碧寿さんのレビュー一覧
投稿者:碧寿
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紙の本死者の奢り・飼育 改版
2005/01/25 02:33
ねばっこい液体に鼻も口も、毛穴もふさがれました。
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
修飾語の多すぎる文章は嫌いだ。
やたらと形容詞を使ったり、ピンと来ないような比喩やら揶揄やら…。
文学的に書いているつもりなのだろうが、長文化が、リズムを狂わせ、もはやその文章には生命はない。
この本に手を伸ばしたのは、ノーベル賞作家に対する、単純な好奇心。
芥川賞作品でも読んで、おハイソな気分にでも浸ろうと。
しかも、「飼育」。いい題名だ。江戸川乱歩のような怪しさを秘めている。
しかし。最初の数ページをめくり、吐き気。
多すぎ、長すぎる。
購入代金を無駄にしたと腹が立った。
後は、やけくそになって先を読んだだけ。
が、これがいけなかった。
10ページも進むと、本を読んでいる事を忘れた。
息苦しさ、べとっとした粘液に、鼻も口も、毛穴もふさがれた状況に、死にかけたリズムが容赦なく拍車をかける。どつぼにはまったのだ。
不必要に出てくる性的な表現、あっけなく残酷な展開。どれも、こちらの居心地を悪くする。
作者は、憎らしいほどに、われわれを知っている。
期待しても「エッチ」な表現は出てこない。ただ、無意味に性的なのだ。
本当に残虐なシーンでは、オフサイトトラップのように、突如、修飾語が激減する。筆舌を尽くしても、人間の残酷さにはかなわない。あとはあんたの残忍さで仕上げてくれ、ということだろう。
4っつ星にしたのは、見透かされて、居心地が悪くなった腹いせ。心地よすぎる本が多い昨今。こんな本を読んでみるのも、一興では? ということで、薦めたい。
ちなみに、「飼育」は、江戸川乱歩風ではない。あくまで、大江風なので、間違った期待をしないように。
紙の本アメリカ素描
2005/02/18 04:32
米国人理解には欠かせない1冊。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
イラク情勢など、現在、米国関連のニュースを聞かない日はない。
時に、強引とも取れる米国の外交。文化人類学的な背景には、その理解の助けとなるヒントが隠されているのだろうか?
司馬良太郎といえば、アジア史。彼の作品を知るものには、彼の米国についての書物は、意外とも映ろう。事実、彼は、渡米すら避けていた。
しかし、再三にわたる出版社からの依頼が、彼の背中を押した。
とても相互理解などは不可能と思われがちな、アジアと欧米。だが、米国には、往年の中国と意外な共通点があった。
米国人と対面した時に、漠然とした不協和音を感じたことがある人も多いのではないだろうか?
彼は、これに「文明」と言う名を与え、解説している。
第2次大戦に陸軍兵として参加した経験、そして、中国文明に対する、深遠な知識がその背景にあることは、言うまでもない。
米国人を理解し、彼らと健全な交流をするつもりならば、非常に役立つ1冊と言えよう。
紙の本うずらちゃんのかくれんぼ
2005/02/01 03:47
絵がすごい!一見の価値あり。
6人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本を開き、眼に飛び込んだ絵を見、鳥肌が…。
娘の誕生祝いに、頂戴した本。
愛子様のお気に入りであることも、ベストセラーであることも知らず、何の先入観もなく、本を開いた。
絵がすごい!
添えられた文章以上のメッセージ性が秘められている。
題名でかくれんぼと記載されているが、ただのかくれんぼではない。
遊戯が遊戯で収まらなくなり、いとも簡単にヒステリー状態に陥りがちな子供。
強い強迫観念に突き動かされ、隠れることが至上の命題となり、そのためにはどんな犠牲もいとわなくなる。動物としての体を失うことになっても…
その眼は、急速に植物となっていく体を保有しながらも、今だ動物である事を享受しているわれわれを恨むわけでもなく、見つめている。
しかし、「みーつけた」で、また日常が戻る。
あるいは見つかる事を待っているのかもしれない。無機質な表情からはうかがい知ることは出来ない。
「うずらちゃん」と「ひよこちゃん」を取り巻いている環境も、実に“深い”。
「かくれんぼ」にうつつを抜かしている子供たちの周囲を、ひとつの生命体が取り巻き、随所で、われわれを挑発してくる。
楳図かずおの漫画を読んでいるような、軽い恐怖感に支配された。
娘に読ませていいのか、躊躇した。
が、幸いなことに、娘は娘で幼児として楽しんだ。
「何をおおげさな!」と、思うかもしれない。が、見てみれば、何を言わんとしているかわかる。
童心に帰って楽しむのも“あり”だろうが、この際、大人として、見てみてはいかがなものであろうか?
一見の価値は、間違いなくある。
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