ひささんのレビュー一覧
投稿者:ひさ
満洲暴走隠された構造 大豆・満鉄・総力戦
2020/01/26 17:01
私たちは今
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「私たちは今、「満洲国」に住んでいるのです。」
この本はこの強烈な一文で終わる。なぜ、著者は、戦後70年以上経ても、私たちは満洲国に住んでいるというのだろうか。
著者の安冨氏は、よく「立場主義」という概念を用い、この国のさまざまな問題を論じている。この本もまた例外ではない。
本著においては、満洲国の成立過程と暴走の構造を丹念に追い、立場主義がなぜいつから始まったのか歴史的事実から説明し、私たちに警告する。多くの読者は、この事実を前に驚愕するかもしれないが、著者は、最後にちゃんと、では、私たちはこれからどうすればよいのか、どう生きればよいのかを明示する。
歴史を学ぶのは、歴史に学ぶためである。つまり、この本は歴史書であるとともに、生き方指南書である。
「学歴エリート」は暴走する 「東大話法」が蝕む日本人の魂
2021/07/07 10:42
学歴エリート暴走のメカニズム
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学歴エリートとは何なのか。
学歴エリートは、なぜ暴走するのか。
著者は、本著において
日本の学歴社会のトップに位置する東大の卒業生たちが
就職先に公務員を選択し、民間企業においては金融機関にこぞって就職するのかをデータをもとに分析し、解説するとともに
日本の学歴エリートが戦後80年近くたった今なお
戦前の官僚の流れを汲んでいることにも言及している。
さらには、明治以降の日本の学校教育の問題が、軍の余剰人員となった下士官を
学校に送り込んだことが要因になったことにも触れている。
とても興味深い内容だ。
いまは、教員の体罰は禁止されているが、30~40年前の私の学生時代には
教員が竹刀や何かしらの棒を持って、生徒に振り回すのが日常的光景であった。
あれが下士官の名残だったのかと思うと、何たる教育を受けてきたのだと唖然とする。
体罰は禁止されたとはいえ、今なお、学校には当たり前のように体育教官室がある。
教員に自分たちが日本軍の下士官の流れを汲んでいるのではないかという疑問や自覚があるとはとても思えない。
そういえば、昔は、勉強したらバカになる、と言われる時代があったと聞く。
つまり、これは、机上で正解を追い求めるような勉強ばかりをしていると
正解のない不測の事態に陥った時、思考停止になり、フリーズしてしまうということ
だろう。
この世界に、正解はなく、いつどこで何が起こるのか正確に予測することは不可能だ。
つまり、東大に入学することが人生の正解ではないし、人生の幸せと直結することは約束されていないということである。
なのに、なぜ 東大がこれほどもてはやされるのか。
それは、そこに東大をもてはやすための恐ろしき言葉の欺瞞が行われており
それが、筆者の言う東大話法なるものである。
東大と東大話法というこの強固なメカニズムによって
学歴エリートは暴走しがちなのである。
この本には、植木等の歌が紹介されている。
なぜ植木等に行き着くのか、それが本著が目指すところである。
読後、YouTubeで植木等の歌を聞いてみた。
あたしンちベスト 1 母じょうねつ編
2020/02/08 15:57
一家に一冊
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あたしンちは、一家に一冊常備しておくことをお勧めする。あたしンちは、登場人物に自分や家族を投影させ、笑ったり、しんみりしているうちに、自然と幸せな気持ちになれる癒し本である。あたしンちは、つらい時、落ち込んだ時、過去を振り返って前向きになれない時、元気になれて、これでいいんだと自己肯定感に浸れる自己啓発本でもある。あたしンちのお母さんの中に、今の自分を見たり、自分の母親の姿を見つけたりする。お父さんの中に、夫を見たり、自分の父親を見つたりする。みかんの中に、娘の姿を見たり、子どもの頃の自分の姿を見つけたりする。ユズひこの中に息子の姿を見たり、子どもの頃の夫の姿を想像してみたりする。そうすると、いつ読んでも、何度読んでも面白い、息の長い本となる。
やっぱり一家に一冊だ!
ベスト本を読んだあと、そう確信した。
怒り 下
2017/02/13 13:31
人を信じるということは
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人は、なにをもって人を信じるのだろうか。
社会的立場、経済力、容姿、出自、態度、言葉、、
相手の情報をどれほど得たとしても、最後は、自分の信じる力の強さによるところが大きい。だから、信じた相手に裏切られたとき、人は、深く傷つく。自分に失望し、相手に絶望する。絶望は、時に怒りに変わる。
けれど、人は、本能的に人を信じたいと思う。そして同時に、本能的に自分が傷つくことを避けたいと思う。その狭間で、私たちはもがき苦しんで生きている。
考える日々 One size fits all 3
2010/09/06 22:17
「考える日々」を考える日々
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ここ最近、腹ばかり立てている。
10年来の知人と考えの違いから衝突した。
業者からの不明な請求に、根拠を問うても、話がかみ合わない。
相手があることだもの、、と考えてみても、やはり、イライラする。
では、私が当たり前と考えてきたものは、いったい何だったのだろう。
ちょっと厭世的な気分になったりして。
本当のこと、正しいことって、いったい何なのだろう。
テレビを見ても、ネットを見ても、情報は恣意的なもの。
私が知りたいのは、本当の、正しいことなのだ。
そして、「考える日々」を読んだ。
半年ほど前、著者の「14歳からの哲学」を読んで以来
彼女の言葉の世界に引き込まれた。
右でもない、左でもない、何にも傾倒しない、誰にも傾倒しない
宗教でもない、スピリチュアルの世界でもない
ただ「存在」そのものを考えている、著者の一言一言が
まぎれもなく本当の言葉だと感じたからだ。
10年前に出版されたこの本。
書き出しの社会現象は、もちろん10年前のことだけれど
彼女の言葉は、ちっとも色褪せていない。
時代に、社会に、世間におもねらない、彼女の言葉は
やはり本物だと気づかされる。
あまりもの書きっぷりのよさに、時にはふふっと笑い出してしまう。
彼女と似た感覚をもっている言葉に出会うと、うれしくなる。
私のいら立ちも、幾分和らいできたところに、こんな言葉が出てきた。
「考えると無限に考えられるのは、存在の内容が無限だからで
存在することしか考えられないのは、それが存在の形式だからです。
存在の内容と存在の形式が矛盾するのは存在の真実なので、、、、」
考えて、厭世的になっても、明日の予定を考える自分がいる。
考えて、納得しても、存在を否定されたようで、腹が立つ自分がいる。
存在は矛盾を内包してる。
その矛盾を前に、私はココで立ち止まっている。
じゃあ、どうすればいいんだろう。
そうしたら、彼女の言葉が聴こえてきた。
「そんなの、自分で考えろ!!」
金持ち父さん貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学
2007/08/14 13:15
世の中を見る目が変わります!!
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この本が発行されベストセラーとなった2000年。
早速購入し、読み始めたが、よく理解できないまま半ばで本を閉じ
それから7年が過ぎた。。
その当時、私は就職し、結婚し、子供を持ち、世間並みの幸せをか
みしめていた。
それから数年後に待ち受ける日本社会の現実も知らずに。。。
この日本を待っていたものは、格差問題、年金問題、税金問題、雇
用問題、財政破綻問題・・
次々と噴出する問題を前にして、ようやく気づいたのだ。
国や地方や会社に私たちの人生を預ける時代は終わったのだ・・と。
この国はどこへ行くのか、私たちはどう生きていくべきか。。
そう強く憂えたとき、この「金持ち父さん貧乏父さん」が7年のと
きを超えて本棚の中での深い眠りからさめたのであった。
今回は一気に読み終え、古い頭を新しい頭に交換したかのような気
持ちよさであった。
その当時のアメリカの現状を織り交ぜながらの筆者の意見が、ずばり
それから7年後の今の日本の現状と怖いほどぴたりと重なるのである。
本を読み終えた後、筆者の価値観は、私の新しい思考の一部となり、
新たな世界観を得ることができた。
大げさに聞こえるかも知れないが、まさにそうなのだ。
社会構造が大きく変わるうねりの中、ほんの少し立ち止まって、生きる
こと働くことの意義を考えよう。今の濁流にのみこまれず、賢く生きて
みよう。自分のために・・
今の日本だからこそ、生き方を憂えるすべての人に読んでほしい。
希望の光が見えてきます。
サル化する世界
2021/07/09 10:37
サルが抱え込むリスク
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『サルたちは、未来の自分が抱え込むことになる損失やリスクは「他人ごと」だと思っている。その点ではわが「当期利益至上主義」者に酷似している。』
長く続いた資本主義は、目先のことだけしか考えない人間を生み出した。
筆者は、この現象を人間のサル化だと言う。
さらには、このサル化した人間が、巨富を得るという皮肉な社会構造を
資本主義社会は生み出した。
富を得た「サル」は、自分の地位確保のため、さらなるサル化を進めている。
人間の内面においてとんでもない時代逆行が進んでいることを
現代社会が抱える問題を通して、筆者は訴える。
この世界は、この国は、もう、かなりとんでもないところまで来ていることに
誰もがうすうす気づきながら、見て見ぬふりをしているのではないだろうか。
この本は、そんな私たちの目をかっと見開かせてくれる。
現実を直視し、問題点を掲げ、そしてこれからの社会の在り方、自分のあり方を
自分自身に問いかけることができるだろう。
ありのままの私
2021/06/23 14:57
ありのままの私を生きるということ
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著者の本は、これまで数冊読んだことがあるが
どれも、読み進めるのにかなりの時間を要した。
おまけに、一度読んだだけでは、なかなか理解できなかった。
そんな著者の本の中でこの「ありのままの私」は圧倒的に読みやすかった。
本の装丁、平易な言葉による説明は
まるでどこかのタレント本のようでもあった。
興味深い内容で、すらすらと読め、楽しめたが
中身はと言えば、やはり著者のエッセンスがふんだんに詰まった
命を張った学問本であることに変わりはなかった。
この本には、玉田兵吾という詩人の詩がいくつかのせられている。
その中に「わたしの好きなこと」という詩がある。
この詩には、雷に打たれたようなショックを受けた。
けれど、そのショックを受け止めることから
ありのままの私を生きることが始まるのかもしれない。
パチンコ 下
2021/06/21 15:02
圧巻の物語
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物語の面白さに引き込まれ、あっという間に読み終えた。戦前、朝鮮半島が日本の統治下にあった時代から始まるこの物語は、戦後の動乱期を経て、高度経済成長期からバブル期までの朝鮮人家庭の4世代を描いている。
それぞれの世代が、それぞれの時代を必死に生き抜く姿。
ままならない暮らしの中でも、地道にそして誇りを失わずに生きる彼らの姿は、読み始めてほどなく、頭の中にくっきりと映像が立ち上がった。
この本は、日本の中の在日朝鮮人の苦労や苦悩、また朝鮮人の目から見た日本や日本人を描いた作品として読むことはもちろんだが、世代ごとの苦労、苦悩が、時代とともに変化していく描写は、国籍を超え、人間に共通するものであり、この物語の大きな魅力になっていると感じた。
また、主人公家族が直面するさまざまな問題から、日本人と朝鮮人の関係、さらには、日本と朝鮮の歴史問題、在日コリアンへの差別的人権問題、朝鮮半島の南北問題、そして、豊かになった日本における日本人の不幸を、さらっと浮かび上がらせる構造は、圧巻であった。
この本は、著者が構想から30年をかけて完成した本なのだそうだ。
戦前戦中の記憶をなくそうとしている今の日本人が、俯瞰的視点を得ることのできる良書である。
それから 改版
2020/01/26 17:59
漱石は40才を過ぎてから
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漱石の面白さに気付いたのは、40才を過ぎてから。急に坊ちゃんを読みたくなって、読んでみたら、声を出して笑ってる自分がいた。
漱石作品は、10才前後でふれたと思うが、そのくらいの年で、漱石の面白さなんか分かるわけなかったのだ。
坊ちゃんを読んで以来、漱石作品をまた読むようになった。そして、今回読んだのは「それから」だった。描写のひとつに登場人物の言葉ひとつに、再度読む喜びがある。
「なぜそれからいらっしゃらなかったの」三千代の言葉に漱石がこめた面白さを見つけた。漱石作品が今なお読まれる理由だろう。
蝶のゆくえ
2019/09/07 15:31
橋本治のすごさ
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橋本治の小説のすごさは、登場人物のセリフにある。登場人物が思わずもらすセリフは、あまりにリアルで、一瞬、小説ということを忘れさせるほどである。彼は、なぜ、登場人物の気持ちがこんなに分かるのか。そんなの、小説を生み出した作家だから当然だろうという人もいるかもしれない。でも、そうだろうか。橋本作品を読めば、わかる。そこに、橋本の存在を感じないのである。作者の影を感じないのである。私は、橋本治以外にそんな作家を知らない。この本にも、その天才性が随所に表れている。
資本主義と民主主義の終焉 平成の政治と経済を読み解く
2019/09/07 15:08
平成とは何だったのか
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元号が「令和」になったばかりだというのに、もう、「平成」を総括できるの?半信半疑で読み始めたが、最初の数ページで引き込まれ、一気に読み終えた。「平成」といえば、バブル崩壊後の失われた20年、30年という印象が強いが、それ以上に、戦後日本の分岐点であることの意味をよく理解できた。混沌とした時代を解説しているだけに、為政者の判断に憤りを感じたり、ため息をつきたくなる場面もしばしばだが、事実を淡々と丁寧に取り上げ、なおかつそれが、ですます調で語られることにより、読者は「平成」という時代を冷静に振り返ることができる。そんな本である。
コンビニ人間
2017/01/20 10:26
社会的存在であるために
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個性、多様化という言葉が闊歩し、個人のあらゆる生き方が認められる社会へと変化したかのように見える今。しかし、依然として私たちの目の前には、大きな何かが横たわる。それは「人並み」という価値基準だ。
集団(社会)を維持しようとするために、人は同質な仲間を求め、異質なものを排除しようとする。社会的存在であろうとする人間は、排除を恐れ、自分の存在が社会システムの中に組み込まれることを本能的に望んでいるのかもしれない。
学校に行く。就職をする。家庭を持つ。経済活動をする。それが人として生きるために、人並みという価値基準に適合する努力であるとするならば、古倉恵子が、コンビニの中で社会との接点を見いだそうとする姿を誰も笑うことなどできない。
博士の愛した数式
2004/07/04 17:54
なぜか涙があふれてきた…
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登場人物が亡くなるストーリーでも、すごく感動するストーリーでもないのに、読んでいる間中、なぜか涙が止まらなかった。
数学の世界が美しく、清らかで、愛おしいなんて考えたこともなかった。
数字なんて、当然に存在し、それに感動したり、愛したりなんて考えられなかった。
学生時代、数学の授業で習った数式は丸暗記しただけの、即物的なものであった。でも物語の中に登場する数式は、それがまるで生きているような、そして本当に神の手帳が存在し、そこに導いてくれるかのように、美しく、優しく、静かな、メロディになって心に響いてくる。それは、博士が愛しているからこその数式であり、その博士を愛する、「私」や「ルート」の数式だから…数式にいのちが宿ったように数字が本当に愛おしく思えてならなかった。
この世は、神が作ったすばらしいものなのに、今の私たちは、さも人間が作り出し、発展させてきたように、傲慢になってしまっているのではないか。そして、ほんの小さな事象に無関心になっていて、感動を忘れているのではないか。そして、愛情を注ぐということを現代人は忘れてしまったのではないかと思わずにいられなかった。
人は、見返りを求めない愛情を注ぐとき、人として、美しく、清らかで、静かなのであろうと思う。博士の、数式や「ルート」に対する愛情が、まさにそれで、その清らかな美しさに心がしびれ、涙がとまらなかったのだと思う。
エハイク
2004/07/04 17:15
「俳句」と「絵」と「評」の絶妙な笑い
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まず、この本の形がいい!! 手になじみ、まるで経本でも持った感触。
しかし、中身のおもしろさは、想像以上である。
本物の俳句は、句からその情景を目に浮かばせ味わうものであろうが、この「エハイク」は句だけでは情景がなかなか想像できない。吉田戦車の絵が句を鮮明にし、そして「評」が句を想像させ、絵を想像させる。
何ともいえない、おもしろさである。俳句だけでは、存在しない。絵だけでも存在しない。評がなくちゃ、つまらない。「エハイク」とは、うまい造語だ。
読者によって、一句ごとに好みがはっきり分かれるにちがいない。その人のセンスで、好みの句を探してみるのもきっと楽しいはず…。思わずぷーっと吹きだしてしまう句がたくさん。
私は、「父」ネタと「主将」ネタが好きだが…みなさんはどのネタ…じゃなくて、どの「エハイク」が気に入るでしょうか??
