佐原 加奈子さんのレビュー一覧
投稿者:佐原 加奈子
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遺伝子ビジネスの世紀 医療が変わる、産業が変わる 最先端レポート
2000/07/10 01:20
【遺伝子ビジネスの世紀到来】
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2000年6月26日、国際的なヒト・ゲノム・プロジェクト、米国Celera Genomics社が、ヒト・ゲノムを解読したと発表した。米国Clinton大統領が記念式典を主催、英国Blair首相が衛星中継で画面に顔を見せた。正に世界中に「生命科学の世紀」の到来を実感させた。
しかし、ヒト・ゲノムの解読は、1つの通過点にすぎない。遺伝子ビジネスは、ヒト・ゲノムの解読を待って始まったのではなく、既に走り出しているのである。
遺伝子情報の利用は、製品の開発手段に変革をもたらし、利用の仕方を変える。これによって産業構造が変化し、結果としていろいろな産業に革命を起こす。実際に、遺伝子情報を利用した製品開発は、医薬品、診断薬・診断サービス、食品などさまざまな分野で既に改革を起こしつつある。
この時流をとらえて、日経バイオテクが、「最先端レポート 遺伝子ビジネスの世紀 〜医療が変わる、産業が変わる〜」を緊急出版した。日経バイオテクの日ごろの情報網を駆使して、研究開発の最先端動向から、企業戦略・企業動向、規制の動きなどまで、具体的な事例を豊富に挙げながら分かりやすくまとめている。
特に、産業界の最先端動向を交えたゲノム情報に基づく創薬の現状に、多くのページを割いている。ゲノム情報は、創薬を加速させるだけでなく、抗体技術、アンチセンス技術などと結び付いて、新たなバイオ医薬の誕生にも貢献する。また個人個人の遺伝子情報の解明により、薬の有効性や副作用の予測が可能になるかもしれない。これらの現状を、日本および欧米の製薬企業の企業戦略・企業動向を中心にレポートしている。
診断分野でも、遺伝子レベルの診断により効果的な医療が進められようとしており、まったく新しい診断サービス、健康管理サービスが誕生する可能性がある。そのため、普及段階にある感染症の遺伝子診断、広がり始めたヒトの遺伝子診断、クローズアップされる遺伝子診断の問題点について、分かりやすくまとめている。
食品分野では、今のところ遺伝子組換え食品、農作物に対する逆風が吹いているが、今後次々と見つかってくる有用な遺伝子を組み込んだ高付加価値な食品は必ず増えてくるはずだ。また医薬品と食品区分を見直し、食品に機能を明示する動きが強まっており、遺伝子情報は欠かせなくなる。これらを具体的な事例をもとに解説している。
また、これらの遺伝子ビジネスを本格化させる基盤として、遺伝子解析技術と情報処理技術が欠かせない。そのため、これらの技術を理解するための解説と最先端動向を、図表を多用しながらまとめている。また、情報産業のバイオ分野進出が進み、バイオインフォマティクスという新しい技術を生み出し、新たな情報産業として立ち上がろうとしている状況も、企業動向を含めてレポートしている。
一方で、遺伝子情報の活用は、新たな問題も引き起こそうとしている。1つは、差別、倫理の問題だ。遺伝子情報をきちんと管理し、利用を規制することが、遺伝子情報を活用するためには不可欠だ。また、不治の病の遺伝子を調べていいのか、遺伝子情報に基づいた治療はどこまで許されるのかなど、これから議論を深めていかなければならない問題についてもクローズアップした。もう1つの大きな課題は、知的財産の問題だ。この問題を理解するために、遺伝子ビジネスの鍵を握る特許の歴史から、 特許が巨大マネーを動かしている現状、ゲノム特許の最新動向までをまとめている。
遺伝子情報が、今後のビジネスで果たす役割とは何か、社会に与える影響とは何か ——その答えは、「遺伝子ビジネスの世紀」の中から見付かるはずだ。
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