吉野 直行さんのレビュー一覧
投稿者:吉野 直行
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グリーンスパンの魔術
2000/11/13 21:15
日経ビジネス2000/5/8
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わが国の景気停滞が続く中で、米店頭株式市場(ナスダック)の下落はあるものの、アメリカ経済は、IT(情報技術)革命にも押されながら、息の長い成長を続けている。好調の理由は、1つにはアラン・グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長による金融の舵取りが挙げられる。米国の世論調査でも、96%の会社経営者がグリーンスパン氏の再任を支持している。本書は、氏の生い立ちから始まり、ブラックマンデー、S&L(貯蓄金融機関)危機、アジア危機、ロシア危機など、数多くの金融危機に直面しながら、それらを乗り越えた手腕を紹介している。
グリーンスパン氏の金融政策の特徴は、金利の微調整をしつつ(ファインチューニング)、マーケットと常に対話しながら政策を進める点だ。例えば、株価が必要以上に高騰し、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)よりも高めに動いていると判断した時には警告を発し、逆に株価の動きが低すぎる時には、楽観論を述べる。
彼は若い頃、経済コンサルタントとしてマクロ・ミクロの経済トレンド・予測を分析する精緻な数量的手法を学び取り、FRBで彼の特徴となっている「ボトムアップ型」の分析手法を開発、政策の舵取りに役立てている。
グリーンスパン氏はインフレファイター(インフレを低く保とうとする)でもあり、それがポール・ボルカー前議長の後任として選ばれた背景でもある。事実、彼の政策では、幾分インフレ懸念が出始めると、早めに引き締め姿勢をとっている。
グローバル化が進む中で、彼は、「一層の競争激化は、金融仲介コストの低減によって預金者と債務者双方に利益をもたらし、資本の効率的配分が促進され、技術革新の普及が早くなる」と指摘する。わが国では、長引く金融機関の不良債権問題により、銀行の技術革新スピードは低下、証券決済などの迅速化もゆっくりとした形でしか進んでいない。民間金融機関がお互いに自分のビジネス分野を守る時代は終わった。わが国の金融システムがアジアの中心として利用されるようなグローバルな金融技術の革新を民間は進める必要がある。
また、景気に回復の兆しが見える中で、ゼロ金利政策の変更に対する市場からの反対の声が強い。1980年代後半のような長期間の低金利、90年から91年にかけての急激な金融引き締めが、経済に対する悪影響を及ぼした事実を反省し、金融政策の連続的な微調整と、常に市場参加者に対話を促し、市場・国民からの信頼を維持できることが望まれる。
(C) ブッククレビュー社 2000
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