ますたぁさんのレビュー一覧
投稿者:ますたぁ
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紙の本決戦・郵政民営化
2005/09/01 23:20
「郵政民営化っていったい何?」という方にオススメの本
11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
郵政民営化をテーマにした対談集です。ノンフィクション作家として知られる猪瀬直樹氏が、郵政民営化担当大臣である竹中平蔵氏をはじめとする各界の代表者たちにインタビュー。賛成派・反対派・留保をつける人など、さまざまな意見を紹介することで、郵政民営化の本質をわかりやすく伝えようとしています。「郵政民営化っていったい何?」という方にオススメの本です。ちなみに対談は、2005年1月中に行なわれたものが中心となっています。
全体として郵政民営化を支持する内容です。まず、著者自身が賛成派。また対談の相手7人のうち、5人が賛成派です。反対派は、参議院議員の荒井広幸氏。残る1人の生田正治氏は日本郵政公社総裁なので、留保・中立といえるでしょう。だから、本書の内容には偏りがあることはたしかです。
しかし、あらかじめその偏りを理解した上で読めば、「今の郵政のどこが問題なのか?」「なぜ民営化をやる必要があるのか?」「郵政民営化とは何なのか?」など、郵政民営化の問題点を理解するための、わかりやすい参考書といえるでしょう。
例えば、イコールフッティング(同一条件での競争)の問題。民間企業とちがって、郵政公社は各種税金を払う必要がなく、また異なる法律により優位の立場にあるのだとか。こうした格差が、民営化により撤廃できるのだそうです。
しかし、一番の問題は「郵貯・簡保の資金」にあるとのこと。郵貯には四大メガバンク相当の約230兆円。そして簡保には四大生命保険会社に匹敵する約120兆円。合わせて約350兆円という膨大な資金が「民」に流れるのではなく、国債購入あるいは財政投融資を通じて特殊法人に渡るなど、「官」に流れていることが問題なのだとか。こうした郵貯・簡保の資金を民営化により、「官」ではなく「民」に流れるようにすることで経済を活性化させることこそ、郵政民営化の目的なのだそうです。
郵政民営化の本質を知りたいと思っている人に、オススメしたい本。たしかに内容的には賛成に偏った本ですが、何が問題となっているのか? を具体的に理解するためには、わかりやすくて良い本なのです。
紙の本母に習えばウマウマごはん
2005/07/05 23:53
好きな人と一緒に料理を楽しみたくなる本
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ベストセラー『ダーリンは外国人』の著者・小栗左多里さんとその母・一江さんによる料理の本です。身近な材料で簡単にできる料理が満載。料理の写真はキレイでワクワク。作り方のコツを描いたマンガはタメになっておもしろい。本当に料理が楽しく感じられて、「好きな人と一緒に料理を楽しみたい」という気持ちにさせられます。
一江さんはその昔、料理教室の先生をしていたということで、さすがにどの料理も簡単かつおいしそうなものばかり。その一江さんの創作料理から始まって、エスニック料理やダーリン(著者の夫・トニーさん)の大好きなトマトを使った料理、そしてパーティー用の料理やすぐに作れるおやつなどを、レシピとマンガで紹介しています。
レシピのページには、料理の写真が付いています。この写真がどれもすばらしくキレイなものばかり。本当においしそうなのです。見ているだけでワクワクしてきます。そして材料や作り方を確認すると、意外と簡単にできそうな感じ。今度さっそく作ってみようかな? という気にさせられます。
マンガのほうは、著者と母・一江さんのふたりで実際に料理を作っている様子を描いたもの。作るときの注意点やうまく作るコツ、あるいは料理のウンチクなどを紹介しています。絵で描かれている分、見た目にとてもわかりやすくてよいのです。
もちろん著者のマンガだけあって、おもしろく描かれているところも。コーラチキンを作っている場面で「コゲやすいから油断しちゃダメよ!」といきなり一江さんの目がギョロッ! と大きく見開かれるシーンなど、思わずクスっと笑ってしまいます。
料理をしているときのふたりのやりとりは本当に楽しそうで、ついつい読み進めてしまいます。すると、まるで読んでいる自分も一緒に作っているかのような感じがしてきます。そして、自分も誰かと一緒に料理を作ってみたいという気持ちが沸いてきます。
そう、この本は「好きな人と一緒に料理を楽しみたい」という気持ちを与えてくれるのです。
料理の好きな人にはもちろん、苦手という人にも、いやむしろ苦手な人にこそ、オススメしたい本です。全ページオールカラーで、パラパラめくって眺めるだけでも楽しめます。でも見たらきっと「あ、この料理、作ってみたい」という気持ちになるはず?
2006/12/20 00:00
デジカメ写真の楽しみを知る。日常を見るまなざしが変わる。
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
デジカメで写真を撮る楽しさが伝わってくる本。ページを読み進めるうちに、自分でも写真を撮りたくなってくる。デジカメを持っている人に、ぜひオススメしたい一冊だ。
はじめにデジカメで写真を撮るメリットを紹介した後、スナップ写真の魅力および撮影のコツを6つの章に渡って解説している。内容はカメラアングル、被写体の見つけ方、撮影タイミング、色彩を強調した撮影方法、プロの撮影テクニックそして散歩写真のススメなど。著者が撮影したスナップ写真および300字前後の簡単な解説文が、ほぼ1ページごとに掲載されている。写真の題材には、ニューヨークの街並みや人物、オブジェなどを中心に、日常生活で目にするようなものが使われている。
また各章末尾には、「すぐに役立つデジカメの知識とコツ」と題したコラムを掲載。一眼レフとコンパクトタイプの違い、画素数の解説といったデジカメの基礎知識から、ぶれない写真を撮る工夫、夜景撮影のコツ、ストロボ活用法などの撮影テクニックまで、デジカメ初心者に役立つ情報を収録している。
実質的に本書は、スナップ写真を撮るためのヒント集といえる。プロならではの具体的な撮影テクニックが載っているわけではない。スナップ写真の解説文で示されるのは、撮影時の状況説明と「こんな風に撮っても構わない」という著者のアドバイスである。
そんなページを読み進めるうちに、不思議と写真を撮りたい気持ちになってくる。これはきっと、日常のありふれたものを題材にしているからだろう。写真に撮られると、まるで違った印象を受けるのが面白い。だから自分でもマネをして撮りたくなってくるのである。
そうして写真を意識すると、日常生活を見る目が変わってくる。ありふれたものに、新鮮な発見を見いだせるようになる。例えば、昼食用に買ったごく普通のホットドッグの中に、マスタードの黄色とケチャップの赤が織りなす鮮やかな色彩美を見つけ出せるかもしれない。
「写真術」というタイトルは、本書の実際の内容を反映しているとはいえない。けれども、良い意味で期待を裏切られる本だ。デジカメ写真の楽しみを知ることができる。そして、日常を見るまなざしが変わる。
デジカメを持っている人に、ぜひオススメしたい一冊だ。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2006/07/26 23:21
男女のすれ違いを減らし、互いの関係をより良くするための本
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
女性の体と心について、男性向けに書かれた本です。女性に関する男性の疑問に答えるという形式で解説。男女がすれ違うパターンとその原因を知ることで、互いの関係をより良いものにして欲しいというのが本書のねらい。男性にはもちろん女性にもオススメしたい一冊です。
著者は女性心療内科医。自身のクリニックで多くのビジネスマン&ウーマンの診察とカウンセリングを行う一方、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。そんな著者が「女はなぜ、突然怒り出したり、泣き出したりするのか?」「女はなぜ、喫茶店で2時間もしゃべり続けられるのか?」など、男性が女性に対して抱く30の疑問を例として、女性の思考や行動パターンからその原因となる脳と体の仕組みまでを具体的にわかりやすく説明しています。
例えば、女性の悩みごとに対して解決策をアドバイスしたら、かえって機嫌を損ねてしまったという経験を持つ男性は多いのでは? これは「女性と男性の会話スタイルが異なるため」とのこと。脳の構造やホルモン量の違いから、女性の脳は会話に「共感」を求める傾向があるのに対し、男性の脳は会話に「解決」を求める傾向があり、それで会話がすれ違うこともあるのだとか。いずれにしろ、この会話スタイルの違いを知れば、男性は女性の話に対しては相づちを打ちながら「聞き役に徹する」のが、女性とのうまい付き合い方といえそう?
また、女性特有の体の特徴や体調の変化についても紹介されています。女性は冷え性だったり、トイレが近かったり、あるいは便秘や頭痛になりやすいこと。また、生理という男性が体験することはない(そしてあまり愉快ではない)現象にも周期的に見舞われる等々……本書を通じてこうした女性特有の問題を知れば、女性への接し方や対応も違ってくるのではないでしょうか?
このように男女の思考や行動パターンの違いを知り、その科学的な理由(男女差が脳と体の仕組みに由来していること)を理解することで男女間のすれ違いを無くし、互いの関係をより良いものにして欲しい、というのが本書のねらいです。日頃から家庭や職場などで、女性の反応や態度に戸惑いや疑問を感じることの多い男性にぜひともオススメしたい一冊。また、男性の考え方および自分の性の特徴が確認できるという意味では、女性にもオススメしたい一冊なのです。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2005/06/29 22:24
簡単に読めるけど、意外と考えさせられる本
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
まるで童話みたいな本です。あっという間に読めてしまいます。挿絵もかわいらしくて楽しいです。けれども読み終わったあと、しみじみと考えさせられてしまいます。読む人それぞれにとって、いろいろな意味が読みとれそうです。見た目の軽さとは裏腹に、とても奥の深い本。子供から大人まで、多くの人にオススメします。
一見するとお笑い話です。貴重な資源が豊富にあるおかげで、国民全員が働かなくても生活できたという夢のような国、ナウル共和国。でも資源はいつかなくなるもの。それがわかっていても、ナウルの人たちは対応策を考えようとはしませんでした。そしてついに資源が枯渇してから、「さぁどうしよう?」とあわてふためくのです。だから、自業自得のお笑い話といえばそれまでのこと。
けれども、同じような国は他にもあるような……? ということに気がつくと、単なる笑い話で済ませていいのだろうか? と考えてしまうのです。また資源を例えば「時間」に置き換えてみると、「時間は有効に使え」というような、人間ひとりひとりに対する教訓として解釈することもできそうです。
こんなふうに、読み方によってはいろいろな意味が読み取れそうな、とても奥の深い本なのです。
物語自体は、本当に簡単に読めてしまいます。文章はそれほど多くなく、大人であれば1時間とかからず読めてしまうでしょう。文体もやさしく漢字には読みがなが振ってあるので、子供にも読みやすい本といえます(読書感想文の本として良いかも?)
簡単に読めるけど、意外と考えさせられる本。子供から大人まで、多くの人にオススメします。
※ちなみにこの本の元ネタは「適宜更新」というブログの記事だそうです。
http://tekigi.hiho.jp/blog/
2006/10/25 00:14
自己演出するための実践的文章作成術
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
文章を書く技術を説いた本は多い。しかし、どんな文章を書くのかがあいまいで、結局は参考にならないというものも多いのだ。
その点、本書は前提としている文章が明確で、紹介されているテクニックも実践的である。テーマに合った「型」をマスターすることで、高い評価を得られる論理的な文章を作成できるという。小論文や新聞の読書投稿、あるいは自己PRやエッセイなどを書こうという人にオススメの1冊である。
具体的には「小論文・レポート・投書など、意見文の書き方」「自己推薦書・志望理由書の書き方」「作文、エッセイの書き方」そして「手紙・eメールの書き方」など、文字数にして1、000字程度の文章を対象としている。
共通しているのは、自分の意見を示す、つまりは「自分を売り込む」文章という点。そこで重要となるのが「自己演出」という考え方。つまり、「ありのままの自分」ではなく「あるべき自分」「見せたい自分」を示す文章を書くという割り切りが必要なのだという。
著者が説くテクニックとは、テーマに合った「型」をマスターすること。基本は「四部構成」。例えば、小論文ならば「1)問題提起、2)意見表示、3)展開、4)結論」という構成である。このように型さえマスターしていれば、内容はともかく、論理的な文章が書けるようになるとしている。各章(テーマ)ごとに練習問題とその模範解答も付いているので、具体的かつわかりやすく学べるようになっている。
著者は長年、大学受験生の小論文指導を行なってきた「小論文の神様」と呼ばれる人物。そのため、受験対策用のような本という印象も確かにある。その意味では、本書で説かれているのは「邪道」のテクニックともいえなくもない。
しかし、その点は本書も認めているところ。それでも、そうしたテクニックを身につけ、自己演出する文章を書き続けるうちに、いつしか「ホンモノの文章力」を身につけている、というのが本書の狙いなのである。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2005/07/02 23:31
ナンシー関の辛口コラムを、もう一度
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ナンシー関の辛口コラムはやはりおもしろい。彼女が指摘する疑問点・問題点はどれも的を射ていて、「なるほど、そういう見方があったのか」とうなづかされてしまう。そう、一見するとテレビ番組やタレントに対する痛烈な悪口のようで、実は「みどころ」をアドバイスしてくれているのである。
例えば、長嶋一茂と松岡修造の違いについて。この二人は(失礼ながらあえていえば)「バカ」(っぽい印象)という点で似ているけれど、実は違いがあって、それは『一茂はバカをリアクションで見せるが、修造はそのバカをファーストアクションで繰り出す』ことであるという。こういわれると、今度この二人が出演しているテレビ番組を見て、確かめてみたくなるのでは?
そう、ナンシー関は「みどころ」をアドバイスしてくれているのだ。辛口コメントはたしかに厳しいが、決して悪口ではない。私たちが気づいていなかったり、あるいは気づいていてもうまく言葉にできないような疑問点・問題点を的確に文章化し、目に見える形で読者に示してくれたのである。
そんなナンシー関の「新作コラム」は、残念ながらもう見ることができない。2002年6月12日、39歳という若さで急逝してしまったからだ。しかし、その後もナンシー関の人気は衰えることなく、まだ書籍化されていないコラムや対談集がまとめられ、各出版社から「新刊」として出版されている。
本書も、「週刊朝日」1993年1月1日〜8日合併号から2002年6月21日号まで連載された人気コラム「ナンシー関の小耳にはさもう」から、これまで単行本・文庫本に収録されたことのない作品だけを選んだもの。したがって内容の古さは否めない。
しかし、取り上げられているタレントの中には、現在も活躍しているタレントがいる。「このタレントも、ナンシー関の辛口コメントのネタにされていたのか」と、昔を知って今を見直してみる、そんな温故知新的な読み方で楽しんで見てはいかがだろう?
2006/11/22 00:24
「世の中は仮説だらけ」と意識すれば、頭は柔らかくなり、ものごとの見方が変わる
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
仮説思考を身につければ、頭が柔らかくなる、つまり、ものごとを思いこみで判断しないようになれるという話。著者は科学作家兼ミステリー作家。というわけで、この本では、おもに科学の事例を取り上げ、思いこみで判断しないためのコツを紹介している。そのコツとは、「世の中は仮説だらけ」と意識することだという。
著者によると、世の中は仮説だらけであるという。例えば、飛行機が飛ぶしくみ。実は、なぜ飛ぶのかよくわかっていないらしい。もちろん、飛ぶことはわかっている。しかし、その原理については、いくつかの説があるものの、1つには決まっていないという。つまり、ある現象がうまくいくということと、その科学的な根拠が完璧にわかっていることとは、全く別の話なのである。そのような、実はよくわかっていない常識や定説が他にも多く紹介されている。
また、正しいと思われていた常識や定説が、あとから覆された事例も取り上げられている。例えば、ガリレイの地動説によって否定された天動説など。このことは、現時点で常識や定説と思われているものでも、将来において逆転することがありえることを意味する。事実、本書でも言及されていた「冥王星の(小惑星)格下げ問題」は現実のものとなり、冥王星は惑星ではなくなってしまった。
もちろん、著者はあらゆるものごとを疑え、といっているわけではない。そういうことではなく、一度は常識や定説あるいは先入観や固定観念などを捨ててみることで、それまでとは違った見方ができるかもしれないというわけだ。
要するに、仮説思考をしてみようということ。「世の中は仮説だらけ」と意識するだけでも、ものごとの見方が変わってくる。そうするうちに、少なくとも見聞きした話や知識をそのまま鵜呑みにしたりせず、一度は自分で考えようという習慣が身についているはず。
最近、頭が固くなったかもしれないと感じ始めている方にオススメの一冊。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2006/10/10 00:17
自分なりの幸せを栽培するヒント集
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
小栗左多里さんのベストセラーコミック『ダーリンは外国人』のダーリンこと、トニー・ラズロさんの初エッセイ集です。内容は、トニーさんが今までに大切にしてきた知恵や考え方を、「幸せへの道しるべ」として紹介するというもの。トニーさんをお手本に、自分だけの「幸せへの道」をこれから開拓したい方、あるいは更新・確認をしたい方にオススメです。
本書は、文章を基本としたエッセイ集です(『ダーリンは外国人』のようなマンガではないので念のため)。「芽の章」「樹の章」「実の章」の三章構成で、それぞれに4〜6編のエッセイがまとめられています。そして、各エッセイの終わりには左多里さんのイラスト付きコメント(左多里のつぶやき)があります。また、問いにイエス・ノーで答えるだけで判定できる「トニー度診断」も収録されています。
各エッセイの冒頭では、トニーさん自身の言葉をはじめ、世界各地のことわざや格言などを引用しているのですが、その範囲がすごいのです。日本語、中国語、韓国語からロシア語、トルコ語、タガログ語、ラテン語、さらにはブルトン語、スクマ語といった初めて聞くような言語まで……トニーさんの「語学オタクぶり」に、ただただ圧倒されるばかり。
そうしたことわざや格言をテーマにして、エッセイを書いています。例えば『道を知っていても人に訊こう』という韓国の諺を取り上げたエッセイでは、「知っていても訊く」ことを実践すれば、自分自身の知識を深めたり確認したりできるし、何より相手との今後のコミュニケーションの道すじが作ることができる、とその効果を説明しています。
トニーさんのエッセイは、まじめな内容がほとんど。よって、『ダーリンは外国人』のようなお笑いの要素は期待しないほうがよいです。一方で、トニーさんの日常生活における行動パターンや考え方が実によくわかるので、『ダーリンは外国人』を読んでトニーさんのファンになったという方には、オススメの本なのです。
本書は幸せになるためのマニュアル本ではなく、あくまでヒント集。トニーさんの行動パターンや考え方をお手本にして、自分なりのオリジナルの知恵や考え方を持つことで、「幸せへの道しるべ」を作ってみてはどうでしょう?
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2006/11/12 23:55
ブログ・メルマガ向きの文章作成術?
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
一風変わった、文章の書き方を提案した本である。
そもそも、本書の文章自体が変わっている。
すべての文章が「箇条書き」。
そう、一文ごとに改行しているのだ。
最初は「これでいいのか?」と驚いた。
けれども、これがとても読みやすいのである。
一気に読み終えることができた。
あらためて、驚いたのだった。
箇条書きだと、全体の文章量は少なくなる。
だから早く読めるのは、当然ともいえる。
しかし、文章量が多いほうが良いとは限らない。
かえって伝えたいことが読み手に伝わりにくいかもしれない。
それどころか、そもそも途中で文章を読んでもらえなくなることもあり得る。
そう考えると、箇条書きで書くというのは、実はとても効果的な書き方といえる。
著者のメッセージは単純明快だ。
「思いつくままに、書きたいところから、箇条書きで書いていけばよい」。
いいかえると「話すように書けばよい」ということになる。
人に話したいことがあるとき、私たちは思いついたことから相手に話す。
「起承転結」といった論理構成を考えずに、思いつくままの勢いで、相手に語りかけているはずだ。
文章を書く場合も同じ。
思いつくままに、箇条書きで書き進めていけばよい。
そうすることで、論理よりも勢いで、伝えたいことが読み手に伝わりやすくなるのである。
読み手も「論理の流れ」より「気持ちの流れ」で読んでしまうというわけだ。
もちろん、違和感があるのは確かである。
しかし、読みやすいことも確かなのである。
実際、ブログやメルマガで読みやすいと感じる文章は、箇条書きで書かれていることが多い気がする。
是非はともかく、「思いつくまま箇条書きで書き進めるやり方もある」という発想には、意表を突かれたのだった。
ただし、気になる点がひとつ。
それは、「企画書」という言葉がたびたび出てくること。
もともとは企画書の書き方がテーマだったらしい。
書名と内容に若干のズレがあった点については、正直、不満を感じた。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2006/10/18 23:16
旅行記やエッセイをうまく書きたいという人に
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
旅行記を数多く執筆している著者が、自身の体験談を交えながら、魅力的な旅行記を書くコツを紹介した本。しかし、エッセイの書き方にも応用できそうです。1994年刊行「旅行記はこう書く」(自由国民社)に加筆・訂正をほどこし、内容を一新させたもの。
まずは旅行前のアドバイスから。大事なのは、旅のテーマを決めておくこと。例えば、どんなものを見たり、あるいは食べたりしたいのか? など。そして旅行中はしっかりと観察し、メモをとる習慣を忘れないこと。要するに、旅行段階での心構えが旅行記の出来に影響するようです。
そして、旅行記を実際に書くにあたってのコツ。材料の絞り込みや全体の構成、書き出しの決め方など、書き始める前の準備から、本文で使いたい小説の技法(自然描写や人物描写、会話法や文飾法など)、そして仕上げ段階での思想・人生観の盛り込み方など。例として著名人の旅行記・紀行文も随処で引用されているので、具体的でわかりやすい内容となっています。
その他、旅行記を書く上で参考となる情報も収録。旅行記の読み方、著者オススメの海外旅行記ベスト10、日本の紀行文学史、そして旅行記の売り方(出版社への売り込み方)など。そして巻末の特別対談「売れる旅行記を書くには」では、アジア旅行記で知られる下川祐治氏の体験談が語られていて、興味深いものとなっています(ちなみに下川氏は「香田証生さんはなぜ殺されたのか」の著者でもあります)。
ところで本書は旅行記だけでなく、エッセイを書いてみたいという人にも参考になりそうです。いずれも、自身の体験をきっかけに心の中であれこれ考えたこと、すなわち「インナートリップ」を書き表そうとするものといえるからです。また、文章表現についてもエッセイと通じるところがあるのでは?
旅行記やエッセイをうまく書きたいという人に、ぜひオススメしたい一冊です。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
紙の本配達あかずきん
2006/09/26 23:53
元書店員が描く「本格書店ミステリー」第一弾!書店や本が好きという方にオススメの一冊。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「本の雑誌」2006年上半期エンターテインメント・ベスト10の第2位を獲得! 元書店員が描く「本格書店ミステリー」第一弾です。書店で働く女性コンビがさまざまな謎を解いていくというストーリー。随処で本や書店にまつわるエピソードが描かれているのが本書の特徴。書店や本が好きという方にオススメの一冊です。
駅ビル内の書店「成風堂」を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、本にまつわるさまざまな謎に取り組んでいくというミステリー短編集です。表題作「配達あかずきん」を含む5つの短編ほか、巻末には、実在する書店員4人による座談会も収録されています。
本書のいちばんの特徴は、書店にまつわるエピソードが随処で描かれていること。例えば、探している本を尋ねてくる客の話。書名などメモしてこない人が意外と多いのだとか。よって、客からわずかな手かがりを聞き出して目当ての本を当てることになるのですが、それ自体がちょっとした謎解きのよう。
他にも、書店の日常的な作業風景が描かれています。本の注文や整理、営業とのやりとり、定期購読の配達など……さすが元書店員だった著者ならではといったところです。
また、本書はちょっとしたブックガイドともいえそうです。というのも、文中では実在する本がたびたび登場するからです。例えば「六冊目のメッセージ」では、入院患者へのお見舞い用にオススメという本が出てきます。実際に読んでみたくなるという方も多いのでは?
ミステリーということで肝心の謎解きのほうですが、こちらは良くいえば素直、悪くいえば物足りない、というのが率直かつ個人的な感想。謎の設定やそれを解いていく展開にやや強引さを感じました。
それでも本書の良いところは、殺人事件がひとつもなかったこと。殺人事件の謎解きが描かれることも多い中で、これは注目できる点と思います(ミステリー小説だから、ということもあるのかもしれませんが)。今後もこのシリーズでは、殺人事件が出てこないストーリーを期待したいところなのです。
個人的なオススメは「六冊目のメッセージ」。ある日、書店に若い女性がやってきます。先日まで入院していた自分のために本を買いに来た母親に5冊の本をすすめてくれたという男性書店員に、お礼をいいにきたというのです。ところが、該当する人物は存在しません。はたして謎の店員の正体は? ……ちょっとした恋愛ドラマ仕立てになっていて、胸がキュンとしそうなストーリー。その他、暗号ミステリーの「パンダは囁く」も。本を探すのが得意という方なら、きっと謎は解けるはず?
著者のデビュー作ということでまだ荒い点も感じられる本書ですが、画期的な書店ミステリーということで、今後の成長を期待したくなる一冊。9月末(2006年)には、シリーズ初の長編となる第二弾『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』も出るということで、シリーズ化も決定のようす。なにはともあれ、書店や本が大好きという方には、ぜひともオススメしたい本なのです。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
2006/12/04 23:56
人気CMプランナーならではのユニークな視点や表現に「笑い」を誘われる超・短編集
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「ポリンキー」のCMや『だんご3兄弟』などを手がけた佐藤雅彦さんの「超短編」集です。数行のキャッチコピーからショートストーリー、さらにはちょっと変わった言葉遊びやイラストなど、アイデアにあふれた楽しい作品が63コも。「クスッとした笑い」が大好きな方にオススメの1冊。
佐藤雅彦さんといえば、数々のヒットCMやテレビ番組のコーナー企画などを手がけたCMプランナーとして有名。「バザールでござーる」「ポリンキー」などのCM、そして大ブームとなった『だんご3兄弟』などが、その代表作。
本書の題名「クリック」とは、そんな佐藤さんの頭の中でカチッという音がしたとき、すなわち何かいいアイデアがひらめいた時の様子をたとえた表現。本書には、佐藤さんの63コの「クリック」が収録されています。そのどれもが、「アイデアとは、こういうことなのか」と感心せずにはいられない作品ばかりです。
例えば、こんな感じ。『カメラはいつも眠っている/目をあけるのはほんの一瞬』。
誰もが知っているような事柄でも、ちょっと見方を変えるだけで全く違った印象・新鮮な印象を与えられるのだと気づかされます。
そしてまた、佐藤さんの作品は「笑い」を誘う楽しいものでもあります。ユーモアにあふれた、ユニークな視点や表現方法に思わず微笑んでしまうのです。
「クスッとした笑い」が大好きな方に、ぜひオススメしたい1冊です。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
紙の本晩夏に捧ぐ
2006/11/06 00:21
期待の「本格書店ミステリー」第二弾は、“横溝正史風”長編ミステリー
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
期待の「本格書店ミステリー」第二弾は、著者初の長編ミステリー。地方の老舗書店で起きた幽霊騒動が、二十数年前に起きた奇妙な殺人事件へつながっていくというストーリーは、“横溝正史”を連想させる。しかし、前作とは異なるイメージには、正直、不満もあり。
駅ビル内の書店「成風堂」を舞台に、しっかり者のお姉さん的存在の24歳書店員・木下杏子と不器用だけど賢くて勘の良い大学生アルバイト・西巻多絵のコンビが、本にまつわるさまざまな謎に取り組んでいくという「本格書店ミステリー」。前作「配達赤ずきん」は、「本の雑誌」2006年上半期エンターテインメント・ベスト10の第2位を獲得するなど、好評を博した。
今回は出張編ということで、信州の老舗書店で起こった幽霊騒動をきっかけに、27年前に起きた老大作家殺人事件の謎に挑むというストーリー。幽霊騒動を起こしたのは誰なのか? そして犯人の意外な狙いとは? 事件を解き明かすための伏線をたどれば「犯人あて」も楽しめる内容となっている。
このシリーズの特徴といえば、書店にまつわるエピソード。今回は、地方書店の現状が描かれている。「棚が話しかけてくる」かのように常に品揃えに気を配る老舗書店や、本以外の品揃えやサービスを工夫することで魅力ある店作りを心がけている郊外型書店など。書店に深い愛情を持つ杏子の言葉を通じて語られている。
一方、妹キャラで探偵役の多絵に関するエピソードにも注目。菓子袋を開けるときの不器用さは今後も使われそうな予感? 一方で、グランドピアノを弾きこなすシーンあり、いい子を演じていた過去を吐露するシーンありと、多絵の意外な面が明らかに。圧巻は、クライマックスで多絵が見せる「凄み」。また、成風堂でアルバイトを始めるきっかけとなったエピソードはファン必読。
ただ、個人的にはストーリーに不満を感じた。今回は、横溝正史風の小説を書くのが夢だったという著者念願の作品とのこと。しかし、凄惨な殺人事件やドロドロとした過去の真実など、このシリーズには似合わないのではないだろうか? また長さについても、わざと長編に仕上げたという感がある。短・中編のほうが良かったかもしれない。
次回作からは短編に戻るとのこと。デビュー作で打ち出した、書店の日常からミステリを描き出すという「本格書店ミステリー」のイメージを大事にして欲しいと、1ファンとしては願っている。
ますたぁ@BAYSIDE BREATH
<参考ページ>
●ここだけのあとがき『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』 - 東京創元社 Webミステリーズ!
●本格書店ミステリ誕生!大崎梢さん - [ミステリー小説]All About
●期待の新人作家の第2作。 - [ミステリー小説]All About
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