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意思伝達ツールの「手紙」の重要性

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辻仁成に恋愛小説を書かせたら，現在の日本では間違いなくトップである．ただし，今回は，変わった趣向となっている．他人のために手紙を書くことを生業とする小説家（代筆屋）の視点を通し，１０篇の人と人との心温まる関係を描いたものとなっている．勿論，辻の得意とする疾走感のある文章や巧みな人物の心理描写は健在で，一気に読めて，読者の心に一石を投ずる事に成功している．また，面白いことに，実際，本作が生まれた背景には編集社の担当者と作家（辻）との「手紙」を通した出会い（交流）があったようだ．現代社会において様々な物のデジタル化・機械化が急速に進められているが，まだまだ難しい分野も数多く見受けられる．「手紙」という意思伝達ツールもまた然り．携帯電話やメールが，いくら主流を占めるようになっても，「人間の心」といったものはそれ程昔から進化しているとは考えられない．