文治郎さんのレビュー一覧
投稿者:文治郎
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女帝の古代史
2005/09/09 09:09
日中史料の比較から女性天皇の存在意義を探る
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
書き手とプロデュース側との思惑が一致するからといって、一般読者の興味を惹く史書が必ずしも上梓されるとはかぎらない。だが、本著はそういう史書とは明らか異なり、古代日本史に不案内な読み手をもグイグイと引っ張ってゆく。創作ではなく、史料から導かれた史実を著者は論述しているはずであるのに、幾人かの女帝の在りようは、それを舞台でみているかのような臨場感にあふれている。
そしてまた、古代の女帝に十分な統治能力のあったことを指摘し、先達の学説を参考にしながらも、彼らが見過ごしていたか、あるいは、思考途上で波のまにまに消えていったことどもを、日中の史料を駆使しながら、大胆に推論、構築してゆく。従来の古代日本史研究は、現存史料の少なさもあって、中国の史料や史書にたよる傾向が強く、その上、儒教的男尊女卑が敷衍し、女性天皇の統治能力に否定的な見方が多かった。
著者は、女性天皇の顕著な統治能力を、史上初の女帝・推古天皇や、大化改新時の皇極天皇、さらには、持統天皇などを例に展開してゆく。なかでも、皇極天皇と蘇我蝦夷の雨乞い合戦や、持統天皇を述べた箇所の快刀乱麻の筆致は迫力十分、文章のキレがよく、立体的で躍動感に満ち、角々の決まりも決まって読ませる。
著者は中国の史料偏重に異論を唱え、日本流の方法のすばらしさ、女性の社会的地位の安定していることの得がたさなどを読者に明示し、女性天皇の存在意義を暗にうったえるとともに、21世紀の日本の在り方を私たちに示唆している。成清弘和著「女帝の古代史」は、秋の夜長、耽読するに十分な一滴である。
上記書評の詳細は、以下のURLで読むことができます。
http://www.eonet.ne.jp/~komori/DI3.htm
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