長崎夏海さんのレビュー一覧
投稿者:長崎夏海
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風のラヴソング
2000/07/09 17:17
現実を愛する力
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読後、隣にいる人間に、あたたかいまなざしをむけたくなる一冊。
七編からなる短編集。
現実の重荷を背負いながら生きる子どもたちと大人たち。「体を張って生きてるんだ」というバイタリティが伝わってきて、元気を与えてくれる。
夫婦ゲンカをして、テレビをボコボコにこわしてしまう父ちゃん。団地のベランダで七輪で魚を焼く大迷惑なおばあさん。刃物をふりまわしてあばれる友達のお父さん・・・。しょーもない人物がたくさん登場してるのだけど、「この人たち、なんか結構いいよねー」と、愛しい気持ちがわいてくる。
「バトンタッチ」では、姉の結子が、アゲハチョウを飛び立たせる場面からはじまる。それを見ているのは弟のタイキと友達の花郎(ファラン)、そして白いあごひげの老人。
老人は、タイキと花郎の秘密基地である野原に段ボール箱を置いている。二人は、秘密基地をのっとられてたまるかと、箱をつぶそうと計画。ところが、野原では、結子と浮浪者が楽しそうにおしゃべり。秘密基地奪回計画は、機会をうしなってしまうのだが、ある日チャンスがくる。タイキと花郎は、勇んで野原の真ん中の段ボールへむかうが、箱が老人のベッドだったとことに気づき、しんみりしてしまう。
金色のネコジャラシの野原で、段ボール箱から顔だけ出している老人は、箱ベットの小舟につかまって、黄金色の海で漂流している仙人のようだ。みじめさや哀れみは感じさせない。
結子の事故。野原を追い出される老人。容赦ない現実がおそいかかるが、読後はさわやか。どんな現実でも、そこに生きたことの意味が、手応えとして残る。
第二十七回日本児童文学者協会新人賞・第四十五回芸術選奨文部大臣新人賞作品。
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