落合美知子さんのレビュー一覧
投稿者:落合美知子
| 1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
ちいさいおうち 改版
2000/07/09 23:56
過去から未来へのメッセージ。子どもたちに贈ろう!ちいさいおうち
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
私たちの感動には、心を激しく揺すぶるものから、静かにじわじわ染み込み浸透するものなどさまざま。「ちいさいおうち」は、後者で、子どもの頃読んでもらい、大人になっても深く印象に残っている人が多い。「岩波の子どもの本」が創刊して間もなくの頃(1954年)から、変ることなく読み継がれてきた。
このおはなしは、むかし、むかし、ずっと いなかの静かな丘の上に、ちいさいおうちが建っていて、しあわせに暮らしているところから始まっている。やさしいタッチの絵や文字の配置の美しさ、どのページにも細やかな心遣いがあって、本を開くとほっとする。ちいさいおうちは、いつも変ることなく、夜や昼、季節の移り変わりを眺めているが、周囲は少しずつ変っていく。読んでいると、ことばが滑らかで穏やかな気持になり、聞き手の子どもたちも自然に融け込んでいく。やがて、ちいさいおうちの周りに道路や建物が出来て、それから、高層ビルに囲まれてしまうと、月夜にダンスをするリンゴの木もなくなって、いつ春や夏がきたのか、いつ秋でいつ冬なのかわからなくなってしまう。人々は忙しくかけまわり、空気は汚れ、騒音の中で、ちいさいおうちを振り返る人もいなくなる。人類の歴史を垣間見る思いがして、ふと、ちいさいおうちは、私たちなのだと思う。そして、急激に破壊された自然、静けさを失った環境の今に直面する。
ちいさいおうちはある日、ちいさいおうちを建てた人のまごのまごのそのまたまごに発見され、昔と同じようにきれいになって、新しい丘の上に移される。ちいさいおうちは、もう二度とまちへ行きたいとは思わない。うれしそうににっこりしているちいさいおうちの絵を見ていると、いつの世にも変ることのないしあわせを思う。自然の一部であるわたしたちに、自然は不可欠であることも。
私はこの絵本をいつも傍らにおいているが、見るたびに子どもたちをちいさいおうちのいるところへ連れて行ってやりたいと思う。その願いがすぐに叶えられるのは、この絵本のように何度読んでも感動する本を子どもたちと一緒にたのしむ時である。ちいさいおうちがこどもたちに読み継がれていく限り、まだ、未来はあると思える。私の心に灯をともす絵本である。幼児〜大人まで、どの年齢の人にも読んでもらいたい
| 1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
