TMさんのレビュー一覧
投稿者:TM
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2007/01/07 14:37
訳注のお粗末な歴史観
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何につけても訳注の記述に恐れ入る。問題大有りである。
一例を挙げれば「Wehrmacht」を「ヴェルマヒト」と表記、訳注にて“ヒットラーの陸軍参謀”と説明してあるが、小生寡聞にしてこの参謀名を知らない。と云うより「Wehrmacht」(ヴェアマハト)が「ドイツ国防軍」そのものの呼称である事は、二次大戦関係の知識としては基本に属するものであろう。
その他「従軍慰安婦」を「動員」と書いたり(日本側の一次資料からは実証不可能だった筈であるが)、中国共産党の見解宜しく日華事変を「一五年戦争」と表現しつつ、43年以降は国民党が兵を温存し共産軍を対日戦へ当てた等と述べたり(輜重部隊を襲った37年の平型関以外に日本側記録からも検証可能な八路軍の対日正規戦闘例があれば聞いてみたいものである。一号作戦を応戦したのは蒋介石の軍及び米軍であって毛沢東の軍ではなかろう。それとも蕋江を米軍支援で守ったのは八路のゲリラだったとでも言うのであろうか?)。
当時の英豪軍将兵の対日認識の浅さから来る著者の偏見や流言の盲信(或いはBC級裁判等にも見られた復讐に為する恣意的与太)はある意味当然としても、日本人である筈の訳者の知識の正確性については正直疑いを禁じえない。原文の文意を活き活きとした日本語で伝えるという翻訳本来の仕事としては評価出来る分(正確性はいざ知らず)、残念に思える。その点を踏まえた上で批判的に読みさえすれば、冒頭の対戦車戦闘の描写や筆者の接触する抗日ゲリラが専ら共産系華僑であった点等、そこそこ興味深い内容ではある。
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