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石田 護さんのレビュー一覧

投稿者:石田 護

3 件中 1 件~ 3 件を表示

市場にコーポレート・ガバナンス強化を迫られている経営者に方向性と方針を示す

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 近年コーポレート・ガバナンスへの関心が高まっている。銀行・企業の経営破綻や三菱自動車工業などの不祥事が,つきつめると経営者の判断の誤りを防ぐことができなかった企業統治の失敗に帰着することが認識されてきたからであろう。本書のタイトルは「良きガバナンスが良き会社をつくる」という本書の意図を示すものである。
 本書はまず,商法上は取締役会の責任は業務執行とその監督であるが,実際には事実上取締役全員が執行役員であって,純粋取締役不在が取締役会の監督機能喪失の原因であることを指摘し,取締役会の監督機能構築を主張している。
 その方法論は業務執行と監督機能の分離である。近年米国では,取締役会の下部組織である指名,報酬,監査などの委員会において社外取締役が,取締役候補の選任,経営者の評価と報酬の決定,業務執行の監督などによる監督機能強化の担い手となってきた。
 そうした改革の推進力は年金基金である。投資先企業の適性経営による株主価値の増大確保は年金受給者に対する受託者責任であるとの自覚からである。ある有力年金基金は日本企業用のコーポレート・ガバナンス強化のための原則を発表,日本でも産業界と学会などによるコーポレート・ガバナンス原則策定委員会が同様主旨の提案を発表した。株主総会議案に反対投票する動きは日本の機関投資家に広がる兆しを見せている。
 情報開示も市場の時代の重要テーマである。資金運用に適正な情報は欠かせない。投資家は情報に信頼が置けない企業を相手にしないことが認識されてきたことから,IR(対投資家広報)を重視する企業が増えてきた。欧米企業のIR活動の実例や,特定の投資家に情報を開示する差別開示についての注意などは,実務に役に立つだろう。
 なすべきことが分かったとして,日本企業は自己改革を遂げることができるだろうか。
 生き残るための市場の信頼は,企業がコーポレート・ガバナンス改革と情報開示改善によってのみ勝ち取るものである。改革の障害は,取締役会を形骸化してきた。あるいは,時に集団で不利な情報の隠ぺいしたことの根元であるわが国固有の企業文化の変革であるが,それも経営者の決断次第でできることは,本書にあるソニーや三和銀行などの試みが示している。持合解消が意味する市場原理で行動する株主の影響増大と,経営者にも重大な受託者責任があることを示した最近の株主代表訴訟はそうした改革の追い風となろう。
 経営者が週末ゴルフを数回返上して読む値打ちがある本である。難点は,「面白い本」をつくるためか,くだけ過ぎて冗長な部分がある半面,たとえば英仏蘭のガバナンス比較などは説明不足といった誌面配分である。水ぶくれ部分を簡潔化し,コーポレート・ガバナンス原則策定委員会の最終報告程度の基本資料を充実させていたらと惜しまれる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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実務家による経営先端技術の解説書。企画部門・財務経理部門担当の幹部向き

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 企業金融は間接金融から格付けに基づく直接金融にシフトしたが,市場が要請する改革を先送りしてきた企業が少なくない。その上,従来の財務諸表はデフレのリスクを表現できないばかりか,粉飾決算を招いて市場の信頼を失った。対策として国際会計基準である連結決済,時価主義会計,税効果会計,減損会計などが実施のスケジュールに入っている。待ったなしの状況の中で,企業は新たな経営システムと経営技術の構築を迫られている。本書はその原理原則を説明する問題意識で書いたとされる。本書を貫くキーワードの一つはERP(Enterprise Resource Planning=会社全体の経営資源の計画的活用)である。
 今後は,企業が資金をどのように投資・回収しているかを示すキャッシュフロー計算書が重視される。経営者はフリー・キャッシュフローを最大化し,それを再投資するか,有利子負債の返済に充てるか,最も効果的に配分する手腕を問われる。投資の是非は,将来のキャッシュフローを加重平均資本コストにリスク・プレミアムを上乗せしたハードル・レートで割り引いた現在価値で判断される。税引後営業利益から資本コストを差し引いた経済的付加価値EVAはプラスでなければならない。含み益を経営のバッファーとして,市場シェア拡大を目指して甘い採算で過大な投資を行なった手法は過去のものである。
 連結決済は,子会社群を含むグループ全体の経営管理・リスクの管理を要請する。ERPは,集中仕入れから,債権債務のネッティング,資金の集中管理と親会社による一括調達によるキャッシュ管理効率化に至る財務戦略を必要とする。キャッシュ管理は,金利リスクと為替リスクを考慮したグループ全体の資金プール,売掛金,買掛金の総合管理である。そこでは当座貸越枠を含むリクイディティー・マネジメントが重視される。
 こうしたことすべてを一元管理するコンピューター技術としてNTTデータがグループ集中管理用に開発した7カ国言語と多通貨に対応したソフトが,また国境を超えた賃金集中管理手法ではドイツ銀行が開発したソフトが紹介されている。筆者がそれぞれ両社の実務家であるので,自社広報のきらいはあるが,内容は確かである。市場の時代における企業の戦略的ニーズの指摘だけでなく,実務家による技術的説明は本書の強みの一つである。
 日本で先端的経営技術導入が遅れている理由としては,トップダウンによる戦略決定が行われない文化的背景が指摘されている。多数の銀行との取引は資金集中管理の障害となっている。こうした伝統の克服は経営現場の工夫と決断を要請するものである。
 企業は市場の時代をどう生き抜くかの考え方と技術の両面にわたる示唆を多く含む本書は,企業の企画部門,及び,財務経理部門の経営者と幹部社員に一読を勧めたい。英文略語の説明は注記にはあるが,頻発するので通読にはやや根気を要する。
(C) ブッククレビュー社 2000

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日経ビジネス1999/4/12

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 半世紀以上、日本とかかわってきた元駐日英国大使ヒュー・コータッツィ氏の回想録である。英外交官として先輩にあたるアーネスト・サトウ氏は明治維新前後の日本について貴重な記録を残したが、コータッツィ氏もその体験を日本の戦後史、あるいは日英外交史として価値のある本書に結晶させた。
 本書を一貫する原理原則は「道義」である。かつて氏は、英国のスエズ出兵に抗議して辞職した先輩たちに強い印象を受けた。まさに人間の道義が問われたベトナム難民受け入れを当初拒否していたサッチャー首相を、英外務省が説得した事実を私たちは軽く読み流してはなるまい。
 英国人の不当な日本批判にも氏は断固反論した。昭和天皇崩御時の英国放送協会(BBC)の番組では、元英国人捕虜から「日本人になったのか」と揶揄されたが、主張を貫いたと聞いている。それだけに氏の日本に対する厳しい発言は、友人の忠告として傾聴すべきであろう。
 ボン駐在時代のドイツでは、個人に責任はなくとも、国として過去を償う必要が意識されていた。一方、日本人は占領地の住民への責任を認めることへの抵抗が見られたと氏は言う。南京事件などの歴史を否定したり、無視する動きは重大な間違いである。英国人捕虜にも日本が思いやりを示せば、とうの昔に日本への好意が生まれていただろうと指摘する。
 対日経済外交では、優秀ではあるが視野が狭い官僚との苦闘が続いた。競争が経営効率化を促すことを理解しなかった保護行政が、貿易摩擦を激化させただけでなく、今に見る邦銀や航空会社などの競争力喪失を招いた。日本の課題は、高コスト体質の原因である過剰な規制を、どれだけ早く、効果的に緩和するかである。
 社会通念の変化や倫理教育の欠如による若者の品行の悪さ、投票率の低下が示す政治的無関心の民主主義への危険性など、氏の心配は尽きない。日本では仕事にゴルフが必要との先輩の助言には反したが、誠実かつ精力的に大使の重責を果たした。同時に家庭を大切にし、日本の芸術・文化を愛し、古地図研究やその他数々の日本関連の著書を執筆して、充実した人生を送った。日本に多い仕事人間から見ると、うらやましい限りである。氏の日英交流の功績を称え、英国政府は氏をナイトに列し、日本政府は勲一等瑞宝章を贈った。
 日本を知り尽くしているコータッツィ氏は、日本人に関する一般論は部分的にしか真実でなく、日本人も他の国の国民同様、一人ひとりが異なっていると本書を結んでいる。氏にふさわしい総括である。
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