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浜 矩子さんのレビュー一覧

投稿者:浜 矩子

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グローバル資本主義は開かれた社会の不完全な姿だ。時の申し子が語る重厚・壮大な時代認識

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 グローバルと資本主義。この2つの言葉を連ねて,その2つながらの危機を語る。そこに圧倒的な時代性を示しているのが本書である。グローバリズムもキャピタリズムも,それぞれに19世紀から20世紀前半にかけて形成期から成熟期の一つの歴史を有している。そして,そのいずれもが,20世紀という一つの時代の終末の時期において改めて脚光を浴び,改めてその意味を問われる位置づけにおかれることとなった。
グローバリズムとキャピタリズムとは,最も本源的なところにおいて相支え合うべき概念なのか,はたまた相対峙するほかにすべはない概念なのか。この深遠なるテーマに対して,地球経済を駆け巡るグローバル・キャピタルのチャンピオン,時代の寵児たるジョージ・ソロス氏が,実にオーソドックスにそして実に真摯に取り組もうとしている。
 本書は,第I部が「概念的な枠組み」というタイトルが示す通り理論編であり,第II部「歴史の現時点」が現状分析編である。この構成そのものが,いかに真正面から著者がみずからのテーマに挑もうとしているかを物語っている。けれんみなく,まやかしなく,時の申し子が時代認識を語るその姿勢に好感が持てる。
 著者の「概念的枠組み」とは何か。それは,著者が啓発を受けたカール・ポパーの著書「開かれた社会とその敵」から彼が読み取った閉ざされた社会,すなわち全体主義社会の本質に関する認識に基づいている。著者は,そこを出発点として,開かれた社会の存在を危うからしめるのは,実をいえば全体主義的閉鎖性の圧力ばかりではなく,「社会的結束の欠如と政府の不在による脅威」でもあるという世界観に到達する。
 かくして形成された座標空間の中で,ソロス氏の世界観が語られていく。その筆致は重厚であり,哲学性に富んでいて,読みごたえがある。グローバル資本主義の諸相を股にかけるソロス流大絵巻,その起承転結に酔う読み心地は壮大だ。
 ただし,異論もある。著者のいう「社会的結束の欠如と政府の不在による脅威」は,本当にグローバル資本主義にとっての最大の脅威であるのか。さらにいえば,そもそも,グローバル資本主義という概念そのものが定義矛盾であるように思える。国境を越え,国境による求心性を否定した人と物と金の動きが地球を震撼させる時代において,果たして資本主義という概念がそれ自体として成り立つのだろうか。今日の混迷を制御するために,ソロス氏が本書で示している諸提案は示唆に富んでいる。ただ,それらは,本人の言葉通り,あくまでも「グローバル資本主義を開かれた社会の不完全にしてゆがめられた形のもの」としてとらえる視点に基づいている。その視点から,果たして21世紀に向かって展望を開く発想が出てくるか。そこに疑問が残る。だが,これは,今日の心ある論者たちが一様に当面する大問題だ。そこに熱き思いと深き洞察をもって挑むソロス氏のリスク・テイカーらしき心意気に,喝采を送りたい。
(C) ブックレビュー社 2000

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