arouさんのレビュー一覧
投稿者:arou
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紙の本ゆびさきミルクティー 2
2004/02/01 01:20
モラトリアム的なアイデンティティー
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
とあるきっかけで女装をすることになり、その過程で
自分の持っていた「少女的」な可愛さに目覚めて女装に魅入られた少年と
幼なじみの中学生、眼鏡の似合うクラスメートの子3人の三角関係が
物語の中心になっているのだが、特筆すべきはこの作品は従来の
AとBの女の子、君はどっちを選ぶ?
といった単純な2択の問題ではなく、主人公の少年が最も
愛しているのはたぶん「女装の似合っている可愛い自分」
なのだろうという点だ。
「少女みたいな可愛い自分」
「自分に想いを寄せている子がいつも側にいる」という2つの現実が
少年の周りを囲む世界を居心地のいいものに変えている。つまりその
2つの現実が少年の内面にある自我を支えるアイデンティティだと
言ってもいい。
だから、この物語で少年は少女2人からの想いを
曖昧なものにしておきたいと思い、少しでも長続きさせる行動をする。
(2巻の段階で)
だけどそんな少年も声変わり、身長の伸びなどの身体の成長で
女装できなくなるという現実に直面する。また少女たちも
婉曲な表現、直接な表現を使い分け少年に剥き出しの感情をぶつける
「女装のできない自分」
「自分に想いを寄せている子を、いつまでも側に置いておけない」という
現実にぶつかることで、けっして長続きなどすることのないきわめて
モラトリアムな2つのアイデンティティを失いかけた少年が
どんな選択をするのだろうか。また、その2つの代わりとなる
アイデンティティーをいかに構築するのか
興味は尽きない。
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