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三中信宏さんのレビュー一覧

投稿者:三中信宏

36 件中 31 件~ 36 件を表示

ニクズクがバンダ諸島にしか生えなかったせいで

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 ハンバーグをこねたりカレー粉を調合するとき、ナツメグやメースが香辛料として大活躍する。この2つの香辛料は、どちらもニクズクという樹木から取れ、それぞれ黒い種子と朱い種皮を乾燥させたものである。16〜17世紀の東南アジア(東インド諸島)では、このニクズク由来の香辛料を求めて立て続けにやってきた、ポルトガル・イギリス・オランダなど西洋列強が砲火を交えた争奪戦を繰り広げた。
 本書は、この「スパイス戦争」のありさまを当時の取引記録や書簡など一次資料に基づいて描き出した労作である。とりわけ、香料諸島と呼ばれたモルッカの南端、バンダ海に浮かぶ小島ルン島(ニクズクの特産地)をめぐる英蘭の攻防戦(1620年)ならびにアンボイナ事件(1623年)について、イギリスの立場から生々しい描写がなされる。
 確かに世界史ノンフィクションではあるのだが、私は本書を生物地理の引き起こしたある歴史的事件の叙述として読んだ。本書の描くオランダ人はまさに「鬼畜」である。この点はいささか一方的であるように感じられた。同一のテーマをオランダ側資料に基づいて論じた本、たとえば永積昭『オランダ東インド会社』を読めば、おそらく複線的な理解が可能になるだろう。

(三中信宏/農林水産省農業環境技術研究所主任研究官)

目次 2
謝辞 5
プロローグ 11
第1章:北の海のつむじ風 19
第2章:何という不健康な気候 48
第3章:音楽と踊るおとめ 70
第4章:ライオンの爪にかけられ 98
第5章:「提督、謀られました」 132
第6章:洋上の反乱 158
第7章:食人種の国 183
第8章:セント・ジョージ旗 210
第9章:紳士の争い 234
第10章:血染めの旗を掲げて 259
第11章:火責め、水責めの裁き 296
第12章:取引成立 329
エピローグ 350
解説(松園伸) 359

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紙の本森の自然史 複雑系の生態学

2000/11/09 00:53

生きている森林の諸相:熱帯雨林・照葉樹林・落葉樹林

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 森林という生態系がこれほどまで多様な研究を育む素材を提供していたのかと驚かされる。本論文集の執筆者たちは、いままさにフィールドで観察を続けている若手研究者ばかりであり、読者はその新鮮な研究成果を味わうことができるだろう。
 東南アジアの熱帯雨林からはじまり、西南日本の照葉樹林、そして、北日本の落葉樹林にいたるまで、気候帯の異なるさまざまな森林の中で、植物・動物たちが互いにどのように関係しあいながら生きているのか−この大きな研究テーマにますます目が離せなくなってきた。
 欲を言えば、各章の図表がもう少しわかりやすければ、一般読者にとって取りつきやすかっただろう。いくつかの章にみられる数理モデルに基づく議論、そして何よりも「複雑系としての森林」という主張については、編者たち自身の専門的知識を生かして本書全体を包括するような概論的解説の章が含まれていたならば、より説得力を増したのではないかと私は考える。

(三中信宏/農林水産省農業環境技術研究所主任研究官)

【目次】
はじめに(菊沢喜八郎・甲山隆司) iii
第1部 木の花・果実
 第1章:熱帯雨林における植物の開花・繁殖様式(百瀬邦泰) 3
 第2章:冷温帯落葉広葉樹林における樹木の開花と結実(加藤悦史) 18
 第3章:冷温帯落葉広葉樹林における種子散布(柴田銃江) 30
 第4章:森の果実と鳥の季節(木村一也) 43
第2部 実生の定着と稚樹の生活
 第5章:マレーシア半島の熱帯低地雨林に果実-果実食者の関係を探る(安田雅俊) 61
 第6章:萌芽をだしながら急斜面を生きるフサザクラ(酒井暁子) 75
 第7章:熱帯雨林におけるフネミノキの樹形変化(山田俊弘) 96
 第8章:ミズナラの実生定着と空間分布を規定する昆虫と野ネズミ(和田直也) 108
第3部 森の動態と樹種の共存
 第9章:トドマツ・アカエゾマツ林の更新動態と2種の共存(高橋耕一) 123
 第10章:照葉樹林の構造と樹木群集の構成(相場慎一郎) 134
 第11章:リュウノウジュの林冠優占と熱帯雨林の多様性(伊東明) 146
第4部 生態系としての森林
 第12章:春の広葉樹林における植物-昆虫-鳥の三者関係(村上正志) 165
 第13章:森の土壌をめぐる物質動態(柴田英昭) 177
 第14章:河川の構造と森林(井上幹生) 189
 第15章:森と川のつながり−河川生態系における河畔林の機能(佐藤弘和) 206
引用・参考文献 219
索引 231

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細目を見落とさないことがエッセイの根元

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 本書の中でグールドはこれほど長期にわたって科学エッセイを書ける個人的資質をほのめかす、ある告白をしている:「いちど頭に入った細目を忘れたり消去することができないのだ」。
 彼のエッセイには、ごく些細な(常人ならば見落としてしまいそうな)細目を足がかりにして、進化の一般論へ話を展開していくという特徴がある。「エッセイ製造器」であり続けるにはそれだけの理由があったのだ。
 汲めども尽きぬエッセイの泉──しかし、彼はこの連作エッセイの終末をもう予告している。あと3冊──来たるべき終焉へのほろ苦さを読者はすでに感じ取るかもしれない。歴史科学としての進化学のもつ基本的性格、細目の魅力とそのかけがえのなさ、そして彼の人生を方向付けた博物館への愛着を繰り返し説き続けるグールドを評者は本エッセイ集で深く味わった。
 最後に、これだけ多岐にわたる細目を一覧できる索引がほしいと願うのは、けっして評者ひとりだけではないだろう。

(三中信宏/農林水産省農業環境技術研究所主任研究官)

《下巻目次》
第5部 博物館賛歌
 17章 恐竜ブーム
 18章 キャビネット博物館−新鮮採れたてだよー!
 19章 歩きながら進化を学ぶ
 20章 ラズモフスキー二重奏
 21章 四頭のアンテロープの黙示
第6部 優生学のばらばらな顔
 22章 種なしプラムは考える葦の教訓となるか
 23章 優生学を裏付ける証拠の吸い殻
 24章 過酷すぎる一撃
第7部 進化の理論、進化の物語
・理論
 25章 ダーウィンの革命は成就させられるか
 26章 どでかいキノコ
 27章 スネールとスケールについて
・物語
 28章 レビヤタンをその過去で釣り上げる
 29章 甲虫への特別な肩入れ
 30章 王者が隠者になれるなら、ぼくらはみんなお猿の叔父さん
 31章 モスクワのモクレン
第8部 リンネとダーウィンの祖父
 32章 自然の仮面をはじめて剥ぐ
 33章 つぼみとたっぷりの性生活によって自然を配置する
 34章 三世代四つの隠喩
訳者あとがき
文献目録

『干し草のなかの恐竜 上巻』へ

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いまだ涸れぬ進化エッセイの泉

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 四半世紀にわたって毎月進化エッセイを書き続けてきたグールド。最新刊である本書は、彼の進化エッセイの泉がいまだ涸れてはいないことを読者に示している。しかし、連作エッセイ集も「七冊目ともなれば」、過去にたどってきた軌跡を振り返ってもよかろうという著者の思いがあるのだろうか。上下巻合わせて700ページにも及ぶ大部のエッセイ群のそこかしこに過去のエッセイへの言及が見られる。
 一見エッセイごとにばらばらのトピックスを互いに結び付けているのは、単に著者特有の確固たる姿勢と強靱な個性だけではないだろう。むしろ、エッセイ群が全体としてある種の成熟を遂げつつあるのだと私は理解した。
 大進化への一貫した視点、遺伝的決定論への飽くことなき糾弾、進化と社会・文化との絡み合いなど−グールドおなじみのテーマがあらたな素材と切り口で読者を惹きつけている。初めての読者だけでなく常連読者たちもきっと新鮮な読書を楽しめるだろう。

(三中信宏/農林水産省農業環境技術研究所主任研究官)

《上巻目次》
七冊目ともなれば
第1部 天上と地上
  1章 太陽輝くニューヨークにおける悦ばしき考察
  2章 デニスの大論争どたんば大逆転(あるいはDDDD=2000)
  3章 天空について語る天体力学者と地上について語る自然史学者
  4章 平らな地球の遅い誕生
第2部 文学と科学
  5章 怪物の人間的資質
  6章 牙と爪100周年
  7章 優美と明知
第3部 起源、安定性、絶滅
・起源
  8章 心の目
  9章 シタムシ、カギムシ、クマムシ
・安定性
 10章 コーディリアのジレンマ
 11章 ルーシーは地上で停滞する
・絶滅
 12章 干し草の中の恐竜
 13章 ユピテルの稲妻の矢
第4部 巻き貝の本
 14章 ポーの最高ヒット作
 15章 透明人間、汝の名は女性なり
 16章 左巻きの貝と右巻きの頭

『干し草のなかの恐竜 下巻』へ

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紙の本地震予報に挑む

2000/08/25 19:55

著者と共同研究者たちの熱意が伝わってくる

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たいへんおもしろく同時に考えさせられる本である。
 流星の電波観測を行っていた天文学者である著者がたまたま異常な波形を観測し、それが数々の地震予報を生み出す新しい方法(KT法)にたどりつくまでの導入部分は思わず感情移入させられるほどだ。
 上空はるかな天体観測の技術が地上の地震予報という今もっともホットな話題に結びついたという意外性が本書の魅力である。地表と電離層との間に形成されるという巨大コンデンサー仮説といい、最近数年間の地震発生の多くがこの方法によって予報されているという事実の蓄積は、さらに専門的な経験的検証に値する理論を含んでいると評者は感じた。
 何よりも、文字どおり私財を投げ打って観測を続けている著者とその共同研究者たちの熱意が文章から伝わってくる。天気予報のように誰もが利用できる地震予報を諦めることなく目指したいという著者の主張に評者はうなずいた。
(三中信宏/農林水産省農業環境技術研究所主任研究官)

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困難な問題をあくまでも経験科学の問題として論じる

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 伊豆七島での活発な火山・地震活動が連日報道されている現在(編註:2000.7.31)、本書は実に時宜を得た出版である(著者は火山噴火予知連絡会の会長を務めた)。
 火山とは何かという基本的定義からはじまって、噴火の予兆となるさまざまな現象(宏観異常現象)に触れ、雲仙普賢岳・有珠山の事例を含む最近の噴火の事例を挙げながら、噴火現象に伴う火砕流・溶岩流・火山灰降下などを解説している。豊富なグラフや図表は一般読者には少し難解であるのが残念だが、本文の理解を大いに助けている。
 噴火予知という困難な問題をあくまでも経験科学の問題として論じようとする著者の姿勢に評者は共感した。
 また、火山災害を軽減するための情報公開と報道のあり方について論じた最終章が印象に残った。「予知の限界がありながら、社会はそれを許さない風潮にあるように見える」という著者の言葉は、科学と一般社会との微妙なずれを感じさせる。
(三中信宏/農林水産省農業環境技術研究所主任研究官)

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