斎藤美奈子さんのレビュー一覧
投稿者:斎藤美奈子
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紙の本文章読本さん江
2002/09/12 15:29
著者インタビュー(1)
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1.「本書はいわゆる『文章読本』ではありません。文章読本と呼ばれる一連の書物じたいに光をあててみよう——それが本書の趣旨であります」と<はじめに>にありますが、こんなに大変な、それこそ報われない仕事をこつこつと8年間もやってきた情熱は、どこからわいてきたのでしょうか?
——怨念でしょうか。いや、それは冗談です。8年間といっても、その間に私は『紅一点論』とか『モダンガール論』とか、別のテーマに浮気もしてましたから、これ一筋ってわけじゃない。白状すれば途中で何度も挫折しかけました。しかしまあ、乗りかかった船ですし、降りたくはないなあと。するとやっぱり怨念かな。
2.「文章読本」はそれこそ掃いて捨てるほどあるのに、あらふしぎ、斎藤さんのこの本のように「文章読本」を批評の対象にしたものはほとんどありません。読み始めて、これは爆弾のような本だ、と思いました。著名な文学者やジャーナリスト(谷崎潤一郎、三島由紀夫、丸谷才一、井上ひさし、本多勝一、清水幾太郎)の文章読本を切りまくり、からかい、論破していく。このことに恐怖心はなかったのですか?
——恐怖心はいつだってあるんですよ。いつもビクビクしながらやっています。本当です。でも今度の場合、私は、ほら、そういう土俵からは降りてるから。あちらはゾウ、こっちはネズミみたいなもので、どのみち文章では勝負にならないし、勝負しようとも思ってもいない。いつかは自分も甲子園のマウンドに……という野心でもあれば別ですが、私の居場所は観客席だと決めてしまえば、スター相手に野次もとばせる。「コラ、タコ! もっとしっかり投げんかい」なんて外野席から檄とばしてるタイガースファンみたいなものですよね。とかいうと、タイガースファンに失礼か。
3.たいていの人が何冊かは文章読本モドキの本をなぜか気になり買ってしまう。その理由はこれを読むととてもよくわかる仕掛けになっています。私はこれを読めば「文章読本」はもう読まなくていい、という安心感が与えられましたが、斎藤さんにもそんな思いがあったのでは? あまりに文章読本に振り回される人(文筆家になりたい素人さん)が多すぎてかわいそうだ、という斎藤さんの思いをひしひし感じたのですが……。
——ワシがカタキをとってやる、という気持ちは確かにありました。たまたま読んだ「文章読本」に書いてあった規範が、神聖な掟みたいに見えて、トラウマになっちゃうことってないですか? 私はああいう本のそう熱心な読者だったわけでもないのですが、それでも何かの拍子に読んでしまった直後は、必ず筆が萎縮する。「文章読本」はどうしたって抑圧的なんです。ですから、呪縛を解きたいというか、みんなもっと自信を持て、といいたかったのは事実です。
(2)へ続く⇒
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