高野茂さんのレビュー一覧
投稿者:高野茂
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2004/02/29 09:21
青春の光と影
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短編小説は作者の真実の一面がキラッと光る。手軽に作者とマジで向き合えておもしろい。18巻も出たのでしばらく楽しめるだろう。そういう中で三島由紀夫の「雨の中の噴水」について書く。
「別れよう」という言葉を発音して世界が変わる瞬間を味わいたかった三島。この言葉を発するために愛し、或いは愛したふりをし、そのためにだけ懸命に口説き、そのためにだけ一緒に寝る。「別れよう!」 細心の注意を払ってこの言葉を発したとき、水袋のような少女は泣きながら雨の中を彼について行く。噴水のある公園に着いた。こんな時に噴水に関する文学的描写は三島にしか描けなかっただろう。別の作品で滝についての描写は一読に値する。三島の手にかかれば意志のある水も存在する。話はそれたが、読者としては五輪真弓の「あの別れ話は冗談だよ」と言って欲しかったのだが、ここではそうではなく短編小説らしいどんでん返しで終わっている。ここは話さない方がいいだろう。
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