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片岡直子さんのレビュー一覧

投稿者:片岡直子

84 件中 1 件~ 15 件を表示

NHKイタリア語書ける!話せる!実用文例800

2001/05/24 18:17

基本的にローマ字読みをすればいいというイタリア語。「ひとりでも作文の練習ができるよう工夫」された一冊

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 習ってもいないのに、イタリア語が親しみやすく、懐かしく思えるのは、何故だろう。

 先日、イタリア大使館で知り合った、翻訳家の女性は、「単語が母音で終わるからかしら」と、おっしゃっていたけれど、何か拒絶されていない感じがある。
 普通に日本で暮らしていて、受け取るイタリアの印象というのは、陽気で、開放的で、とにかく明るくて、楽しそう。海に囲まれた半島の国の、美味しいお料理、ピザ、パスタ、ワイン、そんな感じだ。

 以前書いた詩が、この度、イタリア語訳されることになり、イタリア文化会館の「詩の祭典」に参加しているうちに、本書を手にとってみた。

 けれど、本書は、初歩から少し踏み込んだ内容だったので、本書と並行して、基本的な会話の本、旅行ガイド、TVの初級講座のテキストなども、読み進めていった。
 電車や、ベッドのなかや、トイレや、いろいろな場所で読んでいたら、なんだかイタリアという国が、自分に開かれているような気がしてきて、親密な気持ちになる。
 ドイツ語とフランス語、それからスペイン語は初級と中級を一度に受講したりして、かなり無謀な感じで、大学の選択でかじったけれど、イタリア語は全く未知だった。
 「イタリア語は基本的にローマ字読みをすればいい」と、NHKのテキストにもあり、自己流で発音してみれば、なんだか、イタリア人に一歩近づいた気分になる。

 A mia sorella piace l’Italia.
 私の姉はイタリアが好きです。

 このあたりから、「基本表現」が始まってゆき、その後に、「ワンポイント」や、「基本表現の解説」があり、「応用練習」へゆく。「旅のお供」的な会話の本より、もう少し踏み込んだ、文法的な解説が、なされている。

 「この本の特徴と使い方」には、「この本では、日常生活においてよく使われる表現や構文を、文法やテーマ別に52の課に分け、作文の形式を通して練習していきます」とある。
 著者の、木下大朗による「はじめに」には、「ひとりでも作文の練習ができるよう工夫しました」とあり、本格的にやるのなら、ペンを手にして、書いて覚えてゆかないとな、という感じ。それでも、「難しいと思ったら、先にイタリア語を見てしまうのもひとつの方法です」ともあり、何はともあれ、堅苦しくなく、イタリア語に親しんでもらおうという意図が、伝わってくる。ノートを買ってきて、まずはイタリア語を書いてみようと思う。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人・エッセイスト 2001.05.25)

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大きな活字のコンサイス英和辞典 第13版 大字版

2002/05/24 22:15

「紙の辞書」によるハンディの究極を追求。四半世紀ぶりの全面改訂によるコンサイス英和の大きな活字版

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 辞書を支えているのは、何といっても誇りだろう。この辞書の変遷を、本書の後ろの「コンサイス英和辞典の歴史」で読み、興味を持ったので、三省堂に電話をしたら、本書の1922年発行の初版の『袖珍コンサイス英和辞典』は、水道橋駅近くの三崎町の本社に保管してあるとのことだった。機会があれば事前に連絡をして、見せてもらいにいこうと思っている。ちなみに、初版があるのは、英和だけで和英は無いとのこと。また、2001年には、この初版の復刻版が、発行されている。四半世紀ぶりの全面改訂を経て、その充実は計り知れない。「まえがき」には、「英米の最新の辞典・事典ばかりではなく、英米の新聞のCD−ROMの検索によって、用法の確認も怠らなかった」とある。辞書は長い期間を費やして改訂されるので、編者が亡くなられたり、編集担当が替わったりと、その全てが、一冊にまとめられてしまう。その辺りの心意気を読んだ上で使用すると、辞書の魂が乗り移ってくるような気持ちになる。256ページ増えたことを、conciseを旨とする本書の編者の木原氏は、残念がっておられるけれど、この軽さなら、従来のコンパクト感を保ったまま、懇切丁寧な解説と、豊富な用法を知ることができるのだから、読者にとっては、良いことばかりだろう。私が学生時代にお世話になっていたのは、コンサイスの英英だった。柔らかい手触りと、カバーの白とが大好きで、愛される辞書の特徴を備えていると感じていた。重い「紙の辞書」を買うよりも、電子辞書を買おうという人も増える中、今後の展開を見守り続けている編者のためにも、この労作がたくさんの人々の手元に届くことを願っている。また、どうしても最新の情報を見たい人のために、インターネットとの連動があっても良いだろう。そのことにより却って、「紙の辞書」が、生き残ることが可能になるのではないかと思う。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.05.25)

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カシミール3D入門 山と風景を楽しむ地図ナビゲータ

2002/05/08 22:15

もしかしたら一生登ることの無い山からの風景を楽しむだけではなく、写真撮影までが、できてしまう一冊。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私には、とても良いおもちゃだった。
 けれど、これで遊ぶには、少し予備知識があった方が良いだろう。
 どこから眺めると、どの山がどう見えて、どの時間帯に、どう光り輝くかなどということを知っていると、かなり楽しめる。
 大学のとき、自転車部で日本中を走り回り、富士山をはじめとして、気持ちの良い高い山々にも、自転車で登った。多分私の場合、自転車部に入らなかったら、日本の地理についても、もちろん山々についても、あまりにもチンプンカンプンのうちに、死んでしまったと思う。
 夫の転勤で、長野に住んだ時は、一日のうちの六時間、娘を連れて、その頃使っていた軽自動車に乗って、毎日、観光育児にでかけた。
 北アルプスの山が美しいのは、朝日を浴びる午前中なので、全速力で出かけて、山肌に見とれていたりした。
 そういうことがわかっていて景色を探すと、山の風景の楽しみ方も膨らむ気がする。
 勿論本物には負けるけれど、勝手に、無い湖を造ったりという楽しみ方もできる。
 画面上に線を引くだけで、簡単に断面図が作れるし、雪景色も、晩秋の色使いも、思いのままの、写真を撮影することもできる。
 アルバムに保存しておくと、いろいろなことに使えるし、山には名前が表示されるので、何だっけこれは? などと、ぼんやりせずに済む。
 関連サイトを開いてみたら、火星の写真まで撮影されていた。
 親切すぎる一冊かもしれないけれど、とにかくすごい。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.05.09)

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街角のデザイン文字

2002/04/19 22:15

年賀状が活字で送られてくる時代に手書き文字を味わう。書き文字は下手でもすでにデザイン域。

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 本書を読むと、手書きというのは、すでにデザインの域に達しているのだなということを、しみじみ感じる。
 まだまだ手書きの世界にも十分生きていると思っている私のような者にとっては、特に素晴らしいものではなくても、というか、かなり怪しげなものでも、活字ばかりの生活に慣れている人の目には、新鮮に映るかもしれない。それは、海外の人が日本語を見る感覚に近いだろう。
「三木露風の筆塚」「清酒 飛騨自慢」「奉納 川越大師」「塩釜馬具店」「木曽名産 お六櫛」。
 そう考えながら、本書を読むと、ただ古いとだけ思っていたものに対しても、微笑ましささえ、感じられるようになってくる。
 それは言い間違いをする、小さな子供をいとおしがるのにも似ている。
 本書では、それらを、「願かけを見つめる文字」「大漁に湧く文字」「書き込まれた文字」「存在を残したい文字」「清めの場での文字」などに分類し、それぞれに鑑賞を加えている。
 なかでも、「集合する文字」では、日ごろ思わず目をそらしてしまいそうなほどに、びっしりと集合した文字が、これまた一か所に集められ、鑑賞に値するものとして提示されている。
 お寺に寄付をした人々の名前、子供たちの教室での習字、倉庫に積み重ねられたすのこ、そして、堤燈などなど。呑気に眺めていると、書き込んだ人の怨念や執念のようなものに、飲み込まれそうになる。
 手書きの文字は、極限まで消えてゆく運命にあるかもしれない。
 そういう時、真っ先に資料になりそうな文字が、本書にはびっしりと並んでいる。
 普段歩いている道では、例によって不注意により見逃しているかもしれない。
 きょろきょろ辺りを見回して、歩いてみることにしよう。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.04.20)

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SNOOPY 1 Sunday special Peanuts series

2002/02/28 22:15

人生や生活の達人でなくては、描けないし、訳せない。大人こそ楽しめる。50年間連載は、やはり只者ではない

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「私は、この子たちの考えていることがわかるの!」
 9歳の娘は、「||||||||」だらけのウッドストックの会話もわかるらしい。
 1950年10月2日から2000年2月13日に日曜版最終回が掲載されるまで連載された、驚異のシリーズの中の日曜版だけを、谷川俊太郎さんが訳し下ろしてゆくという、春夏秋冬、年4回発行の、全10回シリーズ。
 私は、かわいいものが苦手で、スヌーピーも、マスコットになってから出会っているので、なんとなく敬遠したまま大人になったけれど、今回、ちゃんと読んでみると、本当に面白い。大人こそ楽しめる。

 50年間連載というのは、やはり只者ではない。
 つっこみが深いし、考えさせられる。深くないと、読む方も続かない。
 くどいような畳み掛け、これがぐっとくる。そして、あとからもじわっとくる。
 P.55の日曜日は……。授業中は居眠りばかりのペパーミント・パティの「学校内での睡眠習慣の研究」をしているマーシーのセリフに、「後ろこっくり、よし……」「前こっくりも、良好」ときて、パティが横に転げ落ちてしまい、最後に「横こっくりは、練習の余地あり」で終わる。

 このシリーズの翻訳をする苦労と楽しさを想像する。
 普通に生活する人々に、極めて身近な事柄を、こうして日本語にしてゆくのは、基本的なことでありながら、とても難しいだろう。人生や生活の、そしてコトバの達人でなくてはできない。本当の意味で、ぴたりとくる言葉を見つけた時の爽快感!
 谷川さんは、それをこれから10冊分味わうのだ。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.03.01)

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例解新漢和辞典 第2版

2002/02/13 18:15

「日本語での用法」欄では、漢字本来の意味と日本語独特の用法を区別して解説。頭が切開されるようで嬉しい

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 人類が滅びる時、漢字も一緒に滅びてしまうのかと思ったら、とても虚しく思った記憶がある。漢字ほど、人々の思いの込められた文字も無いのではないか。
 本書は3年前に出たものの第2版。「初版を愛用される方々にも、また他の漢和辞典を利用される人にも、この新しい一冊を座右に備えていただいて、決して無駄ではないと自負する」とある。辞書は生き物であり、一冊あるから、それで終わりというものでもない。

 本書には、「日本語での用法」という欄がある。これは、「漢字の『本来の意味』と『日本語独特の意味・用法』を区別して説明」するための欄で、例えば、「砌」という漢字は、「階段や軒下の、石をしきつめたところ、石だたみ」の意味であるのに、日本語では、「暑さの砌、幼少の砌」のように、「…の折。…のころ」の意味で使われる。それらを、はっきりと区別して解説している。日頃、それらをごちゃまぜにして「日本語」として使用している頭を切開されるような、新鮮な感覚を覚える。

 また、ぱらっとページを開くと、「長嶋」と「長島」の「嶋」と「島」の違いについて解説したりする囲み記事「漢字に親しむ」がある。日頃、「嶋」の方が曰くありげだとか、「島」の方がすっきりしているなどの感想を反芻し続けていた二つの文字が、元は同じで、そして、まだ別に二つの同じ字があり、古くは「山」の上に「鳥」が乗る形だったけれど、「山と鳥との組み合わせであればそれでよく」、「嶌」の形の「しま」もあることなどを知る。こんなことから漢字の成り立ちへの興味をそそられることもある。

 「編者から一言」には、「中学生とそれ以上の人々のために作った」とある。小中学校の段階で、辞書との付き合い方等は概ね決まる。がっぷりと辞書と手を組むか、あるいは、よそよそしい関係になるかは、ひとえに辞書との出会いによる。大人が使っても楽しい。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.02.14)

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絵葉書に見る交通風俗史 明治・大正・昭和初期の乗り物原風景 平原健二コレクション

2002/02/08 18:15

絵葉書独特の色を味わい、故郷や、訪れた土地の今とずっと昔を重ね合わせながら、ページを繰るのが楽しい

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 一番面白いのは、「絵葉書」という体質? からくる色味。日本では、初期の頃に女性の内職によってまかなわれたという、色を塗る作業や、「写真」としてではなく、裏に文字が書かれ、投函され、大切に保管された時間そのものが、葉書の色に現れている。
 明治・大正・昭和初期の時代の風景を写した、本書の絵葉書は、少し歪んだ懐かしさや、安堵や、滑稽の味わいを運んでくる。

 函館に出張に行ってきたばかりの北海道出身の夫が、「ここに泊まってきたんだよ」と言って、本書の絵はがきの中の建物を指さした。本書には、まだ健在の建物や、平成13年までは建っていたものなど、にわかには信じがたい写真も多く掲載されている。
 大学時代に自転車部に所属していて、旅が多かったせいか、道路や交通や、もちろん古い建造物にも、とても興味がある。全国のある程度の街の感じをつかんでいると、自分で勝手に思っている者の目にも、絵葉書からのアプローチというのは、とても新鮮。
 「手書きの絵から出発した絵葉書」の章には、1843年、イギリスで、「ヘンリー・コールという人が画家に描かせたものがその最初になった」とある。今流行りの絵手紙みたいだ。

 日本全国、そして、“外地”として、旧朝鮮、旧満州、中国、香港、シンガポール、台湾、樺太等の絵葉書もあるけれど、一番印象に残ったのは、広島だった。「軍都として発展した後原爆の惨禍を蒙る」として掲載されている絵葉書の風景は、明治45年、大正3年、5年、10年、15年、昭和5年頃のもので、そこから、昭和20年の「世界の戦争史上未曾有の大惨事」が、起こるとは誰にも考えられない。整然とした美しさと、素朴さが写し出されている。それぞれの故郷のその時代、あるいは、かつて訪れた土地の今とずっと昔を重ね合わせながら、ページを繰るのにちょうど良い。懐かしさをくすぐる色を味わいながら。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.02.09)

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新選国語辞典 第8版 ワイド版 縦組版

2002/01/28 18:15

今回3500語が加わった21世紀初めの日本語。辞書は、版が改まるたびに生まれ変わる。見やすい縦組ワイド版。

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 辞書は端っこが面白い。
 見返しには、「ことのは」をイメージしたのであろう、紅葉や銀杏の葉っぱのデザイン。「はしがき」には、「刊行以来四十余年を過ぎたこの辞典にとっても、ひとつの区切りとなる年に第八版を世に送ります。人間にたとえるならば、壮年期というところでしょう。しかし、辞書と人間が異なるのは、辞書はつねに若くなければならないということです。版を改めるということは、そのたびに生まれ変わるということでもあります」とある。
 新しい言葉を選択し、すくい上げてゆくのは骨の折れる作業だ。2000年夏に、『外辞苑 平成新語・流行語辞典』の書評をしたけれど、新しく造られる語の中にも、「新語」になれるものもあれば、「流行語」として、「あのひとはいま」状態になるものもあるので、新しい語を取り入れるには、正確さの裏付けのある速さが求められる。本書には、「辞書に要求されるのは」「変化することばの実態をとらえ、それが日本語として必然の流れであるかどうかを見極めて、記述していくこと」とあり、その見極めが効いている。
 手元に、ワイド縦組版とワイド横組版と普通版の3冊の小学館『新選国語辞典 第8版』があり、使い勝手を比べてみる。大きな手の人だと、どこでもワイド版で大丈夫。私のおそらく普通サイズの大きさの手だと、出先や立って使うには、ワイド版だと大きすぎる感じがする。横組版は、個人的には、まだ「横書きの国語辞典」というのに慣れていなくて吐き気をさそうけれど、和英辞典感覚で使う時には、英単語の記述が自然。それに、この「新選」の場合は、デザインが良いので、大丈夫かもしれない。たまにしか国語辞典を引かないのかもしれない中学生の男の子は、「使いやすいよ」と感想を言ってくれた。
 自分のためなら普通版で、たまに辞書を引く男の子には、ワイド版縦組を贈ろうと思う。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.01.29)

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「イヤなことがなかなか忘れられない人」のための本 上手な気持ちの切り替え方

2002/01/25 18:15

イヤなことがあったら身体の一部を動かす。それが案外負担を軽くする。根本的な解決が困難なことのために。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まだ、人生で2度目だけれど、こういう本を読む周期に入ったかもしれない。
 年末に、雑誌の占い特集を買ってしまうのも、その証拠だ。本書も普段なら、「心の弱い人が読むんじゃない?」などと言って、通りすぎてしまう種類の本かもしれない。
 でも、どうやら私自身は、このタイトル通りの人間のよう。
 外には出さないのに、心の中で、論理的?に相手を、攻撃したり、軽蔑したりする言葉を、懸命に組み立てていることに気がつくと、人生の無駄をしているような気になる。

 もしも、本当に忘れられるなら幸いと思い、リクエストしてみた。
 類は友を呼ぶ。
 詩を書きはじめる前の私は、どちらかというと体育会系でもある、といった人たちの中にいた。そこには、あまりに単純に思える人もいたかもしれないけれど、無意味に歪みきった、僻んでいるような人はいなかった。詩を書き始めてから出会う人のなかには、そういう人もいて、そういう人の言葉や、まるで説得力を持たない高圧的な態度、そういうものを忘れるために、以前から、車の中にいる時なら、ラジオをつけてみたりして、気を紛らわせていた。最近は、女の人でも、「そういうことをするのは逃げだ!」などと大声で叫んでしまう人もいて、余計にげっそりしたりするけれど。

 本書には、「イヤなことがあったら、身体の一部を動かしてみる」というアドバイスがあり、そこに至るまでの、丁寧な解説がある。身体を動かすのは、指でも、首を回すのでも、足を捻るのでも何でも良い。それは、そのイヤなことを一瞬忘れてみるためで、それが習慣化されると、案外負担は軽くなる。けれど、その後で根本的な解決がなされてしまったりすると、その解放感はまたやはり別レベルだなあと思うことになるのだけれど。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.01.26)

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フェイバリット和英辞典

2002/01/22 15:16

辞書から離れて応用で表現してゆく時にそれを勇気づけるパートナーになりうる力強くポップな味方。青灰色。

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 和英辞典というのを使わないまま、育ってしまった。中学高校の教師から、英和や英英だけで単語力をつけなさいという指導を受けたからなのか、もう忘れてしまったけれど。 表紙の色は、落ちついたブルーグレー。英和辞典の明るい藤色と合わせると、楽しく学ぼうとか、勇んで引いてみようという気にもなる。
 解説も丁寧。「はしがき」の、「自分の目的に合わせた上手な利用法を工夫すること」には、「単語でも、完全には一致しない」とか、「類似表現を応用する」などの、当たり前のようで、言葉にされるとなるほどと思う親切なアドバイスがあり、使用法の次には、「日本の事物紹介一覧」「短歌・俳句一覧」「主な図版一覧」などに感動する。
 英和辞典と同じく、本書にも、会話のCDが付いているけれど、英和よりも、読む速さがゆっくりで、和英の意義に合致している。
 「テーマ別表現集」では、「スキーとスノーボード」のように、新旧を比較しながら表現できるように工夫されていたり、他にも、「高齢化と介護」「性」「サッカー」「相撲」「野球」など、まさに今の表現に必要な項目が、解説付きでまとめられている。
 「英作文ノート」も楽しく工夫されていて、「赤道の上か下か?」「握手には2つの手が必要!」とか、「『アメリカン』は好きですか?」など、学習初心者の陥りやすい過ちが、ユーモラスに解説されている。「『いろいろ』囲み一覧」では、「犬のいろいろ」(「秋田犬 Akita」から)、「部のいろいろ」(軟式テニス部、茶道部、鉄道研究部、等々)と、隅々にまで行き届いている。

 辞書というものは完全なものではないと、はしがきにあるけれど、後は、応用でやってゆくわけで、少なくとも、それを勇気づけるパートナーになりうる力強くポップな味方。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2002.01.23)

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おもかげ 小説随筆集

2001/12/03 22:15

書くことはお墓に入れること。お墓に入った街や風俗や人々を、ひもとく。旧式な恋愛にはまりこんでしまう

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 昭和13年発行の復刻版。
 大きな文字で、全てルビが振ってあるので、無理無く読める。
 復刻版を読むのは楽しい。
 当時の本好き、あるいは、荷風好きな人が、これを一冊買って、寝ころんで、ほくほくしながら、大切に読んでいる姿を思い浮かべながら、読むことができるから。
 私自身も、比較的大きな本だけれど、ページを転がすように楽しんだ。小説、随筆、歌劇、俳句。随分と盛り沢山。こういう本を出してくれる作家は、そうはいない。

 昨年、機会があって、福井県は三国町の、高見順の荒磯忌に参加したけれど、その時に、集中して読んだ高見順の作品は、正筋の従兄弟である荷風に対して反感を持っていたはずなのに、全く同じ場所を彷徨っていて、お互いの、その近さが新鮮だった。

 文藝春秋の「現代日本文学館 39」の「高見順伝」に、開高健は、
「荷風はモダン日本の鼻持ちならぬホンコン・フラワーぶりに手袋をたたきつけてボク(さんずいに墨という字)東へ去ったが、高見順は軍国日本の風に吹きまくられて枯葉のようにキリキリ舞いつつ“モタモタ”を抱いて六区へ飛んでいった」とある。
 浅草とはいっても、すでに失われてしまったものが、小説の中に溢れている。

 時々、書くことはお墓に入れることだと思うことがある。
 そうやって、お墓に入ってしまった街や風俗や人々を、時々ひもといて、おかしな気分になってみる。
「この女とおれとの間に、戀が迅速に成り立った……手放しで済まないよ」などと言うのを読むと、かちかちっと旧式な恋愛にはまりこんでゆきそうな気持ちになる。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2001.12.04)

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文房具と旅をしよう スコスステーショナリーズ・カフェ

2001/11/19 22:15

人は手で触れるものから何かを創り出す。日用品を確認する旅は、目線が低く、とても基本的。楽しい旅の提案

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 街のどんな店がつぶれてしまっても、文房具屋さえ残っていれば生きてゆける。そう考える私にはぴったり? と思って読んでみた。
 フィンランド、スウェーデン、イギリス、フランス、オランダ。
 次々に訪れる先で、スーパーマーケット、郵便局、トラム、地下鉄、フェリー、マンホール、古本屋さん等で、文房具から、切手、パンフレット、チケットまで、観察して、購入して、撮影している。日本で普通に生活していても、誰もが皆、必ずお世話になっているところばかりに注目しているから、親しみやすい。
 それから、馴染みの主人公たちの、例えば、フィンランドのムーミンのポストカードや切手、スウェーデンの『ニルスの不思議な旅』の著者セルマ・ラーゲルレーヴの20クローネ札、ピッピの絵本、フランスの『星の王子様』グッズと、著者サン・テグジュベリの50フラン札なども興味深くながめた。

 各国の文房具も日用品も雑貨も救急用品も一緒になって、宝箱のように、コンパクトな本に納まっている。他にも、ダイモ、お道具箱、「ペン立てのにぎわい」、「素敵な古絵本」、「歌の古本」、ぬり絵など、著者の趣味でまとめられた写真を眺めるのも楽しい。「旅のまとめ」には、「手紙が欲しかったら、手紙を書こう」とか、「『外国の人が困っているのを見かけたら出来る限り助けてあげたい』という気持ちが強く心に残った」とか、「こんなものを旅に持っていくと役立ちました」とか、当たり前のように、認識しているつもりのことでも、改めて文にして見せられて、はっとしたりした。

 人は皆、手で触れるものから何かをつくりあげてゆく。それぞれの国の日用品を確認する旅は、目線を低く持てるし、多分浮足立つこともない。とても基本的で面白い旅の提案。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2001.11.20)

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ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典

2001/06/19 12:17

白くてお洒落な、てのひらサイズ。新語も豊富。「会話に役立つ表現」「手紙の書き方」等もコンパクトに掲載

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 大学生の時、先生の薦めを無視して、フランス語の辞書を色合いやデザインで選んだ。
 そしたら、やはり、薦められた一冊の方が使いやすそうで、あとから後悔して、意気消沈したけれど、なんとか買い足した。
 結局、当時は、見た目と中身で選んだ、2冊の辞書を並行して使用した。
 現在、フランス語の辞書は、また増えて、3冊になっている。
 今度は厚みで選んだのだから、何ともいえない。
 今の仕事には、何の関係も無いけれど、辞書が好きなのだから、仕方がない。
 書店で、本書より、もっと大きなサイズの、イタリア語の辞書を見てみたけれど、今のところ、初心者の私には、このコンパクトさが丁度良い。

 辞書の真ん中は、日本語とイタリア語が併記されたかたちで、「会話に役立つ表現」や、「手紙の書き方」、それに、ファックスやe−メールの例文も、掲載されている。
 まえがきには、「気軽に携帯できてしかも本格的な『伊和』と『和伊』の機能を合わせもつ辞典」として企画されたことが記されている。
 それから、「現代のイタリアを理解するために必要な人名・団体名・地名・略語を積極的に取り入れた」こと、「語義の提示順と訳語を決めるにあたっては話し言葉での用法を重視し」たこと、「語義や用法の確認には独自の話し言葉データベースとインターネットを活用した」等のことが書かれている。
 初心者のためには、「綴り字と発音の対応」「発音の注意点」等も、丁寧な解説とともに、載っている。

 「和伊辞典」の部分では、今年の発行なのだから、この辺は、当たり前と言えば、当たり前だけれど、「アイコン icona 女」「アイティー IT tecnologie informatiche 女」「アドレス(電子メールの)indirizzo(di posta elettronica)男」なども、普通に見出し語として、掲載されている。
 白くてお洒落な、てのひらサイズ。
 本当の初歩から始めるのなら、辞書っていうのは、案外ここら辺からなんじゃないかと思っている。

 足りているうちは、このコンパクトさが、心地良い。
 気持ちのどこかが卓上版を必要とする頃になったら、買い足せば良い。
 テレビのイタリア語講座のテキストも、すでに、6月号が店頭に並んでいるのに、私はまだ、4月号のページを、後生大事に、めくっていたりするのだから。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2001.06.18)

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もっとも危険な読書

2001/05/29 22:18

「ほんとうに好きな本のことはあまり書きたくない」のは、本書を読んだ私も同じ。希代の薦め上手の読書案内

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「わたしたちに必要なのは危険な読書だ。いや、あらゆる読書は危険でなければならないのである」という言葉で、本書は閉じられる。
 ここ一ヵ月くらい、本を読むことそのものについて、じとっと考えていた。
 あの、ガッとのめり込んでいく瞬間のことや、そこからの短いようで長い時間のことや、あるいは、そう仕向けてくれた本そのものについて、何か言おうとすると、何も言えなくなり、ただ、凄かったで、終わってしまう。
 本書は、おそらく、ある部分では、常にクールさを残しつつ、ある部分では、ガッとのめり込んで、本を読み続けた筆者による、本の紹介。
 けれど、私自身が、「あまり凄いと思っている人、及び本については、饒舌には語れない」という状況に、まさに、ここで、陥ってしまっていて、困っている。
 軽い気持ちで褒めるわけにはいかない。そういうことをするには(そういう人は本当に沢山いるに違いないのだけれども)私も、高橋源一郎さんの本を、ガガッと読みすぎた。

 氏の本には、とても、お世話になってきたと思う。穏やかなトーンとか、思い込みを裏返す発想の仕方に、ほれぼれしながら、安心して寄り添うことができた。
 そうやって、ほとんどの著作を読んできた。
 雑誌連載中に、「突然、鈴木いずみが読みたくなった」を、立ち読みした私が、新宿の紀伊國屋書店で、鈴木いずみコレクションを探していたら、さっき近くのカフェで原稿を渡して、お別れしたばかりの編集者さんに、追いついてしまい、どこにあるか教えていただき、なおかつ、鈴木いずみは、その方の高校の先輩であること、そして、高橋さんは、薦め上手であることなどを、お話しして、今度は本当にさよならをした。
 「ほんとうに好きな本のことはあまり書きたくない」。
 これは「ゴダールの言葉に耳をすませて」の冒頭。「それは大事にとっておきたい秘密の一つなのだが、今回はそんなこともいっていられない」。それは、今の私も同じ。
 「他人に考えることを促す思考、それをぼくたちは批評と呼んでいるのである」。
 おこちゃまな、狭量さを競うような批評を呼んでいると、哀しくなるばかりだ。わだかまってゆきがちな、読者を、すんなり「腑におちた」気持ちにさせてくれる。
 そういう書き手は沢山いるようで、本当に少ない。
 「ぼくの秘やかな夢は日本語をいまより千倍、聴き、見ることができるようになること」(「音を聞く、音を書く」)などなど、あまりに名言がいっぱいで、それを、書き出すだけで、終わってしまう。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人・エッセイスト 2001.05.30)

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白水社ラルース仏和辞典 大活字版

2001/05/23 18:20

例文に必然性と、情動までがある。仏語を忘れた者も引き込まれて発音してしまう。不思議な魅力を湛えた辞書

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 辞書が好きだ。
 国語辞典をひくのが好きなだけで、国語の教師になったこともある。
 カタログには、「フランス語で『発想』できる、読んで面白い画期的辞典。大活字版」とあったので、大学時代に少しだけやったフランス語を、思い出すことができるかしら?と、リクエストしてみた。
 例文がすごい。 ぱっと開いたところで、

 Je me vengerai de toutes les hontes qu’ il m’a infligées.
 奴から受けた辱めは全部仕返ししてやるからな。

 何だかいきなりすごい。
 20年前に買った辞書の比ではない。
 大島弓子さんのイラストでカバーを作り、旧姓の判子が押してあり、毎日触られてよれよれになり、ピンクやブルーのラインマーカーで賑やかになっている、小振りな、三省堂のクラウンを、本棚の奥から、引き出してくる。「この感触が好きだから、フランス語をやっていられるというもの」という、当時のメモがある。「Oh, my商売道具」とも書かれている。過去のものすごい愛着の感じだけが、そこに残っている。
 けれど、本文を読んでみると、おそらく例文が短かすぎるのだろう。情動という部分にまでは、働きかけてこない。
 翻って、本書の細かな例文の訳を読んでいると、しばらく発音してみもしなかった、発音の仕方が、自然に蘇ってくる。
 例文に必然性がある。

 Vous avez entendu comment il parle à sa mère? C’est honteux!
 みんな、聞いた?母親に向かって何て言いぐさでしょう。とんでもないわ。

 情動や、気合までがある。だからつい、声に出してしまう。
 これで、フランス語の辞書は3冊目になるけれど、開いた時の香りはなんとも言えない。そしてもちろん、それを超えてなお、読む者を引きつける、不思議な魅力を湛えた辞書。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人・エッセイスト 2001.05.24)

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