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  3. 彦坂暁さんのレビュー一覧

彦坂暁さんのレビュー一覧

投稿者:彦坂暁

24 件中 1 件~ 15 件を表示

ミトコンドリアと生きる

2001/01/18 16:05

最新の生命科学が描き出す、新しいミトコンドリア像

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ミトコンドリアの中心的な機能は呼吸によって生命活動のエネルギーを作ること。高校の生物では、そう教えられた。それはもちろん正しいのだが、最近の研究はそれ以外のさまざまな生命現象にもミトコンドリアが関与していることを明らかにしつつある。本書はミトコンドリアについて分かりやすく解説した一般書だが、通り一遍の教科書的解説で終わることなく、最新のトピックスをふんだんに盛り込んで、新しいミトコンドリア像を描きだしている。
 たとえば発生学分野から、生命の連続性に関る生殖細胞の形成にミトコンドリアが関っているという話題。プログラムされた細胞死(アポトーシス)をミトコンドリアが調節しているというトピック。ミトコンドリアの異常によって起きる病気の話。老化とミトコンドリアDNAの損傷との関係など。まさに我々の生老病死、あらゆる場面にミトコンドリアが関与していることがよく分かる。
 なお著者の一人、瀬名氏は言わずと知れたベストセラー・ホラー『パラサイト・イヴ』の作者。文章のプロが書いているだけあって、たいへん読みやすく、その点でもポイントが高い。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

目次
はじめに
第1章 ミトコンドリアと生命進化の宿命
第2章 危険なエネルギープラント ミトコンドリアの姿と働き
第3章 遁げろDNA ミトコンドリア遺伝子の大移動
第4章 人類の起源と民族の大移動
第5章 生死を決定するミトコンドリア
第6章 ミトコンドリアと病気
第7章 老化とミトコンドリア
あとがき

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心はどのように遺伝するか 双生児が語る新しい遺伝観

2000/11/16 02:24

遺伝の誤解を解き「人間行動遺伝学」の基礎を伝える

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人間の心が「遺伝」と「環境」の相互作用によって形成されることは、一般論としては誰もが認めるだろう。しかし人の諸々の「性格」や「知能」には、実際にどの程度まで遺伝や環境が関与しているのか? この疑問に双生児研究などの手法を用いて答えようとするのが人間行動遺伝学で、本書はその入門書だ。一卵性、二卵性双生児の比較から、どのようにして遺伝や環境の影響を数値化するのか、その数値をどう解釈するのかなど、行動遺伝学の基本的な研究法と考え方が易しく解説されている。
 もちろん心の遺伝学的研究に対しては多くの批判もある。中には「遺伝的=決定論的」というような単純な誤解に基づくものもあるが、双生児研究の妥当性などについての、専門的な批判もある。本書は、このような批判への反論にもかなりのスペースを割いている。
その議論に納得できるかどうかはともかく、批判にフタをせず、正面から答えようとする姿勢は評価できると思う。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

<本書の「参考文献」から>
『遺伝と環境 人間行動遺伝学入門』(R.プロミン著)
『子育ての大誤解 子どもの性格を決定するものは何か』(ジュディス・リッチ・ハリス著)
『優生学の復活? 遺伝子中心主義の行方』(ブライアン・アップルヤード著)
『人種 進化 行動』(J・フィリップ・ラシュトン著)
『DNA伝説 文化のイコンとしての遺伝子』(ドロシー・ネルキン、M・スーザン・リンディー著)
『人間の測りまちがい 差別の科学史 増補改訂版』(スティーヴン・J・グールド著)
『遺伝子という神話』(リチャード・レウォンティン著)
『続 科学の終焉(おわり) 未知なる心』(ジョン・ホーガン著)
『遺伝子万能神話をぶっとばせ』(ルース・ハッバード、イライジャ・ウォールド著)

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「顕微授精」最新情報 男性不妊の救世主

2000/10/05 03:21

不妊治療の識を必要としている人のための実用書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は不妊に悩む人たちのために、不妊治療の最先端をやさしく解説した本。著者は不妊治療を専門とする産婦人科医院の院長で、実際の治療はもちろんのこと、無精子症などの治療法の研究にも力をいれている医師である。とくに本書のタイトルにもなっている、顕微鏡下で卵細胞に精子を注入する体外受精法「顕微授精」は、この本の目玉の一つだ。精子の成熟不全などの重い男性不妊の克服も可能にしたこの技術を、著者の医院での治療実績も紹介しながら、詳しく解説している。
 その他、不妊の原因にはどのようなものがあり、それぞれどのような治療法が適しているのか、それらの治療は具体的にどのように行われるのか、必要な検査や施術、かかる日数や費用なども含めて、患者が知りたいであろう情報をきちんと提供している。不妊治療に関する知識を必要としている人たちのための、いってみれば「実用書」だが、実用書としてはとても良くできていて好感がもてた。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

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カラスの早起き、スズメの寝坊 文化鳥類学のおもしろさ

2002/08/30 12:15

「人間味」あふれる鳥たちの姿を描いた“文化鳥類学”

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 科学の世界では一般に生物の擬人化は慎むべきだとされているけれど、日常生活の中で動物の行動を見ていると、どう見ても人間のような感情や知性を持っているとしか思えないことがある。哺乳類はもちろんだが、鳥にもそういうところが多分にあって、それが世に鳥類愛好家が多い一つの理由なのではないだろうか。

 本書はそんな鳥たちの「人間的な」姿をいきいきと描いたエッセイ集である。たとえばモズの「夫婦」をとりあげた最初のエッセイ。モズは春には子育てのためにつがいが協力してなわばりを確保するが、秋になるとオスとメスは互いに自分だけのなわばりを維持するため、対立関係にはいる。やがて春が来て、さて昨日まで対立していたオスとメスが和解して再びつがいを作らなければならない。その時、かれらはどのような行動をとるのか、という話なのだが、その行動がいかにも「人間的」で面白い。

 評者は生物学を専門にしている者なので、その立場からいえば眉をひそめたくなるような記述も随所にあったのだが、では本書が面白くなかったのかと問われれば、面白かったと答えざるを得ない。バード・ウォッチャーでも鳥マニアでもないが、子供の頃には鳥を飼い、毎日の自転車通勤の途中には必ず鳥の姿を目で追うという程度には鳥が好きなので、文化人類学ならぬ「文化鳥類学」を標榜する著者が描く「人間味」あふれる鳥たちの姿は、鳥たちと接していて感じる自分の実感ともマッチしていて、とても愛すべきものに思えた。

 考えてみれば、鳥はつがいで子育てをするものが多いし、群れを作って生活するものも多い。その点ではヒトと似たような生活を送っているともいえる。鳥が人間にとって感情移入しやすい生き物であることには、そんなことにも理由があるのかもしれない。本書を読んで、改めてそう思った。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)


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バイオインフォマティクス ゲノム配列から機能解析へ

2002/07/22 18:15

分子生物学者、生化学者必携のテキスト

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 分子生物学、生化学の進歩によって、DNAの塩基配列、タンパク質のアミノ酸配列や立体構造などの情報は爆発的に増大し、日々データベースに蓄積されている。その膨大な情報の中から意味のある情報を取り出すための諸理論とツール群が、コンピュータの性能の向上を背景としつつ開発されている。

 インターネットのおかげで、これらの情報と解析ツールへのアクセスも容易になった。十年前には考えられなかったことだが、いまの時代、分子生物学の研究者が何かアイディアを思い付いたら、まずやるべきことはPCの前に座ってWeb上のデータベースを検索することである。これらをどれだけうまく利用できるかが研究の進展の鍵を握っているといっても過言ではない。

 この急速な進歩は、研究者に生物情報の処理という新たなスキルを要求している。しかし、いま現在どのような解析ツールが存在するのか、それぞれのツールはどのような理論に基づいていて、どのような利点や限界があるのかを十分に理解しておこうと思えば、かなりの努力が強いられる。

 本書はそのような悩みを抱える研究者への福音である。研究者が知っておくべき生物情報の入手方法、解析方法を網羅し、データベースの相同性検索、配列のアラインメント、タンパク質の構造予測など、研究の場面で常に必要となる作業についてはフローチャートにまとめ、それぞれの場面で利用できるツールを紹介し、それらが存在するサイトの一覧表もついている。まさに至れり尽くせりの内容である。

 さらに特筆すべきことは、このように実用性の高いテキストでありながら、ただツールを使えれば良しとするのではなく、背景にある理論まで丁寧に解説してあることだ。訳者も序文で述べているように、分子生物学者必携のバイブル『Molecular Cloning』のバイオインフォマティクス版とも言える内容である。研究室のPCの脇に常備したい一冊だ。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)


【目次】
1 バイオインフォマティクスの歴史と全貌
2 配列の収集と蓄積
3 対にした配列のアラインメント
4 多重配列アラインメント
5 RNA二次構造の予測
6 系統推定
7 類似配列のデータベース検索
8 遺伝子予測
9 タンパク質の分類と構造予測
10 ゲノム解析
用語解説
索引

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ルーシーの膝 人類進化のシナリオ

2002/05/31 18:15

人類史のシナリオと、ヒロイン「ルーシー」の物語

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 人類はどこから来たのか。いつの時代に、どのような祖先から進化してきたのか。かれらはどのような姿で、どんな生活を営み、何を感じ、何を考えていたのだろうか。人類のルーツを知りたいという思いにかられて、研究者たちはひとかけらの骨や歯、足跡の化石を求めて世界中を探索し、そこから多くの情報を読み取ってきた。

 研究者らが歴史の底から掘り起こしてきた化石人類たち。その中でも、とりわけ雄弁な歴史の語り手がいる。太古のアフリカに生きた前人類、アウストラロピテクス・アファレンシスの女性「ルーシー」。彼女は300万年の時間を超えて、奇跡的にほぼ完全な人骨として現代に姿を現した。

 本書はルーシーの発見者の一人である著者コパンが、この人類史のヒロインを中心にすえて、人類進化のシナリオを描いた本だ。アフリカにおける大地溝帯の形成と、その東側での乾燥化による環境変化が、直立二足歩行という前人類の進化を促したという興味深いシナリオ「イーストサイド・ストーリー」(一章)。さらに300万年前に起きた新たな乾燥化が、雑食性と思考力の増大という適応を促し、ヒト(Homo)属を生み出したというストーリー「オモ事件」(二章)。コパンが提唱する、地球規模の地質学的、気候学的変化と人類の誕生を結び付けた壮大な進化のドラマは魅力的だ。

 この波瀾万丈の歴史の中で、ルーシーと仲間たち、そして同時代を生きた別種の前人類たちは、どのように生きていたのか。著者は化石から読み取れるルーシーたちの暮らしぶりをいきいきと描き出している(五章)。彼女たちはどのように歩き、どんな声を発していたのか。何を食べ、どのような社会を作っていたのか。読みながら、彼女たちの「人生」にあれこれと思いをめぐらせる楽しみを味わうことができた。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

【目次】
「ルーシーの膝」解説
まえがき
一章 「前人類」 人間以前の人類の歴史 ——ヒト科の起原
二章 人類 人類と人類の歴史 ——人類の起原
三章 歴史的展望 人類史の歴史
四章 自伝 私の人類学の歴史
五章 化石としてのルーシー 人類史の歴史のヒロインの歴史
六章 象徴としてのルーシー 人類史のヒロインの歴史の歴史
おわりに
参考文献

【関連書】
C・ストリンガー、R・マッキー著『出アフリカ記人類の起源』岩波書店
リチャード・リーキー著『ヒトはいつから人間になったか』草思社
D・ジョハンスン、J・シュリーヴ著『ルーシーの子供たち』早川書房
ブライアン・サイクス著『イヴの七人の娘たち』ソニー・マガジンズ

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ダ・ヴィンチの二枚貝 進化論と人文科学のはざまで 上

2002/03/28 22:15

グールドの珠玉の科学エッセイ第8弾

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ファンにはお待ちかね、グールドの科学エッセイ8冊目の登場だ。いつものように生物、歴史、科学、芸術の知識を縦横に駆使したエッセイ21本を、存分に楽しむことができる。

 たとえば本のタイトルになっているレオナルド・ダ・ヴィンチ。中世的世界にありながら近代的な科学の方法を駆使した素晴らしい研究を行い「時代を超越した」大天才とされている。しかし著者はダ・ヴィンチの古生物学の仕事を詳しく検討し、実はダ・ヴィンチの化石の研究は、自らのきわめて中世的な信念を証明するために行われたことを明らかにする。歴史上の人物に我々が抱いているイメージを、原典に立ち返り、別の角度から再検討することで新しい像に組みかえてしまうというグールドの得意技が見事に決まっている。

 グールドが料理するのは歴史上の人物ばかりではない。進化について我々が抱いている通念も俎上に乗せられる。たとえばラマルクの獲得形質の遺伝説よりダーウィンの自然淘汰説が優れていることの説明として、おそらく最も頻繁に引き合いにだされる例に「キリンの首」がある。しかしこれはダーウィン説の優位を示す例として本当に適切なのか? グールドの答えは「ノー」である。そもそも進化理論の創始者たちにとってキリンの首はそれほど重要な問題ではなかったし、「長い首は高いところの葉を食べるのに有利」式の説明は、現代においても正しいという証拠はないとグールドは論じている。

 このように、偏見、通念、偶像の破壊というグールドが一貫して書いてきたおなじみのテーマは、本書にも貫かれている。それでいて飽きがこないのは、歴史上のエピソードやユニークな生物など、興味をひかれる細事から出発して、一般性をもつ大きなテーマを浮かび上がらせるというグールドお得意の手法のおかげである。目からウロコがボロボロ落ちるというグールドファンの楽しみを、本書でも味わっていただきたい。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

★下巻はこちら→『ダ・ヴィンチの二枚貝 下』

【目次(上巻)】
まえがき 八つの作品 ---- 人文主義的ナチュラリストの告白

第一部 芸術と科学
 1章 生きている地球の山を化石に登らせたレオナルド
 2章 グレートウェスタン号と戦艦テメレール号
 3章 面と向かって明瞭に見る

第二部 進化論の伝記
 4章 彼女のナチュラリストたちによって裸にされた貝、さえも
 5章 ダーウィンのアメリカの盟友 ---- 鳥瞰図
 6章 すべての人種にとっての海馬
 7章 ソフィア氏の小馬

第三部 人類の先史
 8章 壁にぶつかる
 9章 巨匠の教え
 10章 人類は一つであることの異例さ


【目次(下巻)】
第四部 歴史と寛容について
 11章 クリストファーのためのセリオン
 12章 コーカス競争のドードー
 13章 ウォルムス国会とプラハ窓外放出事件

第五部 進化の事実と理論
 14章 重ならない教導権
 15章 ボイルの法則とダーウィンの細事
 16章 長い長いほら話
 17章 裏返しの関係(あるいは一寸の虫の居直り)

第六部 ありふれた真実の異なる見方
 18章 火星人騒動
 19章 根っこ頭の勝利
 20章 ほんとうのナマケモノとハゲタカを知るには
 21章 確立された秩序の逆転

訳者あとがき
図版クレジット
文献目録

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ジェンダーは科学を変える!? 医学・霊長類学から物理学・数学まで

2002/02/28 22:15

女性を排除してきた科学を、ジェンダーの視点で変革する

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は3部から構成されている。はじめの2部では、女性が科学から排除されてきた歴史と、改善されたとはいえ今もなお科学から遠ざけられている実態が明らかにされ、その要因が分析される。1992年に発売されたおしゃべりバービー人形が「算数って、むずかしいわ」という台詞をしゃべったという話に象徴されるように、男女の適性や性役割に関する固定観念、そして教育の場でのジェンダー・バイアスが根強く存在する。科学の世界に足を踏み入れた女性は専門家たちのジェンダー化された文化に直面することになる。専門職についた女性には家事や育児の負担がのしかかる。著者は女性の科学への参入を困難にしてきたこれらの諸要因を多くの証言とデータにもとづいて明らかにし、解決の方法を探っている。

 第3部では女性の排除が科学の内容にどのように影響してきたか、そしてジェンダーの視点が科学の内容をどのように変えてきたのかを論じている。たとえば医学の分野では主に男性の身体が研究対象とされてきたことに批判がおこり、女性の健康に関する研究が強化された。霊長類学では「雌の視点」の導入が学問の革新をもたらした。考古学や生物学においても、性に関する暗黙の前提、固定観念が、科学の扱う対象、事実の解釈、専門家が使う用語や比喩、科学の内容にまで影響を与えていることが批判的に明らかにされてきた。

 本書を読んで印象的だったのは、科学論やジェンダー論の本の一部に見られる抽象的な難解さや、牽強付会と感じられる議論がほとんどなく、穏当で説得力のある議論が展開されていることだった。この分野に苦手意識をもつ方にもお薦めできる本だと思う。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部)

★詳しい目次はこちら→【目次】

【「ジェンダーと科学」に関する書籍】
ロンダ・シービンガー
 『科学史から消された女性たち』工作舎
 『女性を弄ぶ博物学』工作舎
エヴリン・フォックス・ケラー
 『ジェンダーと科学』工作舎
 『生命とフェミニズム』勁草書房
 『機械の身体』青土社

ダナ・ハラウェイ『猿と女とサイボーグ』青土社
シンシア・イーグル・ラセット『女性を捏造した男たち』工作舎
アン・ファウスト=スターリング『ジェンダーの神話』工作舎
マーガレット・アーリク『男装の科学者たち』北海道大学図書刊行会
トマス・ラカー『セックスの発明』工作舎

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時間・愛・記憶の遺伝子を求めて 生物学者シーモア・ベンザーの軌跡

2002/01/30 22:15

生物の行動を遺伝学的に“解剖”する

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 暗い実験室。試験管にたくさんのショウジョウバエが入っている。その一端を蛍光燈で照らすと、ハエたちは光に向かって進んでいく。これがショウジョウバエの一般的な習性だが、しかし中には光に向かわず、じっと動かない個体もいる。ハエの行動には個性があり、そしてその背景には遺伝的な違いがある。この単純な事実から出発して生物学における一大フロンティアを切り拓いたのが、シーモア・ベンザーと彼の仲間たちだった。

 生物の行動を遺伝学的に“解剖”する——これがベンザーたちの求めた夢だった。かれらはショウジョウバエの遺伝子に変異を起こさせ、異常な行動を見せる個体を選別した。たとえば生体内で刻まれるリズム(生物時計)が異常になったハエがいれば、その個体は“時計遺伝子”に異常をもつと考えられる。かれらがそれを探していた当時、他の誰もそんな遺伝子が見つかるとは思っていなかった。しかしベンザーたちは実際にそれを見つけた。かれらは他にも、求愛行動に異常をきたす変異、記憶に障害がでる変異などを探索し、そして発見した。かれらの後を追って、多くの研究者たちが参入してきた。そしていまや“行動の遺伝子”はハエのみならず、マウスなどの哺乳類でも活発に研究されるようになり、行動の分子遺伝学は生物学の一大分野となった。

 物理学から出発して生物学に転じ、当時のフロンティアであったファージの遺伝学で名を成したベンザー。しかし彼はそこに安住せず、行動の遺伝学的解剖へと足を踏み出し、そこで再び新しい分野を切り拓いた。彼と周囲の人々の研究の軌跡をたどった本書は、科学の世界の、フロンティア精神にあふれた冒険譚のように読むことができる。ピュリッツアー賞を受賞した名著『フィンチの嘴』で進化学の研究を魅力たっぷりに描き出した著者ワイナーの筆は、ここでも読む者を飽きさせない。

(彦坂暁/広島大学総合科学部)

【目次】
第1部 オッカムの城
 第1章 かくも単純な発端
 第2章 白眼のハエ
 第3章 生命とは何か
 第4章 天使の指
 第5章 新しい研究と暗い片隅

第2部 コノプカの法則
 第6章 最初の光
 第7章 最初の選択
 第8章 最初の時間
 第9章 最初の愛
 第10章 最初の記憶

第3部 ピケットの突撃
 第11章 ショウジョウバエの腕
 第12章 本能のクローニング
 第13章 本能を解読する
 第14章 焼き焦がされた翅
 第15章 神の芸術作品
 第16章 パヴロフの帽子
 第17章 荒涼たる山
 第18章 われわれの状態の結び目
 第19章 ピケットの突撃

謝辞
原注
訳者あとがき
図版クレジット
参考文献
人名・機関名索引

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拝啓ダーウィン様 進化論の父との15通の往復書簡

2001/12/20 22:16

ダーウィンとの「往復書簡」で解説する「分子駆動」の理論

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 本書は「進化学の祖ダーウィンと、現代の分子生物学者の架空の往復書簡」という形式で書かれた進化学の解説書だ。

 生物の進化をもたらす仕組みは何か。ダーウィンの時代には「自然淘汰」がその答えだった。現代の生物学者はそれに「遺伝的浮動」を付け加えるだろう。著者ドーヴァーはさらに、もう一つの機構「分子駆動」を提唱する。

 転移性の遺伝因子(トランスポゾン)が染色体の別の場所に飛んだり、並んだ2本の染色体が異なる場所で乗り換え(交叉)を起こしたりといったDNAのターンオーバーと、有性生殖による染色体のシャッフリングにより、集団中に新しい変異が広がり、遺伝的な組成が変化する。自然淘汰とも遺伝的浮動とも異なるこの進化の機構をドーヴァーは「分子駆動」と呼んだ。

 自然淘汰、遺伝的浮動、分子駆動の3つが相互に影響しつつ作用することで生物は進化してきた、というのが著者の立場だ。従って彼は生物の新奇な機能は自然淘汰による適応の産物であるという考え方にも反対する。新しい機能は自然淘汰、遺伝的浮動、分子駆動のいずれによっても進化しうるからだ。このような理由で(そして他の理由からも)彼はドーキンスらの唱える「利己的遺伝子」説にも反対の論陣を張っている。

 本書のもう一つの特徴は、個体発生、とくにその分子メカニズムについての最近の知見を大幅に取り入れていることだ。生物の進化を理解するには、発生を司る遺伝子ネットワークがいかにして進化するのかを理解しなければならない。遺伝子の発現を調節するプロモーター領域や、そこに結合するタンパク質の進化様式からも、分子駆動が進化に重要な役割を果たしたことが分かると著者は主張している。

 「架空の往復書簡」という形式については好みが別れるだろうが、現在進行中の進化学の新しい総合の動きをいきいきと伝えてくれる本であり、進化に興味のある人なら読んで損はしない。

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日本の博物図譜 十九世紀から現代まで

2001/11/20 22:16

精確で美しい、日本の博物図譜の数々

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 書店で本書を手にして、精緻でいきいきとした図版の数々にしばし見入ってしまった。オンライン書店の欠点の一つは立ち読みができないことで、この本の魅力も書評を読むより実際に手に取って最初の三十数ページの図版を眺めてもらった方がずっとよく伝わると思うのだが、そうもいかないのが悩ましいところだ。

 本書はタイトルのとおり、江戸時代から昭和にかけて日本で描かれた博物画に関する本である。とり上げられている画家は尾形光琳や牧野富太郎といった有名どころからほとんど無名の画家までさまざま。構成は、冒頭に40名の筆による89点のカラー図版。第一章は博物図譜とそれを作製、所蔵してきた博物館の歴史に関する総説。第二章では個々の博物画家たちについて、その作品とプロフィールを紹介している。

 博物図譜は本来、実物を正確に写生することを旨とする。そこに必要とされるのは対象を徹底して観察する眼であり、個人の思い込みや好悪に流されない客観的な筆であり、つまりは科学的な態度である。うろこの一枚、葉脈の一筋まで精緻に描かれた博物画は写真と同等、あるいはそれ以上に、生き物についての情報を我々にもたらしてくれる。同時に、我々の目を吸い寄せる博物画の魅力は、単にその“精確さ”だけにあるのではない。描かれた生物そのものの美、そしてそれを絵として定着させる画家の力と個性によって生み出された作品は、一枚の絵画としても美しく、芸術的感動を呼び起こす。本書の解説者の一人が言うように「科学と芸術との境界は意外に曖昧なもの」(44ページ)なのかもしれない。

 なお本書は上野の国立科学博物館の企画展「日本の博物図譜 十九世紀から現代まで」にあわせて企画・出版された本であり、科博の活動を世の中に伝える媒体として企画された「国立科学博物館叢書」の第1巻として発行されている。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部)

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lacオペロン 分子生物学におけるパラダイムの転換点

2001/09/01 18:41

紆余曲折を経て発展していく生命科学研究

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 本来ならこの書評は「lacオペロンとは…」という解説から始めるべきなのかもしれないが、あえてそれはしない。そのような説明が必要な人は、この本の対象読者ではないからだ。本書はlacオペロンの研究史の本だが、いわゆる教科書でも、あるいは科学史の専門書でもない。あえていえば「読み物」というのが一番近いと思うが、しかし一般の読者に対する配慮は全くないと言って良い。専門用語が何の説明もなく頻繁に使われており、少なくとも学部専門課程レベルの分子遺伝学、生化学の知識がないと、本書を読むのは難しいと思う。しかし生命科学の基礎を身につけた人、特に大学院生など若い世代の研究者は、本書からとても多くのものを得ることができるだろう。
 1960年代初めにジャコブとモノーが提出した「オペロン説」。細菌の遺伝学の知見を見事に説明した、この単純で美しいモデルは、やがてそのシステムを構成する要素の同定と構造、機能、相互作用の様式の解析へと進み、分子生物学の輝かしい歴史の象徴となった。
 オペロン説の研究史には多くの転機となる実験や、新しい実験手法の開発があり、同時に現在の目から見れば間違った理論、実験結果の解釈の誤りなどの紆余曲折もあった。
 分子生物学の教科書は得てしてそのような研究のプロセスを省略し、結論だけを提示する。それは莫大な知識を網羅すべき教科書としては仕方のないことなのだろうが、それを読む者は結論が得られるまでの歴史を知ることなく、その結論が疑問の余地なく正しいものと思いこみがちになる。
 本書はそんな教科書に欠けている、科学の研究が進んでいく曲りくねったプロセスを、いきいきとリアルに描いている。特に面白かったのは「誤った解釈」と題された第2章だ。
 過去の誤った解釈について語る者は少なく、教科書でも触れられない。しかし人は成功だけでなく誤りからも多くのことを学ぶことができる。その意味で、研究史の中でいかに多くの誤った解釈がなされてきたかを書いたこの章は示唆に富んでいる。とくに生命科学の研究者をめざす若い人にとっては、得るところが大きいと思う。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

<目次>

序章
1 研究開始から1978年に至るまでのlac系の研究史
2 誤った解釈
3 lacオペロン —美と効率のパラダイム—
訳者あとがき
索引

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ヒトと生きものたちの科学のいま

2001/07/02 17:16

生物学、生命科学は社会とどう関るべきか

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 著者の岡田節人(ときんど)氏は発生生物学分野の重鎮というべき研究者だが、世間的にはおそらく、科学の研究と発信をユニークな形で結びつけた「生命誌研究館」の館長としての顔の方が有名だろう。本書は生物学の研究者として、そして科学の普及に携わっている者としての体験にもとづき、人間の文化に生命・生物科学がどのように関ってきたのか、そして今後どのように関っていくべきなのか、というテーマを掘り下げた本だ。

 科学の世界には、物理学を頂点とし生物学を下位に置く「位階制」が存在していると著者はいう。第1章では、この位階性のもとで20世紀の生物学が辿ってきた変遷の歴史を考察する。物理学をモデルとした還元的研究によって生命の普遍的な理解をめざし、科学の階梯を上ろうとする努力がなされた一方で、生物学の中には、その流れに乗せようがない部分、理論や演繹を受けつけない泥臭い側面もまた、厳として存在してきた。これら二つの側面を抱えたまま、生命・生物科学は巨大に発展してきた。そして現在、生物多様性や内分泌撹乱物質などの新たな問題に対する、生命・生物科学の貢献が社会から要請されている中で、普遍的理解をめざす前者の科学と、収集・調査・網羅を旨とする後者の科学が、新しい形で統合される必要があると著者は主張する。第3章では、この問題をより具体的に、サリドマイド禍の悲劇と、両生類の過剰肢などの形態異常を題材にとって、考察している。1章と3章を続けて読めば、著者のメッセージが明瞭に伝わってくるだろう。

 第4章では一転して、科学の教育の問題が論じられる。近年、若者の「理科離れ」が問題になっているが、著者はむしろ大人たちの科学への無関心、嫌悪感こそが最大の危機だと指摘する。世の中には自然——たとえば流星群などの天体現象や野生の動植物など——への興味は広く存在しているのに、それが科学への親しみとは結びついていない現状がある。その一因には、やはり科学の階梯性、つまり生物を語るにはDNAの知識が必須であり、さらには化学の知識が必要で……、というような前提があると著者は見る。もちろん、学校教育の中では、階梯性に基づいたトレーニングも必要である。しかし同時に、無味乾燥な階梯性から解放された、よりソフトな科学教育を、子供だけでなく大人にも提供することが必要なのだと著者は強調している。科学と音楽、科学と美術の融合という生命誌研究館のユニークな試みも、その実践として行われているわけだ。狭い意味の「理科教育」にとどまらない、社会全体にむけた科学の発信が必要で、そのためには科学の表現方法が洗練されねばならないという岡田氏の主張は、傾聴に値する提言だと思う。

生命誌研究館のページ:http://www.jtnet.ad.jp/WWW/JT/Culture/BRH/

まえがき
第一部
I 生命・生物科学の一世紀 ——文化・文明史としての
 はじめに
 1 生気論の終焉 ——前世紀転換の時代
 2 知の「位階制」のなかの生命・生物科学
 3 ゲノム中心教義
 4 オルガニシズム ——ゲノム教義の外の問題は?
 5 人間社会からの招集

II ヒト/人間の科学の“いま”を考察する
 1 ヒトの科学の登場とそれへの期待
 2 ヒトの科学のなかの今日的テーマの二つ
 3 テクノロジーの対象としてのヒト
 4 「生物学的」倫理をもとめて

第二部
III 形態の破綻と環境ファクター
 はじめに
 1 サリドマイドの悲劇の告げたところ
 2 蛙のクライシスの告げるところ ——外因も内因も?

第三部
IV 次世代への科学/技術の教育 ——実践的試論
 1 まえがきとしての概観
 2 市民生活のなかの科学 ——きらわれる科学/技術
 3 科学/技術の智からの乖離
 4 科学の表現
 5 科学を演奏する ——実践的体験の報告
 まとめ

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動物の発育と進化 時間がつくる生命の形

2001/06/13 18:31

ヘテロクロニーが生物の進化を解き明かす

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 動物の体は、細胞の増殖や、移動、分化、細胞死などの素過程が規則正しいタイミングで進行することによって形づくられる。生まれてきた幼体は一定の期間、体の各部を成長させ、やがてある時期に性的に成熟して成体となる。このようなきっちりとしたタイムテーブルに従うことによって、生物の個体は特定のライフサイクルをたどり、特定の形態を作りあげる。

 さて、ある時、何らかの原因(たとえば遺伝子の突然変異)でこのタイムテーブルが変化してしまったら、どうなるだろうか。たとえば体のある部分の成長期間がより長くなったり短くなったりしたら、あるいは性的に成熟するタイミングが早まったり遅くなったりしたら? 祖先と比べて体のサイズが変化したり、プロポーションが変化したり、幼体の特徴を残したまま成体になってしまったり、いずれにしろ、祖先とは違う姿をした子孫が生まれてくるだろう。

 このようなタイミングの変化(ヘテロクロニー)が、生物の進化においてきわめて重要な役割を果たしてきた、というのが本書の主張である。著者はヘテロクロニーの概念を縦横無尽に駆使して、様々な進化的現象を料理していく。たとえば、イヌの品種間の形態的な差異は非常に大きいのに、ネコの品種はそれほど違わないのは何故か。カブトムシやシカの仲間など、動物に広く見られる雌雄の形態の違い(性的ニ型)はどのようにして作り出されるのか。ダチョウやドードーなどの飛べない鳥はどのような進化の産物なのか、などなど。形の進化だけでなく、ライフサイクルの進化や行動様式の進化も考慮に入れて、多角的に論じられている。ヘテロクロニー概念を軸に、遺伝学、発生学、生態学、古生物学などの分野が結びつけられていくのが、とてもエキサイティングだ。

 多くの読者にとって、ヒトの進化をヘテロクロニーの観点から考察した最終章は、とくに興味深く読めるのではないかと思う。ヒトはヘテロクロニーの一種である「ネオテニー(幼形成熟)」の産物だとよく言われる。スティーブン・J・グールドの名著『個体発生と系統発生』も、やはり最終章でヒトの進化をとりあげ、ネオテニー説を支持していた。しかし果たしてそれは本当なのか? 前章までの考察をふまえて、著者はネオテニー説とは異なる結論を導き出している。ヒトの進化に興味のある方には、ぜひ読んで欲しい議論である。

 進化におけるヘテロクロニーの重要性にもかかわらず、この問題を正面から取り上げた本は、和書としては上述の『個体発生と系統発生』があるだけだった。個体発生と進化という古いテーマに新しい光が当てられ、進化発生学という新しい分野が活況を見せている今日、本書が出版されたことには大きな意義があると思う。この2冊を出版した工作舎からは、最近、個体発生と進化の問題に正面から挑んだブライアン・K・ホールの大著『進化発生学』も出版された。これらの本の出版によって、進化発生学の考え方が限られた専門家だけでなく近隣分野の研究者や一般の科学ファンへも広がっていく基盤が、日本でもようやく整ったと言えるのではないだろうか。

<目次>
訳者の凡例
謝辞

プロローグ
1 進化する胚
2 ヘッケルとガースタングの逆さまの世界
3 来るべきものの形
4 ある犬の一生
5 雌雄性にかかった時間
6 鳥類と腕足類とブッシュバック —— 種分化におけるヘテロクロニー
7 ピーター・パン症候群
8 過去の姿、未来の形
9 形をさらに進化させる
10 生活の仕方を進化させる
11 生物学的軍拡競争に活力を
12 幼児の顔をした超類人猿
エピローグ

関連図書
『個体発生と系統発生』
『進化発生学』

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遺伝子医療と生命倫理

2001/05/10 19:04

人間は今後、病といかにつきあっていくのか

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 筋ジストロフィーのように遺伝子の異常によって起きる疾患に対しては、原因となる遺伝子そのものを診断し、治療する遺伝子医療が有効だ。本書は遺伝子医療の進歩によって現在なにが可能になってきたのかを明らかにし、そこから生じてくる社会的・倫理的問題を考える本である。日本筋ジストロフィー協会が2000年に開催した2回のシンポジウムが元になっている。
 内容は大きく2つに分かれる。第1部「受精卵診断」では、遺伝病の出生前診断の問題が論じられる。とくに従来行われてきた出生前診断(絨毛検査や羊水検査)より早い時期に受精卵の検査を行う「着床前診断」が可能になったことで起きてくる諸問題が議論されている。第2部「遺伝子治療」では、筋ジストロフィー患者に対する遺伝子治療の可能性が見えてきたことを受けて、遺伝子治療がもたらす医学的、社会的、倫理的諸問題が議論される。論者は医療関係者、筋ジストロフィーの患者、家族はもちろん、生物学者、地球物理学者、科学技術論の研究者、ジャーナリストなど多彩である。
 個人的には、「障害も一つの個性」「障害をもって生まれたことは不幸ではない」という2人の筋ジストロフィー患者の発言が印象に残った。遺伝子医療の問題は、病気なのだから早期に発見すれば良いとか、治療が可能になったのならすぐに直してしまえば良いとかいうような、単純な議論で済む話ではない。人間とその社会が「病」とどのように付き合っていくのか、「遺伝子」をどのように制御して(あるいはしないで)いくのか、という大きな問題と関っている。本書に答えがあるわけではないが、考える手がかりは与えてくれる。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://hiko475.ias.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html)

<目次>
巻頭言 遺伝子医療と生命倫理  (貝谷久宣)

シンポジウム1 受精卵診断
 はじめに  (埜中征哉)
 受精卵診断とは  (吉村泰典)
 受精卵診断に対する私の意見 ——社会的見地から  (村上陽一郎)
 受精卵診断に対する私の意見 ——生物学的見地から  (養老孟司)
 遺伝子診断を行なう前に考えるべきこと  (武部啓)
 出生前診断・着床前診断と筋ジストロフィー (石原傳幸)
 出生前診断の倫理的課題  (迫田朋子)
 障害も一つの個性  (溝口伸之)
 不自由な人にやさしい社会を  (岡本恵美子)
討論1 受精卵診断

シンポジウム2 遺伝子治療
 はじめに  (杉田秀夫)
 遺伝子治療の基礎知識  (武田伸一)
 遺伝子治療の倫理的課題  (武部啓)
 地球システム、人間圏、そして遺伝子治療  (松井孝典)
 遺伝子治療の経済的・社会的問題  (馬場錬成)
 障害をもって生まれたことは不幸ではない  (町田久美子)
討論2 遺伝子治療

特別寄稿 筋ジストロフィーについて思うこと  (柳澤桂子)
おわりに  (河端静子)
資料 鹿児島大学医学部における着床前診断の申請とその経過

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