庵理さんのレビュー一覧
投稿者:庵理
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ラッシュライフ
2003/12/12 02:11
技法を超えたセンス
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あらすじ文には「無関係に思えた五つの物語」とありますが、ひとつの小説なのだから無関係なわけはありません。
変則の錯時法を使用した複数シナリオの同時展開という物語の技法は確かに目を引くのですが、このトリック(筆者の伊坂さんはたぶんこれをトリックとして書いているわけではないでしょうが)には初めから気がつくし、伊坂さんも当然に読者が気づくように書いているので、そこは問題でもないし注目点でもありません。
みるべき部分はその技法と物語との融合、あるいは人物たちのとの融合です。複数の物語が錯綜し、お互いに干渉しあって個々の人間の運命が選択されていく、自分の人生の分岐路は、赤の他人の人生の過程と結果によって目に見えないところで選択されているのだ、という、よく考えるとすごく怖いことが描かれています。
神様のきまぐれ的な「偶然」の裏側を見たら、やっぱりそれは「必然」だったのね、という、世界の舞台裏を見たような気分。
すべてお見通しな神様は、物語内に登場する老犬ではなくって、読者なのでしょうね。で、その神である読者を解体しているのは、筆者の伊坂幸太郎氏。
うーん、欠点が少ない小説です。手法はバッチリだし、テーマも深い。それに加えて、文章も素敵。この文体がまたみずみずしくて良いのです。艶があるというか、色っぽいというか、とても綺麗な文章のセンスなのです。
ちょっと褒めすぎたので、無理矢理に欠点を上げてみましょう。物語冒頭、ある人物の回想シーン。土砂降りの雨の夜、橋の上で、川を泳いでいる人間の音が聞こえた、とあります。がしかし、雨が降っていて、なおかつ橋の上なんかにいるのに、水泳の音なんか聞こえるわけがないだろうにっ(笑)。
と、こんな些細な部分しか、欠点をあげることができません。もしかしたら雨でも水泳の音が聞こえるような場所もあるかもしれないしね。
うむぅ、伊坂氏すばらしい。とっても期待の作家さんです。
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