美瑛4さんのレビュー一覧
投稿者:美瑛4
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紙の本二つの祖国 上巻
2003/09/18 22:49
最後まで日本を愛した主人公
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私はこの主人公は最後まで多感な思春期を過ごした祖国日本を愛していたのだと思う。
アメリカ国籍があるがゆえに最後の最後まで日本人にはなりきれなかった彼の切なさを著者は見事に描いている。
そして日系二世の苦悩,その家族ゆえに味わう差別や不遇など,いつの時代でもあることだが,とくに戦争がもたらす苦痛を違和感なく描いている。
戦場でのリアリティある描写とは裏腹に,日本軍の南京虐殺などの生々しい虐待の数々に日本がいかにアジアの多くの国に犠牲をもたらしたかを改めて受け止めることができた。
東京裁判での検察や弁護人の攻防は専門家からみても実に読みごたえのあるものだった。
また原爆への反省や教訓も,あますことなく描く著者の筆力には頭が下がる思いだ。
そこでの内容は今のアメリカのあり方への的確な警鐘ともなっている。
著者は登場人物を通して日本人に大切なメッセージを送り続けていたはずだ。
正義感を貫く姿勢,仕事に公平さを保ちながら真摯に取り組む姿勢,そして日本人としての誇りを垣間見ることのできる主人公を,私は最後まで興味を持って応援しながら読んだが,多くのストレスで酒に溺れていく主人公はさすがに辛いものがあった。
しかし,上中下の3巻を一気に読むことができるほどこの小説の内容は充実していた。
紙の本『大地の子』と私
2003/09/11 21:54
著者のエネルギーに脱帽
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大地の子をテレビで見ていた私は,この本に大変興味を持って読んだ。
小説である以上,ある程度の作り話は仕方がないことだが,
これほどまでに著者が歴史的事実の取材に力を入れていたとは感心した。
国境を越えた人間としての愛,父親の愛,そして戦争が人間を変えてしまうことのペーソスを,「大地の子」という作品に反映している苦労がひしひしと伝わってくる。
著者の戦争体験も踏まえているのだろうが,「中国残留孤児」という表現ではなくあえて「戦争孤児」という表現を使い,その孤児の将来のために,著者の多くの作品の著作権をも財産として寄附する形で財団設立に至った背景をも察することができた。
私は著者の取材力のみならず,多くの作家としての,いや人間としてのエネルギ−を強く感ぜざるを得なかった。
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