森永 卓郎さんのレビュー一覧
投稿者:森永 卓郎
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タフ&クール TOKYO Midnightレストランを創った男
2001/02/23 00:17
日経ビジネス2001/2/19
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読み進めるのが楽しくて仕方ない本に久しぶりに出合った。電車の中で何回かに分けて読んだのだが、ホームに電車が入ってくるのが待ち遠しい。早く網棚に荷物を載せて、ページを開きたいからだ。
ラ・ボエム、ゼスト、モンスーンカフェ。急成長を続けるレストラン群の経営母体がグローバルダイニングだ。本書は、その経営者、長谷川耕造氏の成功物語である。ただし、よくある新分野開拓の成功物語ではないし、「銭の花の蕾は血が滲んだように赤い」という花登筐はなとこばこ(劇作家)の世界でもない。好きなことをやりながら、しかもビジネスとして成功してしまうという常識を覆す成功物語なのだ。
飽食の時代、レストランは決して成長分野ではない。しかし、その分野で爆発的成長をしている2つのグループがある。1つが日本マクドナルドや大戸屋に代表される価格破壊グループだ。彼らは低価格を武器に市場シェアを高めることで急成長している。しかし彼らにはいずれ限界が訪れる。シェア100%を超えることはできないからだ。一方、グローバルダイニングには成長の天井が存在しない。それは彼らの売っているものが、料理ではなくエンターテインメントだからだ。
グローバルダイニングのレストランで顧客は、シェフやウエーターという脇役を抱えて、人生の晴れ舞台を踏む。演出にカネを払うのだから、需要は飽和しない。
グローバルダイニングが高付加価値化に成功した理由は2つある。1つは徹底的な分権化である。サービスの質は現場が仕事を楽しんでいなければ高まらない。嫌々やる仕事が感動を与えることはないからだ。だから昇進や昇格、異動はすべて自己申告制。同時に年収2000万円を超える店長が出るほど思い切った実績リンクの報酬が支払われている。普通、そうした実力主義を採ると、力をつけた従業員が独立して会社を去ってしまう。それを防いでいるのが、成功の第2の理由だ。それは社員に有無を言わせぬほど優れた長谷川社長自身の感性である。欧州放浪の旅や激しい恋や映画三昧やジャズへの傾倒から生まれた社長の感性が、実は会社の最も大きな求心力になっているのである。
他社は分権化システムの部分は真似できるかもしれない。しかし、求心力となる感性を真似することは不可能だ。長谷川社長の人生そのものだからである。これからの企業経営にいかに感性が重要か、そのことを初めて明確にした本書は、21世紀型の優れた経営書なのだと思う。
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オランダモデル 制度疲労なき成熟社会
2000/11/13 21:15
日経ビジネス2000/7/31
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バブル崩壊で日本型経営の限界が露呈した後、日本が変革の目標に据えたのは、米国だった。ニューエコノミーに沸く米国にあやかる経済構造改革は今でも続いているが、米国とは根本的に異なる仕掛けでそれ以上の経済パフォーマンスを実現している国がある。オランダだ。
1980年代には2ケタの失業率に悩み、オランダ病とまで言われた経済は、失業率が2%台に低下、その復活はダッチミラクルと称される。
オランダは時給や社会保障面でパートタイマーとフルタイマーの均等処遇を確保。これを通じてパートタイマーの雇用を増やし、ワークシェアリングによる雇用機会の拡充と、パート化による雇用の柔軟化を両立させた。これが、奇跡の秘訣だとされてきた。
もちろんそれは間違いではないのだが、本書が明らかにしていることは、ダッチミラクルを成立させた要因は、もっと幅広く、もっと生活に深く根を下ろしたオランダの社会システムそのものだということだ。
例えばオランダでは、高齢者向けケアサービスのほとんどは非営利組織(NPO)が行い、途上国への開発援助も非政府組織(NGO)が中心だ。政府の役割は補助金を出すことだけだ。法規制も基本法だけ定め、細かいところは関係者がじっくり話し合って詰めていくという手法を取っている。
時間をかけてコンセンサスを作り、国民全体が力を合わせて課題を解決していく。著者が「コントロール型」と呼ぶこの仕組みこそが、オランダモデルの最大の特徴なのだ。
英語では割り勘を「レッツ・ゴー・ダッチ」と言う。オランダの経済・社会システムは、雇用機会や社会保障から社会的責任まで包含する極めてスケールの大きい「割り勘システム」なのかもしれない。著者は、そうした文化が根付いたのは、国土の構造に原因があると言う。海抜下に住むオランダでは、国民全員で堤防を守る必要に迫られてきたのだ。
割り勘文化があるからこそ、オランダの労働者はワークシェアリングに同意し、ボランティア活動に積極的に参加する。その結果、オランダの労働者は多様な雇用機会に恵まれ、高齢者は在宅のままケアサービスを受けることができる。しかもそれを実現する社会コストは、国家権力による再分配よりもはるかに安いのである。
オランダのやり方は、米国のやり方と正反対である。しかし著者が主張するように、これまでの日本文化とはむしろ親密性を持っている。だから経済構造改革派の人たちにこそ、熟読してほしい本なのである。
(C) ブッククレビュー社 2000
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