松原 仁さんのレビュー一覧
投稿者:松原 仁
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プログラミング言語C 第2版(訳書訂正版)
2001/02/09 19:58
プログラミングに関わる人すべてに勧めたい
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いま最も当たり前のプログラミング言語がCである。たとえば、将棋の強いプログラム同士が競うコンピュータ将棋選手権に出場するほとんどのプログラムはCで書かれている。かつてはFortranという言語が当たり前であった。いまから思えばあれほど使いにくい言語もないのだが、他に使える言語がなかったのでみんな仕方なくFotranを使っていた。いや、当時はコンピュータを動かすことができるというだけでFortranに感謝していたのかもしれない。
そんな暗黒の二十数年前に、アメリカのベル研究所でUNIXというマイナーなOSとCというマイナーな言語が開発され、一部の優秀なプログラマが熱狂的に支持をした。Fortranの天下の中で少しずつであるが着実にC(そしてUNIX)のユーザーは増えていき、あるとき一気に人気が爆発してCが天下を取ってしまったのである。Fortranという非人道的な言語(いかに非人道的かは一度でも使ってみればすぐにわかる)をこの世の中からほぼ絶滅に追いやった功績はCにあり、本書にあるのだ。
本書はCがマイナーだった時代に、Cの普及を目論んで御本家のベル研究所の著者たちが執筆した解説書の第2版である。評者はFortranを最初に習った世代であるが、大学の3年に進学したら当時まったくマイナーだったCが動くマイナーなUNIXマシンが部屋の片隅にあった。本書の原書第1版をむさぼり読みながらこのCを自習した思い出がある。Cの本は日本語ではまったく存在せず、英語でも本書の原書ぐらいしかなかった時代である。いまCの本は(後継のC++も含めて)ちまたにあふれているが、言語そのものを学ぶにも、言語の背景にある思想を学ぶにも、本書を超えるものは存在しない。共立出版の最大のベストセラーであるのも納得できる。
本書は"hello,world"と出力するプログラムの説明から始まる。プログラミングを学ぶ人が世界中でやったように、あなたも"hello,world"と出力するプログラムを書いてみよう。Cを学びたい人はもちろん、Cを知っている人を含めたプログラミングに関わる人すべてに勧めたい本である。
(公立はこだて未来大学 松原 仁)
コンピュータ音楽 歴史・テクノロジー・アート
2001/05/22 20:55
真に「バイブル」の名前に値する一冊
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いろいろな領域に「バイブル」と呼ばれる本が存在するが,コンピュータ音楽のバイブルが本書である.1000ページを越す厚さや一万円を超える値段に驚いてはいけない。コンピュータ音楽を語るためにはコンピュータと音楽の両方を説明しなければならないので,どうしてもこれだけの分量にならざるを得ないのである。
内容も非常にすばらしい。本書は,「基本的な概念」,「音合成」,「ミキシングと信号処理」,「音の分析」,「音楽家インタフェース」,「内部構造と相互接続」,「音響心理学」の7部と「フーリエ解析」という付録から成る。よくも(一部に共著の部分があるとはいえ)一人の著者がこれだけの内容と分量を書けるものだ。またよくも日本語訳の出版にこぎつけられたものだ。オビに「奇跡の完訳ここになる!」とあるが,編集担当者の偽りのない気持ちだろう。
コンピュータはコンテンツが重要である。コンテンツとは中身のことで,中身が重要なのは当たり前なのだが,これまでのコンピュータはあまりに不完全だったので中身よりも中身がはいっている箱(コンピュータそのもの)の方が重視されていたのである。コンピュータはまだまだ不完全だが,ようやく中身にも気を配ることができるようになってきた。音楽は人間の営みの中でも大きな地位を占めている(趣味は音楽という人がなんと多いことか!)ので,コンテンツの候補として最も有力なもののひとつである。
本書は音楽というコンテンツを中心に置き,音楽を扱うためのコンピュータ技術をその周辺に配置している。専門家になりたいごく少数の人は全部読まなくてはいけないだろうが,ふつうの読者は興味のあるところだけを読めばいいだろう(バイブルとはそういう読み方をするものである)。こういう本を書いたり訳したりする人たちがいて,こういう本を出版する会社があるというのは,世の中もそう悪くないものだと思う。
コンピュータもしくは音楽に関心のある人は,すぐには読む気がなくても勇気を出して本書を購入し,本棚に飾ってときどきぱらぱらとめくってみてほしい。「明日があるさ」という気分になれるはずだ。
(公立はこだて未来大学 松原 仁)
マッチ箱の脳 使える人工知能のお話
2001/01/10 17:39
ゲーム作家によるわかりやすいAI入門
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著者は「頑張れ森川君2号」、「アストロノーカ」など、遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワークというAI(人工知能)の新しい道具立てを使ってゲームソフトを開発している人である(最新作の「ここ掘れ、プッカ」というゲームソフトもAIを持ちいている)。
本書はそういう人が書いたAI入門書で、期待通り非常にユニークでしかもためになる本になっている。著者が書いているように、AIの専門家が書いた本は一般向きと称していても素人には理解できないものがほとんどである。そもそも読む気もおきない。読んでもらえなければ何を書いても意味がないという指摘は、AI専門家の一人である評者には耳の痛い。しかしその指摘は正しい。こういうことになる理由は、たとえ一般向きの本でも、AI専門家は一般の評判ではなくAI専門家の評判の方を気にするからである。結果として、専門的には間違いがないが面白くもなんともない本になってしまう。
本書は著者がゲームソフトに用いた遺伝的アルゴリズムとニューラルネットワークを中心に、図や具体例をふんだんに用いて説明している。その説明も先生が生徒を見下ろして話す調子ではなく読者と同じレベルでなされており、とてもわかりやすい。本の装丁も教科書調ではなくソフトなので、従来のAIの本を敬遠していた人も読む気がおきるだろう。むずかしい数式なしに遺伝的アルゴリズムとニューラルネットワークをこれほどうまく説明できるとはすばらしい。
むずかしいことは思いきってはしょっているのでもちろん厳密性には欠けるところもあるが、厳密性が気になるのは専門家だけなのでまったく問題ない。著者が後書きで自分のことを「素人をだませる程度にはAIに詳しい」と書いているが、専門家向きの本を書くより一般向けの本を書く方がはるかにむずかしいことを考えれば、著者の「素人をだます」能力はきわめて高いと言えるだろう。
(公立はこだて未来大学 松原 仁)
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