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ディックさんのレビュー一覧

投稿者:ディック

5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本空中ブランコ

2004/08/29 13:28

笑い話でも、これだけうまく聞かせられれば拍手喝采!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 対人的なストレスなどが原因でベテランの職業人が仕事に行き詰まる、という場面から始まる同パターンの連続短編が五話。
 第一話の主人公は中小のサーカス団ではたたき上げの空中ブランコ乗り。ブランコからの落下が続くのは新入りの受け手がしっかり受け止めてくれないため、と思い込んでいたが、同僚や家族からは休養を勧められる。「原因は自分ではなく新米のやつだ」と彼は言い張るのだが…。
 尖ったものを見ると怖くなって震えがくるようになってしまったやくざの若頭が主人公の第二話は、ちょっとこしらえ過ぎという感じ。
 第三話は、大学病院の医学部長の娘と結婚して出世街道を走る若い医師が主人公。しかし、「義父のかつらを人前で剥ぎ落としてしまいたい」という強迫衝動を必死に抑えている。家族揃って澄まし屋の妻の実家との付き合いがストレスになっているのだ。職場と家庭の双方を舞台にしたどこにでもありそうな話で、会社人にもうけそうなプロットだ。
 第四話以下は読んでからのお楽しみ。

 さて、いずれの主人公も悩み抜いた末にある病院の神経科に駆け込む。
 ここで登場するのが巨体の伊良部医師だ。無神経なのか天真爛漫なのか、患者からみると見当のつかない性格で、治療どころか患者と一緒に遊び始めてしまう。
 第一話では押しかけ往診のついでに空中ブランコを始めるし、第四話ではプロ野球の三塁手相手にキャッチボールを強要する。そうこうしているうち、なんだかごまかされたように患者の精神状態は改善していく、というワンパターンの物語が続く。
 いや、水戸黄門と同じでワンパターンだからおもしろいのだ。
 尖端恐怖症のやくざの話など落語のようなバカ話だが、程度の差こそあれどれもみな笑い話なのである。それをおもしろく聞かせるのが噺家の腕、著者の手腕というもの。

 軽い読み物に仕上がっているが、読んでいく中で読者はふと、自分のふだんの生活を振り返ることになる。そういう部分もしっかりはさみ込んでいるのがうまい。

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『ダ・ヴィンチ・コード』の副読本に最適

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ダン・ブラウンのベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』は、敵味方入り乱れてイエスの「聖杯」を追い求めるという歴史ミステリだが、聖杯を見つけ出すにはまずその聖杯の隠し場所を示すキー・ストーンを捜さなければならなかった。
 でも、キー・ストーンとはいったい何なのだろう?
 小説内では西欧建築のアーチの頂点にある「要石」(かなめいし)としか説明されていない。ただなんとなく読み過ごされた読者も多いのではないだろうか。

 西欧の大きな建築物は、そのほとんどが石材を積み上げて造られている。
 その中でも『ダ・ヴィンチ・コード』に出てくる英国の有名なウエストミンスター寺院のような、いわゆるゴシック様式の大聖堂は、ステンドグラスの美しさをひきたて、荘厳な宗教的雰囲気を醸し出すため、内部空間が広く天井が高い。
 積み上げられた石材の柱が天井ではアーチをかたちづくり、右と左が寄り合って、頂点では石材自身の重みで釣り合っているのである。漆喰やセメントでつなぎとめられているということはない。
 頂点のキー・ストーンの部分で釣り合っているだけだから、柱にせよ、アーチ部分にせよ、どこか一箇所でも不具合があれば、大聖堂全体が崩落する。そういう例は過去にもたくさんあったと本書に書かれている。
 本書ではロマネスク、ゴシック、バロックなど西欧の歴史的な建築様式が解説されているが、石造りのアーチで天井を形成するという基本は変わっていない。そのかなめの位置、建築物の釣り合いの中心にあるキー・ストーンがいかに重要なものであるか、想像に難くない。

 『ダ・ヴィンチ・コード』を読んだとき、本書を読んでいた私はあらかじめゴシック建築についての理解を深めていた。だからいっそう小説を楽しめた。
 この小説は西欧文化についての教養と蘊蓄があればあるほど楽しめるようにできている。あまり知識がないようだと、読者の喜びはプロットの変化を追いかけるだけのおもしろさに限定されてしまうだろう。
 絵画や彫刻など西欧の美術作品の解説書は多いが、建築・造園やタピストリーなどの工芸品までをわかりやすく、おもしろく解説した本で、しかも価格の安い本はなかなか見つからない。
 著者の紅山雪夫氏の視点はきわめて幅広く豊かであり、かたい解説書ではなく、読んでおもしろい読み物となっている。
 新潮文庫では『ヨーロッパものしり紀行』というシリーズ本となっている。『神話・キリスト教編』を本書と併せて読むならば、『ダ・ヴィンチ・コード』への理解はさらに深まるだろうし、『城と中世都市編』を読んでいれば、攻城戦を描いた映画『トロイ』などがいっそう楽しく鑑賞できる。
 この機会に、こうした良書がもっと注目されるよう、この書評が少しでも役に立てば幸いである。

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デジカメ選びにとても役に立つ参考書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いま流行りの一眼レフ・デジカメか、800万画素のコンパクト・デジカメをほしいと思ったが、雑誌の評価記事などを読んでみるとメーカーによってカメラのつくりが千差万別であり、どれを買ったらよいかと迷いに迷ってしまった。
 それならまず徹底的にデジカメを勉強してみようと、まずは書店で目につく新書四冊を買い集めて読んでみた。以下の通り。

 1.カメラ常識のウソ・マコト(千葉憲昭・著)講談社ブルーバックス
 2.一眼デジカメ虎の巻(吉田繁、蟹江節子・著)講談社+α新書
 3.デジカメ写真は撮ったまま使うな!(鐸木能光・著)岩波アクティブ新書
 4.デジカメ自然観察のすすめ(海野和男・著)岩波ジュニア新書

 四冊の本はそれぞれ焦点の絞り方が違うので、一概にどれがよいとは言えない。
 多少はカメラのこともわかってはいるけれど、デジカメの特性について熟知しているかというとそうでもない、という程度の私のようなユーザーが、あらためてカメラ選びを検討するにはこれがベストの副読本、と推奨したいのが本書である。

 デジカメの特質はこうだからこうしたらよい、というようなことは、この4冊に限らずとも書いてある記事は多い。しかし。カメラのフィルムに相当するCCDの構造とその記録方式はこうなっているからと、デジカメの本質的な構造や情報処理の仕組みにまで踏み込み、メカの仕組みから説き起こして「なぜ、そうなっているのか」がしっかり書かれていた本は、私が読んだ中では本書だけだった。
 根本的な理屈の部分を中途省略して、こういうものだからこう選びなさい、こう撮りなさい、と言われるのはどうも居心地が悪いものである。しかし、いったん理屈がのみこめると、カメラ雑誌の評価記事などについても、読み方ががらりと変わってくるものだ。本書により理解が深まり、自分の目的とするカメラの楽しみ方はこうだから、だからこの機種かあの機種にしようと、候補を絞り込むのに大いに役立った。

 ちなみに、2はハウ・ツー本としてよく整理されていて、撮影テクニックなどに詳しい。理屈なんかわからずともよいから、書かれていることを信じてさっさとカメラ選びや撮影ノウハウを仕入れたい、という読者なら役に立つだろう。
 3は撮影後の画像のレタッチ、整理の方法などについてフリーソフトの紹介などに詳しい。実際にいくつかを使っているがたいへん便利だ。
 4は、私を含め「虫が好き」という読者にはそちらのアプローチからも楽しめる。

 さて、以上の読書を終え、さらに雑誌記事などを十分調べ検討してから、私はあるメーカーの800万画素コンパクト・デジカメを購入した。使用して三週間になるが、その性能、使い勝手にはたいへん満足している。

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紙の本ダ・ヴィンチ・コード 上

2004/07/10 18:44

歴史仕様のマイクル・クライトン

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ハーバード大学の宗教象徴学教授ラングトンは、パリのホテルで就寝中にフロントからの電話でたたき起こされた。訪問者は司法警察の警部補で、殺人現場へと任意同行を求められる。その現場とはなんとルーブル美術館で、殺されたのは美術館長なのだが、館長は死の間際に自らの身体を使い奇怪な暗号を残していた。
 その暗号を解くのを手伝えと言われるのかと思っていたら、現場に現れた暗号解読担当の女性捜査官が、ひそかにラングトンの注意をひこうとする。館長のスケジュールには死亡時間にラングトンと会う約束が記録されており、自らが容疑者なのだと彼女から知らされた。
 温厚な学者であるラングトンだったが、この女性捜査官にそそのかされて気が変わり、美術館からの脱走を決意してしまう。
 このときから、逃亡と追跡劇がスタート。奇怪な暗号の謎解きをしつつ、秘密結社が隠したと伝えられる聖杯探索の冒険も絡んで、上下2巻という長さながら、まったく退屈させないめまぐるしい物語が始まる。

 『ダ・ヴィンチ・コード』という小説のおもしろさは、マイクル・クライトンの小説と似ている。
 マイクル・クライトンの場合、最先端科学のアイデアと知識がちりばめられてあって、それが小説のアイデアの骨格をなしているが、本書ではマイクル・クライトンの「科学」が「宗教・美術工芸・歴史」に切り替わっている、と考えればよい。
 そう理解すればあとのつくりはさほど変わらない。
 多彩な登場人物が上手に描き分けられているものの、人物像の掘り下げは深くない。物語の展開がはやく、十数ページごとに新たな展開が起きるよう、著者自らがルールを課して書いたのではないかと思われるほどである。予想もつかない方向へストーリーが展開するので、読書を中断するのはかなり決心がいる。
 小説というよりは映画に最適の作りだが、次々と現れる暗号の謎解きをしながら宗教建築や美術作品に隠された歴史の暗部を探るということが、本書のおもしろさの重要なファクターになっており、この部分は映画に作りかえたら楽しみが薄れてしまうかも知れない。
 ダ・ヴィンチの絵画でも有名な、イエスの最期の晩餐に使われた聖杯は実在するのか。それとも何かの象徴であるのかなど、歴史の謎を探求するおもしろさは、確かに本書の最大のポイントである。

 読後感は「ああ、おもしろかった」というもので、登場人物への感情移入から生まれてくる小説特有の深い味わい、というようなものを期待してはいけない。善かれ悪しかれマイクル・クライトン風なのだ。

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きみはカバー絵のイメージを楽しめるか?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「高校生の美少女が魔界の怪人・怪物たちを次々と剣でばっさり」という物語。上下巻2冊のカバー絵がこの小説のイメージをとてもよく表現している。着物姿に赤い革ジャンを羽織って、ナイフを片手に戦う美少女。それが主人公の「両儀式」だ。

 この小説を生き生きとさせているのは、まさにカバー絵のような視覚的なイメージである。しかし、そのイメージを楽しむのは必ずしも簡単ではない。
 なぜ主人公の美少女「式」が戦い続けなければならないのか、なぜ高校生の彼女がそれほどまでに強いのか。
 著者はそれをあれやこれや言葉を尽くして説明するのだが、これが長くて退屈なのだ。長いだけでなく、なにやら混乱してすっきりしない部分が多いため、物語展開の大きなブレーキにもなっている。

 そもそものはじめに「着物姿の美少女が剣を振るって魔人たちと戦う」というイメージが先行し、あとから背景としての世界観を構築したご都合主義があったのではないか、と疑ってしまう。
 「なぜ式は戦わなければならないか」がまだすっきりと説明されない上巻は大半が退屈である。上巻残り5分の1あたりになって、著者の奔放な空想の世界が拡がり始め、物語はようやく盛り上がっておもしろくなる。この頃になると、式が戦わなければならない理由がかたちになりはじめ、著者の世界観はようやく姿を整え始める。なにやら矛盾があるようにも思われるけれど、少しずつまとまりを見せていく。
 
 とはいえ、それでもきわめて理解しにくい。私なりに割り切って解釈すると、どうも以下のようなことらしい。

 真空には何もないようにみえて、真空のエネルギーが存在し、そこでは粒子と反粒子が生成し対消滅しているように、世界の根元はすなわち「空」である。
 世界はこのように陰と陽、男と女、この世とあの世、現実世界と魔界に分かれる二元性を持っている。
 『陰陽師』の安倍晴明がこの世とあの世の境目である「一条の戻り橋」の下に使い魔としての式神を飼っていたように、ふたつの世界をつなぐ「境界(ブリッジ)」が存在する。
 主人公の少女の名は「式神」の「式」だ。内に男性的性格の別人格を内包し、女でありながら男でもあるという特殊な人間だ。彼女は生きている「境界」人間なのだ。
 彼女は自らの存在理由を探し求めて戦うが、世界の根元は「空」であるから彼女の本質は「空」でしかない。彼女をこちらの世界につなぎ止めている副主人公の男の子の存在があるために、彼女は心の支えをボーイフレンドに求めてかろうじて人間性を保っているのだ。

 以上が私なりの解釈なのだが、量子論でいう真空のエネルギーや安倍晴明の話題は、私が私なりにわかりやすくするため勝手に持ち出して付け加えたものである。そうしてもまずまずこの小説の世界観と一致して聞こえることと思う。

 つまり、物語の背景を説明する「理由付けとしての世界観」などというものは、古い中国思想などを持ち出してもったいぶって説明しようがどうしようが、もともとがいい加減なものなのだ。
 それならば、あまりくどくどと説明しなければよい。上巻終わりで舞台となる結界を敷かれた円柱形マンションでの決闘や、下巻前半の、記憶を奪う妖精が登場する女子高校を舞台にしたメルヘン風の物語は、著者が得意とする奔放なイメージ展開が楽しめる。
 それらを中心に短くまとめるならば、もっと読みやすく楽しめる小説となったのではないか?

 上巻途中で投げ出さずに最後まで読むならば、表紙絵のイメージの主人公が、空想力を駆使して練り上げられた特異な環境を舞台にして、大活躍するのを楽しめるだろう。

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