みなもと太郎さんのレビュー一覧
投稿者:みなもと太郎
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あすなひろし作品選集6~7巻セット
2004/12/02 15:57
みなもと太郎先生の推薦文(後編)
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まもなく、12月末に刊行される「第六集」「第七集」は、これまで五冊の経験を生かし、慎重に作業をすすめ、セレクトされた、今まで以上の貴重なレア本になります。
「BSマンガ夜話」ではじめて原画の細密さを知って驚かれた方も多いでしょう。私たちはあすなひろしの、あの仕事を、何とか皆さまにお伝えしたく、これまでも汗を流して来たのです。あまり苦労話をしたくありませんが、一例だけのべると、あの超細密なカケアミ線がツブれないように印刷するためには、インクの濃度を思いきり下げなければません。しかしそうすると、今度は細かい霧の点点などの描写が、まっ白に消えて(飛んで)しまうのです。こんなデリケートな原画に、私たちは立ち向かって来たのです。新書版やB6版、まして文庫版(経費が安く上がります)などにせず、第一巻からずっと週刊誌サイズのB5版で刊行してきたのは、そういう理由からでした。しかしそれでも不満は残ります。
今回の二冊は、本文を全部アート紙(つるつる紙)で印刷します。これでぐっと、原画に近い線が出せると思います。もちろん経費は高くつきますが(笑)。
「六集」はお待ちかね「少女漫画」の第二弾、「マーガレット」に四週連載された「星空のかなたに」。もちろん一度も単行本化されていない幻の傑作です。リアルなのに可愛い仔犬や、悲しい恋の物語は手にとって読んで戴くとして、雑誌掲載時からマニアが目をむいた、ヒロインの髪の毛の繊細な流線が、はじめてキレイな印刷で見る事が出来るのです(特に最終回トビラ絵!)私も今から心弾みます。そして第七集は作家最晩年の超レア物を三本。「画力・内容共に著者がたどりついた最高峰」とも評された「林檎も匂わない」を表題作に、あとの二本は雑誌にすら一度も掲載されてない、文字通り「本邦初公開」作品です。小気味悪いくせにコミカルな貧乏神と、おマヌケ好青年との共同生活の顛末を描く「ほあーほあ」は、なぜこれが未発表に終わったのか解らない高水準作。そして三本目の「東回帰線」は…
私はこの作品について語る言葉を持ちません。命の灯火が消えかけているのを自覚していたに違いない著者がそれでもなお、表現法と画力の向上を目指し、漫画の新しい扉をこじあけようと最後の力を絞りつつ、遂に未完に終わった十九頁。しかし信じられない完成度と超細密なこの遺作原稿を前にして……何かを語れる人がいるとは、私にはとても思えない…。
みなもと太郎
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