ルチアさんのレビュー一覧
投稿者:ルチア
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古今和歌集入門ことばと謎 和歌の織りなす物語(春歌から夏歌まで)
2006/08/14 22:19
古今和歌集って、面白かったのですね
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
普通の解説書では古今和歌集の歌を一首ずつ作者に即して解説するのですが、この本は面白い読み方をしています。
脱構築というのでしょうか。作者と作品の関係、そして歌と歌の関係を固定しないで読むのです。
その例として、美男の誉れ高き在原業平と美女の贈答歌が恋の対話になっているところを取り上げています。この贈答歌の前後に隣り合わせに並んだ歌の言葉や内容に何らかの共通性や関連性があることが示されます。
そこから別の作者の歌であっても歌と歌とを結び付けて読むことができ、前景や背景として業平と美女の恋の舞台を作り上げ、ちょうど歌と歌を衣服と衣服をコーディネイトするように重ねあわせ、恋の物語となるように編集されているのだと言います。
オペラのように別々の歌手が別々の歌を同時に歌いながら全体で一つの歌物語を作ってゆくのに似ています。著者は西洋音楽の構成になぞらえ、マンネリズムのように見える同じ言葉の繰り返しに規則性を認め、声楽における聞かせどころの繰り返しに当たると面白い指摘をしています。
古今和歌集の歌の排列は時の流れにそうように並べられていることは知っていましたが、それを物語的な展開としても読めることが示され、歌の排列がドラマチックなものであることに納得させられました。
著者は、正岡子規が「貫之は下手なうたよみにて、古今集は下らぬ歌集にてこれありそうろう」という評価には、万葉集は益荒男ぶりで、古今集は手弱女振りという、男尊女卑の性差別的な決め付けが前提になっているのではないかと疑問を提示しているようです。
そして、明治以降、男性的な感性が主流となり、女性的なものは傍流とされ、今も、私たちは女性であっても男性的な感性を基準にものを見たり感じたりしていると批判しているようです。
この本を読んで、古今和歌集の知的な美しさには男女の感性が生かされていると感じました。日本の文化の1100年の伝統として、万葉集とは別の感性と価値観によって、再評価しなければならないものだと感じました。
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