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mikegameさんのレビュー一覧

投稿者:mikegame

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本深淵 下

2004/02/10 04:18

すごいなー、保坂さん。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 内容というよりも、裏テーマとしての保坂和志さんについて。

 作中に出てくる文芸作品はたくさんありますが、チェーホフやカフカやオーウェルや、オクタヴィオ・パスやマルケス、そういう人たちに混じって、ひょっこりと(現役の国内の作家である)保坂和志さんの名前が出てくるんですね。しかも主人公が移動中の新幹線で「という演算」を感興をもって読んでいる。これって、影響を受けていることを表明している(少なくとも、そう誤解されることを許容する)ようなものではありませんか。すごいなー、保坂さん。
 そう考えると、この「深淵」の中でも、主人公・麻田布満とその妻・琴絵が、ともに犬猫に対する反感・嫌悪、潔癖を抱いている、その論理的立場について語られる部分があります。これは保坂和志さんに対する、大西氏の回答かとも思える。 
 小島信夫さんの「うるわしき日々」を読んだときも、保坂和志さんの影を感じましたが、純文学の大家と呼ばれる人たちに愛読されている、保坂さんの距離感といいますか、骨太の感じといいますか、老人キラーみたいなそうした存在感は、とても面白いと思います。
 実際、保坂さんの小説、おもしろいですものね。

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紙の本深淵 上

2004/02/10 03:37

俗情に媚びないのであれば、完成の手前にこそ価値があるのでは?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を手に取る人は、ミステリだからというよりも「あの、大西巨人だから」という動機の人が多いのではないでしょうか。だからエンタテイメントとしての完成度の高さよりも、大西巨人が抱えた問題がどこまで深まりを見せたか、という視点から判断すべきかと思います。

 だからネタばれを恐れずに急所を説明します。
 ひとつは「2つの冤罪」。これを主人公は同じ原理原則でアリバイを立証(かたや冤罪の証明、かたや否定)していく。これは成功していると思います。ただし否定の相手が、世の俗情に媚びた日本人民党、ではあまりに物足りません。神聖喜劇で、敗戦前の旧日本軍隊と向き合った時に生じた気迫のような、腑分けしにくい部分に分け入っていく覚悟のようなものを、この小説では感じることができませんでした。
 もうひとつは、麻田=秋山という同一人物が、2人の妻のどちらを選ぶのか。むしろこちらこそ最大のアポリアとして提示されるにも関わらず、主人公はどちらも選ばない。ならばそれにふさわしい格闘とその過程が必要だと思うのですが、主人公はただ、失踪するだけです。
 これではあたかも(主人公が何度も引用する)オーウェルの言う「来世の不存在」ではなく、来世の存在の信仰の方へと、すり抜けていってしまったかのように見える。
 確かに、最後に注意深く、暗中模索の続行であることは明記されています。しかし閉鎖系を構築することを回避して、オープンエンドとして「完成」してしまっては、それもまた一つの閉鎖系ではないでしょうか。失踪できないからこそ、私たちは「を充填」せねばならないのではないでしょうか。
 大西巨人がどう変貌していくか、に興味のある人にはおすすめします。ですが大西巨人の入門書は(そして到達も)、神聖喜劇をおいてほかにないと思ってます。

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紙の本流れる 改版

2003/12/31 03:34

年の瀬は幸田文を読みましょう。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

師走のぴんと張り詰めた清涼な空気、ざわついた街の足音、大掃除やおせち料理の準備やなんやかや。あれ?何か忘れていませんか? そう、幸田文です。クイーン・オブ年の瀬です。というわけで幸田文の大傑作『流れる』です。

ストーリーは、芸者置屋の家にスーパー家政婦さん、梨花さんがやってきていろいろな用事を片づけていく。芸者の間にある様々な思惑。垣間見える懐事情。ほったらかしの犬猫に、ゆすりたかりに、税金の滞納。芸者という「くろうと」の特殊な世界はすでに失われて久しいわけですが、僕はこの小説、極めて現代的なテーマだと思うんですね。身のまわりがおろそかになりがちな芸者さんの日常、というのはそのまま現代人の姿に重なるのではないかと。梨花さんの活躍で最後にはちょっとだけ明るい方向へ進むのですが、活躍、といってもトラブルを解決するわけではなくて、日々の生活の節々に「息」を通わせていく、ただそれだけのことです。メリハリ、実感、ぴんしゃんとした何か。

文体についてもちょっとだけ。「ま、きたないのなんの、これが芸者家の玄関か!」これが地の文体です。「!」ですもの、生き生きしてるでしょ? だからてっきり作者の実体験だと思うんですが、実は読んでいくと「梨花は」が主語の三人称だとわかってびっくりする。梨花さんはほとんど作者そのものと言っていいでしょうが、たまに突き放して見ている時もあって、この未分化で不安定な文体も、また魅力です。

12月は、いつになく生活の端々を意識する月です。だからこそ、幸田文をおすすめします。旬の小説を旬の時期にどうぞ。もちろん、次の師走に備えていまのうちに用意しておくのも、手かも知れませんよ。

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