学堂さんのレビュー一覧

大学院での新しくて，意欲的な実践教育の試みをわかりやすく活写。大学生や大学院生，企業の経営幹部・企業の研究開発担当者必読の書。

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　日米欧やアジアなどをめぐる激烈な国際的研究開発競争に勝ち抜き，わが国の産業活性化を図る手立て—これには，目標が曖昧なまま研究開発そのものを実行する能力（研究データをコツコツと出す能力）だけでは遅れをとる。研究開発計画を立案し実行する能力，つまりプロジェクトマネージング（ＰＭ）能力を持つ研究開発者・リーダーの養成が急務である。この能力は日本の研究者の弱い部分とも言われる。
　本書は，このＰＭ能力を身につけた研究開発者を養成するため，東京工業大学が博士課程の中に新しく設けた「ＰＭコース」での具体的な実践教育現場の模様を分かりやすくまとめたもの。内容構成は①財務諸表の基本と模擬体験②ビジネスモデルの基本設計法③事業化プランづくり④研究開発を技術経営の視点でとらえる考え方など。このコースの特任教授には，民間の名だたる実務専門家が当たっているだけに，内容もより具体的。
　筆者は，経済産業省の技術評価委員や大学講師などを務める技術畑のベテランジャーナリスト。文章も歯切れよく，理解しやすい。大学生や大学院生，企業の経営幹部，企業の研究開発担当者などの一読をおすすめしたいと思う。