久美沙織さんのレビュー一覧
投稿者:久美沙織
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紙の本コバルト風雲録
2004/10/06 15:06
著者コメント
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コバルトといったら、鉄腕アトムの本人よりあとから生まれた少しうりざね顔の兄ちゃん(ウランちゃんほど有名になれなかったカレ)だろうと思うひとというのは、もう世間では数が少ないかもしれない。バブル前のJALのCMでサーカスが歌ってた曲のサビ(♪いまわたしはコバルトの風……)をいまどきちゃんと思い出せるひとも珍しいかもしれない。
なにしろぐぐッてみると、キーワード「コバルト」で一発めに出るのはほかでもない「WEBコバルト」つまり集英社のコバルト文庫(かつては集英社文庫コバルトシリーズと言っていた)の公式サイトなのだから。だが、それでも、わたしは思う。「雪待ちにんにく卵黄」のための素晴らしいにんにくを作っておられるという青森県田子町のじいちゃんはきっと「その」コバルトを知らないと思うし、クマに襲われておおけがをなさったという福井県のご住職もきっと触ったことはおろか見たことも聞いたこともおありにならないであろうなぁ、と。
「わたしは昔コバルトだった」とか「コバルトの勃興にたちあった」とか言ってパッと意味が通じるひとの95パーセントは、現在35歳から下の世代のしかもかなり読書が好きで読むものの守備範囲がわりと広いあるいは少なくとも人生の一時期は広かった非常に特殊でマイナーなタイプのひとたちだけなんじゃないかと思う。のこりの5パーは業界関係者ね。そもそもそーゆーひとじゃないとわたしの名前を見て「小説家だ」と思ってくれないかもしれない。なんでもAV女優さんだかソープ嬢さんだかに、きっぱり同姓同名のひとがいるか少なくともいたことがあるらしいのである。
ひょっとすると、この本はそういう、あくまで特殊でマイナーなそーとー少数のもしかすると絶滅が危惧されるような種類のひとたちにしか興味を持ってもらえないものである、かもしれない。
だが、そういうひとのツボは、それだけは、たぶん、突いているはずだと思う。
何度もしつこく突いているんではないかと。
そういうひとが、読んでへーと何度か言って笑って泣いて怒ってあきれて驚いて溜め息ついてトイレにいってかえってきてやれやれともういっかいひろげて笑って(以下略)、読み終わって、ま、いちおーおもしろかったな、「あいつ」にメール書いてこんなん出たって知ってるか聞いてみようかな、などと、同じようにレッドデータ少数民族である「その頃」のおともだちの顔など久しぶりに思い出してくれたりすると、ちょっといいなと思う。
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