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チャコさんのレビュー一覧

投稿者:チャコ

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本日本国債 改訂最新版 上

2004/08/21 16:21

理論上の危機を小説という形で茶の間に届けた

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

幸田真音氏の大ヒット作である『日本国債』は,これまで銀行や証券会社の不正や内情のみに焦点を当てがちであった経済小説の世界では,国債という一種独特な世界に焦点を絞った異彩を放つ作品であるといえる.国債の何たるかを知らない読者には少し難しいであろうが,新聞の経済面を読める程度の知識を持っている人々には非常に興味深い作品だ.
本書が経済教育的立場から見て果たした貢献は大きく分けて二点ある.

第一に,国家財政の危機的状況とその遣り繰りを鮮明に描き出している,という点である.毎月2兆円も発行される国債.それが淀みなく消化される背景にある,シンジケート団という日本独自の「国債買取機構」の存在と,「儲けを極大化する」という資本の論理に反してそれを消化し続ける日本の金融機関….何となく「日本って危ないよね」としか理解できなかった読者には,その「危なさ」の構造が脳裏に焼きつくストーリー展開となっている.

第二に,その危機が具現化するとは,具体的にどういう事態なのか,を明らかにしている点である.「未達」.国が借金できない状態.中南米諸国でしかありえないと思っていた「国家の資金繰り破綻」.これまでシンジケート団の存在により薄氷の上で何とか避けてきた危機が,日本でも起こってもおかしくない状況にあることが印象的であった.(ある意味,債務超過の主体が貸し渋りにあっても当然だといえるのであるが…)

以上のような意義を踏まえた上で,敢えて注文を付けたい.トレーダーたちや金融当局者の危機感が制度改革として結実するというところで話が終わってしまっているが,現実の財政状況は悪化し続けているし,金利も底辺に張り付いたままである.この現状はどう説明すべきなのか? 現実は小説よりも奇なりというが,奇なら奇でどのようなメカニズムが日本の国債マーケットの異常事態を可能にしているのかを明らかにしてほしかった.幸田氏は日銀の金融政策の研究もされると,もっと膨らみがある経済小説となっていたように思う.

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紙の本小説ザ・外資

2004/08/24 15:47

これこそ日本の金融敗戦

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『外資』というテーマを軸に,二つの事件が描かれている.

一つは私募債に関わる詐欺.私募債とは,銀行など金融機関からの一般的な融資とは別に,縁故者や役職者,取引先などから直接資金を調達する方法として利用されてきた社債である.信用と償還能力があればどのような会社でも発行が可能で,一般的な融資に比べ,保証協会への保証料や銀行への前払い利息などが無い分,発行者にとって有利な資金調達が可能である.本書では私募債の買い手がキックバックを要求する一方で,買い手が杜撰な契約を結ばせることで資金をかき集めている姿が描かれている.

いま一つはハゲタカ問題である.本書のモデルとなっているのは,言うまでもなく,旧日本長期信用銀行である.1998年秋に破綻した旧長銀は,国有化された後に,不良債権を分離され,それを税金で処理して「綺麗な姿」になった後に,ただ同然で米国系ファンドに売却された.経済合理性を著しく逸脱した米系ファンドへの「アドバイス料」の支払いは,当時新聞でも問題にされたが,新生銀行はいまや「再生のモデル」とされている.日本が食い物にされていくのを当時私は歯噛みしたものであるが,その悔しさを余すところなく本書は小説化してくれている.

本書の意義は「日本が食い物にされている姿」を小説として残してくれた点にある.「第二の敗戦」のGHQがごとく歓迎する向きも無いわけではないし,結局日系企業が旧長銀を買い落とさなかったことへの異論もあろう.しかし,いかに日本という国が「金融後進国」であったかを象徴する事件として,克明に小説化された点は大いに評価に値する.そういう意味では,当時何の警告も発してこなかった経済学者の罪や多し,ということになる.(本書に金融教育上要求する点は全く無いが,仮に問題があるとすれば…性的描写を含んでいることぐらいであろうか.ただ,それは本書の意義を損なうものでは全く無い)

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日銀の「あいまいさ」.謎は深まる

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日銀って一体なんだろう?——本書を読んでその思いを深くした.
日銀にまつわる「曖昧さ」を軸に叙述は展開していく.日銀法第3条が定める日銀の「自主性」「独立性」と,4条が求める政府と日銀の「整合性」の間で揺れ動く日銀.この2つの条文が揺籃期の日銀を翻弄する様を明確に描き出している.

本書の素晴らしい点は,二点ある.第一に,日本銀行が極めて「あいまいな存在」であることを,明確に描き出していると言う点である.学会において長年議論されてきた「日銀とは何ぞや?」という問題設定があながち「象牙の塔」の話ではないことが確認できた.第二に,日本銀行の意思決定プロセスが明らかにされている点である.官僚がいかにして鍛えられているのかを実地に見てきたが,日銀でも同様なのだと納得させられた.ただ,新日銀法の下でも日銀「官僚」の方が楽そうである事に変わりはない.

本書を通読して得た不満点は,なぜ日本銀行が独立性に拘わらざるをえないのかといった点に深くメスを入れてほしかったということである.日本銀行の独立性が問題になるのは,決まって日銀と政府の政策の方向性が異なる時のみである.その乖離は日銀と政府両方の責任であろう.日銀と政府がとことん膝詰めで認識の際を埋めるべきであろう.ところが,本書を読んだ限りでは,「面子」「新日銀法で手に入れた権利」に拘っているため整合性に問題が生じているように見える.

不満点を差し引いても,本書は新日銀法制定からゼロ金利,ゼロ金利解除,量的緩和と日銀史上,金融政策史上最大の転換期を描き出す書籍として十分読む価値のある「読み物」であると言えよう.

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