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吉廣紀代子さんのレビュー一覧

投稿者:吉廣紀代子

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本愛って、なに?

2001/10/31 22:17

人間関係に潜む孤独な心の闇を描く

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 表題の他に『地獄はない』『燃えあがる森』の中篇の主人公は、いずれも男の傲慢に苦しむ女たちを収めている。

 40か国語以上に翻訳され、800万部を超えるミリオンセラーとなった『心のおもむくままに』の著者スザンナ・タマーロの久々の新作は、これまでの作品と比べると、親密な人間関係に巣くう支配がリアルに表現され、その絶望と孤独が語られている。
 とは言っても、タマーロの持ち味である爽やかな自然描写や心の語らいが随所に散りばめられ、レイプやドメスティック・バイオレンス、児童虐待も決しておどろおどろしくは描かれていない。
 『愛って、なに?」のローザは娼婦の娘で父親を知らない。おまけに8歳で母親を交通事故で失う。唯一の親族である大伯父夫婦も寄宿学校のシスターも彼女を厄介者扱いするだけで、どこにも居場所はなかった。成人すると同時に、ローザは住み込みで小学生の女の子の世話をする仕事を始めた。家族の一員のような待遇で、建築家で設計事務所を持っている主のフランコを父親のように慕った。だが、夫人と娘が海へ出かけると、フランコはローザを誘って学生時代からの友だちの家を訪ねた。アルコールとドラッグで意識を失ったままレイプされ、ローザは妊娠する。中絶を拒否した彼女は夫人の指輪を盗んだかどで家を出される。ありとあらゆる復讐を巡らす絶望的な状況のなかで、ローザは生命は人間以前からあるもので、自分の意志で創り出せないと気づき、新たな人生へ踏みだす。
 あっけない幕切れ。
 そりゃ、人は殺人は犯せても、死人を生き返らせることもできないし、アメーバーの命だって無から創り出すことはできない。だからといって、どっちの男が父親かわからない子どもを産むのを「愛」とされると、超越的ではあるかも知れないけど、押しつけがましく、現実的、人間的とは思えない。宗教的理由とか中絶反対勢力が主張する「プロライフ」なんかを持ち出されないだけマシかも知れないが、読者としては突き放されてしまう感じ。もしかして、「あなたならどうする?」というタマーロから読者への問題提起なのかしら。それとも乞う続編? (吉廣紀代子/ノンフィクションライター)

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紙の本心のたどる道

2001/10/31 22:16

タマーロの素顔が垣間見れ、ファンには興味深い本

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 1999年の講演2題と1998年暮れのインタビューで構成されている自らを語るスザンナ・タマーロ。

 これまでスザンナ・タマーロの作品は、子ども向けも含めて10冊が翻訳されているが講演とインタビューをまとめたのは、初めて。それだけに彼女自身が語られ、タマーロのファンにとっては興味深い1冊になろう。
 最初の1篇『神秘への驚き』は1999年8月、リミニで行われた集会で話されたもので、『闇から光へ』は、同年2月にローマの大聖堂で行われた講演録。そして、インタビューは、41歳の誕生日を2日後に控えた98年12月、農園の自宅で行われた。また、訳者が99年5月にタマーロの生まれ故郷で、スロヴェニアとの国境に近いトリエステを訪ねた様子も加えられ、著作カバーでおなじみの無雑作なショートカット、ボーイッシュなポートレートから彷彿とするような著者のさりげない対応ぶりも紹介されている。
 面白いのは、インタビュー。講演がタローマのペースで、作品にもしばしば登場している孤独な少女時代の不安が語られ、自分自身を含め、人を理解する鍵が「和解」であり、小説にもそれを書いてきたことが明らかにされているのに対して、インタビューでは答えたくもないだろう質問や批評にぶつかっている。
 たとえば、彼女はカトリック教徒であり、信仰が基本になっており、超越者への思いは書いているが、小説は特定の人のために書いているのではないから「カトリック作家」とは呼んで欲しくないと。
 また、自作への書評は読まないと言う。その理由は、書評家は、作品を読んでいないからだと答えている。
 インタビュアーが聞く。「あなたに向けられた批評は、陳腐なことを書いている文学ですが、どう思われますか?」
 タマーロが断言する。人生というのは陳腐で、人の生死にまつわる喜怒哀楽を陳腐だとすれば、それが人生の本質である」と。「独創性は、人生は独創的であるべきと考えるほど凡庸な人の頭のなかにしかない」と。
 ミリオンセラーをだした女性作家への批評を粉砕しようと躍起になっている素顔が垣間見られる。(吉廣紀代子/ノンフィクションライター)

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紙の本黒と青

2001/08/20 10:39

愛という名の下に隠された悲劇

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主人公・フラン・ベネデットはニューヨークの病院の救急室で働く看護婦。19歳で出会い、21歳の時、結婚した夫・ボビーはニューヨーク市警察の警察官。ささやきかけるような親しげで心地よい話し方の虜になったが、彼は独占欲が強く、彼女が知人の兄とダンスをすると、指のあとが刺青のように丸1週間残る程、二の腕を強くつかんだ。
 結婚してからは暴力をふるったあと、夫はすすり泣きながら妻を愛撫して、誰よりも愛していると言った。すると、夫は両親よりも自分を大事にしてくれる人に思えた。
 流産が続いたあと、息子・ロバートが生まれた。お気に入りのインテリアに囲まれた自宅は快適だったが、最愛の息子は物心ついた頃から父親が母親をどなる恐ろしい声、殴る音、母親の悲鳴、傷の手当をしながら泣く声を聞きながら、両親の争いには目をそらして成長していた。
 息子が10歳になったとき、彼女は感情を露わにしない息子のために17年間の結婚生活から逃げ出す決断する。そして、身を委ねたドメスティック・バイオレンス(DV)被害者支援組織の手で、名前を変え、息子とふたりフロリダへ連れて行かれた。
 与えられた殺伐とした仮の宿で駆けめぐるのは夫への愛憎と仲がよかった6歳下の妹との思い出、不安を露わにする息子の先行き。 
 彼女はこつこつと築きあげてきた過去を失う哀しみと孤立にうちしおれながらも、仕事、友人、恋人を得て、新しい地で、サバイバーとして再出発するが・・。
 
 DVが社会的な問題とクローズアップされてから30年近くが経つアメリカでは、児童虐待と並んで映画や小説のテーマ、伏線として登場する機会が目に見えて多くなっている。そのなかで『黒と青』は被害者の妻が経済的に自立していても、なかなか夫の元から逃げられなかった事情や思いのたけが語られているのが特徴。
 実際、夫婦や家族にはパワーとコントロールの関係が“愛”の名の下に包み隠されているし、親密な関係では理性よりも感情の方が先立つから人権尊重の合理的選択は難しい。その事実がリアリティをもって描かれている。
 タイトルの『黒と青』は、妻が夫に顔を殴られてできた黒と青と赤のあざの色からのようだ。
(吉廣紀代子 ノンフィクション・ライター)  

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