斎藤貴男さんのレビュー一覧
投稿者:斎藤貴男
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日銀崩壊
2000/10/26 00:15
日経ビジネス1998/12/21
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日本銀行の資産内容が急速に悪化している。銀行や証券会社の相次ぐ破綻で、日銀特別融資(日銀特融)が乱発されたためである。「キャッシュディスペンサー(現金自動支払機)に成り下がった」とはOBたちの嘆き声。
しかも最近は、法の枠を超えた“ヤミ特融”さえ常態化しているという。かの日本長期信用銀行をはじめとする複数の金融機関が対象で、日銀はこの“超法規的措置”を、天下り先拡大の武器にしているというから恐れ入る。
日銀特融の原点は1965年、当時の山一証券に対して行われた措置に求められる。ただしこの際、日銀は山一の新旧経営陣の責任を明確にし、私財も提供させた。後顧の憂いなきようにと幹部たちが真剣な議論を交わしていた様子が、内部資料に残っていた。
翻って現代。金融・証券界にはそもそも責任という言葉が存在しない。“エリート課長”とやらが接待漬けで逮捕されもしたが、たった1人の生贄の陰では、その何百倍もの悪党どもがしめしめとほくそ笑んでいるのだろう。この国の“中央銀行”は、歴史を教訓とするどころか、三十数年前よりもはるかに後退してしまった。
日銀は一朝一夕にここまで墜ちたのではない。かつて15年間も日銀に勤務した経歴を持つ著者が書き下ろした本書『日銀崩壊』を読むと、腐敗の現実とプロセスがよくわかる。
あまりにも完璧な天下りシステム。公私混同も甚だしい縁故採用の横行。シンパ学者を金で操る世論誘導の実態。寿司を差し入れてくる民間銀行を指して“○銀寿司”と呼び捨てる驕慢きょうまん…。
心ある日銀マンたちはことごとく失望し、去っていく。とっくの昔に“過去の人”になっていた速水優新総裁の登場とその後の体たらくは、失望をいっそう加速させた。
関係者ならではの興味深い新事実がいくつも紹介される本書に、しかし、いわゆる暴露本のニュアンスは乏しい。著者はあくまでも、愛する古巣の再生を願いつつ、そのための処方箋まで提示している。行間から滲み出る叫びは、悲痛でさえある。
かつての同僚に1日も早く届けたいという思いからなのか、本書は緊急出版的な趣が濃い。それだけに個々の話題の突っ込みがやや浅く、もの足りなさも覚えるが、その分わかりやすく仕上がっているとも言える。
著者は「あとがき」で、いずれもっと子細な考察を加えた書物を世に問うつもりだと公約した。日銀のみならず、あらゆる官庁や大企業で、彼のようなOBや現役幹部が次々に現れるようにならなければ、この国に明日はない。
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