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嶌 信彦さんのレビュー一覧

投稿者:嶌 信彦

3 件中 1 件~ 3 件を表示

密室政治から公開型政治へ。殴られつつ小沢一郎が登場したテレビCMの経緯を材料に,政治手法の変化を活写

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 タイトルは,キワモノ本のような印象を与えるが,実は「政治手法」の変遷を日本とアメリカについて比較しながら,最近のテレビ・ポリティックス,劇場型テレビ民主主義の問題点などにも言及した好著だ。著者は,25年間にわたり政治記者として日本の政界を取材し続け,4年余のワシントン特派員生活の経験も踏まえ,豊富なエピソードを織り込んで日米政界の政治手法を活写している。
 著者は,サブタイトルにある「視える政治」と「視えない政治」という分析視点により,過去から現在の政治状況の変化や行方,その相克と政治家達の思惑,そして国民がメディアを通じて発信される政治手法をどう見抜くべきか,などについても示唆を与えている。「視えない政治」とは,かつての料亭,待ち合い,密室などを舞台とした根回しの政治,いわば旧体質,旧秩序型の政治手法,「視える政治」とは,公開型,テレビ討論,ショー的演出をとりまぜた“テレビ重視型”の政治スタイルといえようか。
 アメリカで「視える政治」へのターニング・ポイントは1960年のケネディ,ニクソンの大統領選からといわれ,日本は90年代,とりわけ印象深いのは細川首相の登場だっただろう。それ以前の日本の政治は,田中角栄,金丸信,竹下登らが「視えない政治」の主役を演じたが,80年代後半以来のテレビの際立った影響力の増大で,「視えない政治」は胡散臭いものとみなされ始め,政権・政党の支持率にまで大きく反映するようになった。テレビなどを通じた「視える政治」でいかにふるまい,上手にメッセージを発信したり,演出するかが重要になってきたのである。
 本書では,かつて「視えない政治」の主役の1人であり,実力者だった小沢一郎氏が,2000年6月の衆議院選挙で,ホホをビシビシと殴られながらも真っ直ぐに前進する話題のCMの経緯をプロローグに描きながら,いまや「視える政治」こそが国民受けし,同時に政治体質や手法そのものを変え始めてきたことをさまざまな具体例で実証している。真正面から政治手法の変化と意味を,ベテラン記者らしくリアリティーをもってノンフィクション風にまとめあげた筆力は素晴らしい。
 著者は,また「視える政治」の裏でなお脈々と「視えない政治」がさらに奥深いところで息づいていると指摘し,特にアメリカのクラブ社会の実情やワシントン政界とハリウッド・スター達のコネクションのエピソードは興味深く読んだ。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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田中角栄元首相とニクソン元大統領が,政界トップに登り詰めるまでの政治人生を登山になぞらえて記した伝記

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 本書は,日本の「今太閤」といわれた田中角栄元首相と,戦後米国政治史の中で異色の存在だったニクソン元大統領の2人が,政界のトップに登り詰めるまでの政治人生を「登山」になぞらえて記した一種の伝記物語といえようか。
 田中角栄は,日本の戦後政治において,強烈な個性とリーダーシップを示し,いまなお角栄ファンは少なくない。雪深い新潟の山村から苦学し,働きながら上京。持ち前の行動力とエネルギーあふれるパワーで,学歴はないものの日本の最高権力の座についた人物である。今回の「加藤(紘一)政変」などの挫折で一段と閉塞感が強まっている折だけに,角栄的パワーやリーダーシップを懐かしむ声が強いようだ。
 他方,ニクソンは「陽のブルドーザー田中」に対し「陰の戦略家」とみることができる。決して豊かでない家庭から身を起こし,何度も敗北や屈辱の人生を味わいながら,大統領になったものの,ウォーターゲート事件で辞任する。この2人は,5歳違いでほとんど同時代を生き,日米首脳会談も3回行っている。と同時に,絶頂期にスキャンダルで辞任したが,その政治的才能,才覚については退陣後も評価は低くない。まさに似たような政治経歴をもつ陰・陽の個性的政治家の謎を解きあかしたいという気持ちはわかる。
 本書は,この田中,ニクソンを軸に「トルーマンと吉田茂」,「アイゼンハワーと岸信介」,「ケネディと池田勇人」,「ジョンソンと佐藤栄作」といった日米の同時代の宰相たちの比較,エピソードもふんだんに盛り込み,その調査と資料収集,幅広い博識や執筆エネルギーには正直,驚かされる。
 ただ,上下2巻の分厚い著作で,2人の時代的政治家を描いているにもかかわらず,読後感として心の琴線に触れる部分が少ないのはなぜだろうか。著者は,「平成の若者たちはうつむきっ放しだ。元気をつかむために田中角栄を甦らせたい」と考え,米国で同時代に生き,政治家として評価されたニクソンと比較しながら,政治の歩みと「登山」との類似性を方法論としてこの大作に取り組んだようだ。
 しかし,評伝を書くには,その人物に対し愛憎を含めてとことん惚れ込み,肉迫しなければ,その迫力が伝わってこない。その点で著者の博学多才ぶりは読みとれるものの,個人的政治家の果たす役割・情念が政治史や時代を突き動かす有様がもっと明瞭に,新しい視点で描かれていれば,と惜しまれる。政治学者の書いた政治史は,ともすると政治家が歴史に果たした役割を過小評価しがちなだけに,両首脳が時代をどう認識し,どのように歴史を動かそうと志していたのか,などに焦点を合わせて書いていれば,“異色の政治史・評伝”になったのではないか。
 ただ,著者によれば,この「頂きに立て!」は,まだ前半の部分で,今後,対中国外交など多極化外交への展開も描きたいとしている。田中は石油外交で「アメリカの虎の尾を踏んだ」とされる一方で,ハワイの田中・ニクソン会談こそがロッキード事件のカギともいわれる。はたして頂上に立った2人が,国益と個人をどう天秤にかけながらその後の道を歩んでいったのか。スキャンダルで倒れざるを得なかった2人の異能の政治家の数奇な足跡から,政治の“魔力”性を解きあかしてくれたら,読み手の興奮も高まるだろう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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田中角栄元首相とニクソン元大統領が、政界トップに登り詰めるまでの政治人生を登山になぞらえて記した伝記

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 本書は、日本の「今太閤」といわれた田中角栄元首相と、戦後米国政治史の中で異色の存在だったニクソン元大統領の2人が、政界のトップに登り詰めるまでの政治人生を「登山」になぞらえて記した一種の伝記物語といえようか。
 田中角栄は、日本の戦後政治において、強烈な個性とリーダーシップを示し、いまなお角栄ファンは少なくない。雪深い新潟の山村から苦学し、働きながら上京。持ち前の行動力とエネルギーあふれるパワーで、学歴はないものの日本の最高権力の座についた人物である。今回の「加藤(紘一)政変」などの挫折で一段と閉塞感が強まっている折だけに、角栄的パワーやリーダーシップを懐かしむ声が強いようだ。
 他方、ニクソンは「陽のブルドーザー田中」に対し「陰の戦略家」とみることができる。決して豊かでない家庭から身を起こし、何度も敗北や屈辱の人生を味わいながら、大統領になったものの、ウォーターゲート事件で辞任する。この2人は、5歳違いでほとんど同時代を生き、日米首脳会談も3回行っている。と同時に、絶頂期にスキャンダルで辞任したが、その政治的才能、才覚については退陣後も評価は低くない。まさに似たような政治経歴をもつ陰・陽の個性的政治家の謎を解きあかしたいという気持ちはわかる。
 本書は、この田中、ニクソンを軸に「トルーマンと吉田茂」、「アイゼンハワーと岸信介」、「ケネディと池田勇人」、「ジョンソンと佐藤栄作」といった日米の同時代の宰相たちの比較、エピソードもふんだんに盛り込み、その調査と資料収集、幅広い博識や執筆エネルギーには正直、驚かされる。
 ただ、上下2巻の分厚い著作で、2人の時代的政治家を描いているにもかかわらず、読後感として心の琴線に触れる部分が少ないのはなぜだろうか。著者は、「平成の若者たちはうつむきっ放しだ。元気をつかむために田中角栄を甦らせたい」と考え、米国で同時代に生き、政治家として評価されたニクソンと比較しながら、政治の歩みと「登山」との類似性を方法論としてこの大作に取り組んだようだ。
 しかし、評伝を書くには、その人物に対し愛憎を含めてとことん惚れ込み、肉迫しなければ、その迫力が伝わってこない。その点で著者の博学多才ぶりは読みとれるものの、個人的政治家の果たす役割・情念が政治史や時代を突き動かす有様がもっと明瞭に、新しい視点で描かれていれば、と惜しまれる。政治学者の書いた政治史は,ともすると政治家が歴史に果たした役割を過小評価しがちなだけに,両首脳が時代をどう認識し,どのように歴史を動かそうと志していたのか,などに焦点を合わせて書いていれば,“異色の政治史・評伝”になったのではないか。
 ただ、著者によれば、この「頂きに立て!」は、まだ前半の部分で、今後、対中国外交など多極化外交への展開も描きたいとしている。田中は石油外交で「アメリカの虎の尾を踏んだ」とされる一方で、ハワイの田中・ニクソン会談こそがロッキード事件のカギともいわれる。はたして頂上に立った2人が、国益と個人をどう天秤にかけながらその後の道を歩んでいったのか。スキャンダルで倒れざるを得なかった2人の異能の政治家の数奇な足跡から、政治の“魔力”性を解きあかしてくれたら、読み手の興奮も高まるだろう。
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