石堂藍さんのレビュー一覧
投稿者:石堂藍
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2003/11/22 17:45
著者コメント
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●何を今さら
ファンタジーのガイド? 何を今さらって思ってませんか。私も始めはそう思ってました。そんなのすぐにできる、と侮ってもいましたね。ところがどっこい、私の五ヶ月はこの本一冊のためにつぶれました。
とにかくファンタジーの世界は広い。何を捨て、何を拾うのかに、まずさんざん悩まされました。本を読み返したりしながら、セレクションだけで一ヶ月。結局、境界領域のものもいろいろと入ってきて、考えれば考えるほどファンタジーは奥が深い。だからやっぱり、何を今さら、じゃないんです。
執筆にも苦労しました。今までに書いたものはなるべく使わないという方針で、原稿をほぼそのまま流用したのは一本だけ。bk1に連載していたものの一部を使ったりはしたけれども、ほかはすべて新しく書き起こしています。当然いちいち読み返しているので、たいへん。さらに半分くらいまで書いて編集者に見せたところ、粗筋をドーンと書いちゃダメ、ボツ! と言われ、全部書き直し。ファンタジーのガイドを甘く見た私が悪いのです。
とまあ、こんなふうに出来上がったこのガイド、一人でも多くの人に使ってもらえれば嬉しいです。
2003/04/02 17:46
読者の予想を覆す刺激的な連作短編集
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『指輪物語』以降あまりにも多くのファンタジーが書かれ、別の現実を認識させるものとしてのファンタジーの機能が薄まってきた。『ハリー・ポッター』はその典型と言えるが、この作品には、例えばサムが初めてエルフと言葉を交わし、世界観を根本的に変えられてしまったというような体験がまったく描かれず、読者にもそのような現実が転倒する感覚を与えない。ファンタジックなものは道具でしかないのだ。それでよしとするエンターテインメント作家も多いだろうが、それではつまらないと考える作家もいる。ディキンスンはその一人だ。
本書は竜退治や乙女を助ける騎士といった定型的な物語を、読者の予想を裏切る形で覆してしまう連作短篇集である。昔話の語り替えのような安易なものではなく、まったく別種の物語を紡ぎだしている。中世のロマンスを装いつつ新しい物語を語ろうとするその精神は、『指輪』の心を受け継いでいる。
紙の本北欧神話物語 新版
2003/04/02 17:34
『指輪物語』の背景となった北欧神話の入門書として最適
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『指輪物語』の背景となっている神話体系は、ゲルマン・北欧系の神話の世界を目指して作られた。同時に多くのイメージをそこに負っている。『エッダ』『カレワラ』『ベーオウルフ』など、トールキンも読み、あるいは研究した北欧系神話や英雄叙事詩の邦訳もあるが、ここではわかりやすく再話した本書を紹介しておきたい。
オーディンが弟たちと共に霜の巨人ユミルを倒してその体で世界を創造する創世神話から、オーディンが世界樹ユグドラシルに吊るされて強力な呪術を得る次第、トリックスター・ロキの策略に満ちた活躍、トールの冒険の数々、黄金と呪われた指輪のエピソード、バルドルを襲う悲劇と世界の終りラグナレクまで、32の神話が語られている。
さまざまな原典を参考に組み立てられた物語は、読みやすく、しかもいかにも神話らしい簡潔さを失っていない。解説もていねいで、北欧神話への入門書として最適の一冊。
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