したい一冊。
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