はらこさんのレビュー一覧
投稿者:はらこ
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子乞い 沖縄孤島の歳月
2003/08/06 01:30
そこには島と沖縄の現実を20年にわたって追っている深みがあった。
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沖縄県八重山諸島にある人口約50人の鳩間島。歩いて島を一周しても1時間あれば足りる。漫画「光の島」で唄美島として、その舞台となっている島で、その漫画の元となったのが、この「子乞い」だ。
島の過疎化と高年齢化は、必然的に島から子供の姿を消す。唯一残っていた少女・紫麻が西表島へと転校してしまう事から、小学校の廃校阻止のために島のおじい・力 が、自らの孫である勇生を呼び寄せたり、施設の子供を里子に向かいいれ、島を存続させていく元新聞記者によるルポである。ただし、この本を読み続けていくうちに、過疎問題や子供によって救われた島という事実以外に、日本と沖縄の歴史を追って、日本という概念は単なる行政上の単位に過ぎないという、筆者の深い問題意識が感じられた。
「何にもないよ、自然以外には。」と言われて、実際に鳩間島に訪ねてみると、島の人たちは、里子に関しても、また内地の人間に対してもかなりオープンだったことに驚いた。本やテレビで有名になっているからだろう。だが、どの人と話していても共通していたことは、島の自然をそのままで残そうとする姿勢だ。「子供の教育には間違いなくいい場所さぁ」と言っていたおじいを思い出す。島のつい10年前のことを読んでから行ったので、多少の変化を感じることとなった。これは想像だが、子供を受け入れてこの自然のどこにもない良さを改めて感じ、観光に頼り過ぎない人々の意識を作り出したのではないかなと思う。
この本は増刷されているので、あとがきに時を経た筆者の声と勇生の声がのっている。そこには島と沖縄の現実を20年にわたって追っている深みがあった。
やえやまGUIDE BOOK 南国世果報体験 2003
2003/08/05 23:02
八重山へ行くなら、この一冊で十分!
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石垣の桟橋のカメラ屋さんで「これだ!」と思い、買いました。手に取った感触もよいですよ。
私は、西表に渡りキャンプをしましたが、普段は気にも留めない鳥の鳴き声や小動物の走り去る音にも敏感になってしまうもの。そんな時、まさか旅のガイドブックが役立つとは思わなかった。だいたいガイドブックって、民宿やダイビングショップの案内や地図、船やバスの時間を見るものだと思っていたら(もちろんそれも他の本に比べてとても詳しい!)、鳥の名前とそのスケッチがのっていて、「ほうほう、これがコノハズクというふくろうか」とか、「何々、セマルハコガメ… ん! これ天然記念物じゃん」となってパシャリコ撮ったりできるのだ。
そのほか、沖縄独特の名産品だって、スケッチや写真でのっています。沖縄の言葉は、難しくってなかなか憶えられない。でも大丈夫。フルーツや香辛料や海産物、泡盛の銘柄だってたくさんのっています。帰ってきて思い出そうとしてもなかなか出てこず、この本をめくりましたよ。
この一冊があれば、行く先の島においてあるパンフレットとで上手な旅を送れること間違いなしです。
半落ち
2003/07/25 13:53
「週刊横山秀夫」を期待して…。
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推理小説なんて…という気持ちがあったのか、なかったのか、これまでなぜか敬遠していたが、「『週刊 横山秀夫』を作ったらバカ売れ間違いなし」と、どっかの編集者が言っていたのを聞き、ミーハー心に火がついて、早速読んでみた。
読める読める…するする読める。
最後のオチもピタリと決まり、これが推理小説かぁ…。
いいんじゃない。
よかよか。
余暇を過ごすにぴったりなどと文字ってみたりするほどすっきり。
確かに、「週刊 横山秀夫」が出れば気になる雑誌になるに間違いない。でも、この社会派オチが続くようではすぐにマンネリになることも間違いない。とにもかくにも、私が横山秀夫のこれまでの本を読みつくしたい気持ちになった事も間違いないのです。おすすめです。
少年H 上
2003/07/25 13:39
じいちゃんに会いたくなる本
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この本を読んでいるときは、おじいちゃんやおばあちゃんの戦争体験談を聞くことと同時に、自分が少年Hの立場になってその時代を感じることが少しはできる。目に映るものや聞こえてくる音。違和感を感じたこと。大人との会話。そしてまた、そこで感じたものをじいちゃんに「本当にこんなことしてたの!!」と聞きたくなるのだ。
親の実家に帰省したときに、おじいちゃん・おばあちゃんから戦争体験を恐いもの見たさで聞いたものだ。高松にある家の屋根から広島のきのこ雲が見えたとか、「あほらしい」と思いつつバケツリレーをしたことなど。友達のおじいちゃんはフィリピンで人を殺したと言っていた。それを聞いた時は、本当にどきどきして息がキュッと詰まる感じがした。
戦争や地域紛争のニュースを見ても、実感が湧かない・リアリティーが感じられないのは全て想像力の問題だと思う。想像力がそこに及ばない事。教科書の中だけでかつてあった出来事を学び(というよりも暗記し)、ゲームの中のバーチャルの世界で登場人物を操作する事によって得られる生きているという実感を楽しむ。戦争責任の問題にしても、過去の事に想像を働かせられない者にとって「なぜ50年も昔の事に、いつまでも日本が責められなくてはならないのか」という考えしか浮かばないだろうと思う。
戦争を体験する事はできないし、あってはならない事だけれど、
この先、そこに思いを馳せる事はしていかなくてはならないよね。
「少年H」が青い鳥文庫で出版される事を知り、ハードカバーで以前出版された時、年配の方にも読んでもらいたいと漢字にルビがふってあったことを思い出す。今、戦争経験者が亡くなっていき、戦争を知らない子供とその親の時代にどの年代の人も読める本として残っていくのかなぁと私は思う。
ヘル
2003/11/28 15:12
老いた作家は死を見つめる
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彼の作品は初期短編しか読んだことがなかったが、横尾忠則の絵がとても印象的だったので買ってしまった。その初期短編はいまでも強く憶えている。人間の脳みそをビーカーに入れて、脳みそだけとなった人間はいつまでたっても生身の人間と会話ができるという近未来を描いたものだった。
ヘルを読んだあと、その短編を思い出すと『いかに筒井さんが歳をとり、死をより現実的なものとしてみているのか』ということを感じさせられた。現世でも地獄でも天国でもない、三途の川を渡るまえの世界らしいこのヘルで繰り広げられるドタバタは、仏教図にもでてきそうなもので、ちょっとリアルすぎた。今までの自分の人生を振り返り客観的に自分を見る姿も、いったん心臓停止してしまい蘇生した人の証言に似たものを感じ『筒井さんはなぜこんなに死を恐れているんだろう』という疑問さえ湧いてくるほどだった。それを七五調とドタバタで脚色している感が否めない。
それでも、死んだらどうなるかという世界を仏教図ではなく、横尾忠則の表紙のように、色とりどりに様々な人物をかわるがわる登場させて、見事に読者を混乱させるこの感覚を味わい、筒井さんの短編だけでなく長編も読んでみたいと、さらなる興味を湧き起こしてくれる一冊だった。
星々の舟
2003/08/08 16:37
テーマは重いのに、とても潔い前向きな話。
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『あきらめ』と『執着心』。この2つを使い分けて、自分が傷つかないように傷つかないようにして生きている登場人物たち。
それでも、『生きること』への希望を持っている。
畑を耕す長男・貢の<何のために>。それは<何のために>ではなく、生きているという圧倒的なまでの実感なのだ。父・重之がかつて自殺未遂までした娘・紗恵の横顔から感じた幸福のない幸せ。残された枯れゆく人生にも何らかの意味があると信じずにはいられない重之。
ここにも、失った者への、あきらめと執着がにじみ出ている。
それぞれの思いがどこへ向かっていようとも、やはり家族はひとつの舟に乗って進むしかないのだろうか。
海辺のカフカ 下
2003/07/25 12:57
春樹ブランドのおかげ?
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この作品は、村上春樹の作品でなければ、どこまで受け入れられたのだろうか、が、読み終わったあとの率直な感想だ。
春樹さんの小説は全て“自分探し”なんだと、私は思う。これまでの作品は、登場人物がそれに悩み、もがいている所が、彼らが主張することなく、こちらに伝わってくるものだった。他にも色々あるが、私にはそれが彼の作品のもつ最大のよさだと思う。
だが、
「海辺のカフカ」にはそれがない。読む人それぞれによって感じ方がある、とか読む時々によって感じる部分が違うとか、いう風に、作者が「これがいいたいんだ」というのを放棄している…。つまり、時々批評されるようにこれは手抜き作品?と私は思うのだ。逆に、手をかけているのは、言葉の言い回しやギリシャ神話を出しているあたりではないかな。
全体的には、春樹さんの短編小説が間延びした感じ。
カフカ君が結局、家に帰るという設定も実に悲しかった。
全国にいる15歳の家出少年は、間違いなくこんなにリッチな家出生活を送れるはずも無く、それが小説とはいえあまりにもリアリティがない、悪い意味で現実と乖離しすぎているように感じた。初期3部作とか、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」あたりは、現実との乖離や接点が見え隠れするあたりがおもしろかったんだけどなぁ。
春樹さんの想像力の井戸は底にたどり着いてしまったのだろうか。
それでも、次の作品を楽しみにせずにはいられないのだけれど。
春樹ブランドはまだまだ続く…ということでしょうか。
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