仲謀さんのレビュー一覧
投稿者:仲謀
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紙の本中国の瀬戸際戦略 「反日」の裏に隠された「反米」を読み解く
2006/01/05 02:43
中国政府の意図・行動の分析に必須の知識
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
中国政府の行動を、国家戦略、軍事史の面から分析した本である。中国を、経済の面から分析した本は多いが、人間や組織の行動は、経済の知識だけでは捉えきれない。
日本人の多くは、企業人であり、経済的な市場に依存して生活しているため、経済学的な考えでもって説明されると納得する人が多い。一方、中国政府の役人は、政治的な市場に依存して生きる人達である。
経済的な市場に依存する「商人」は、「利」を求め、政治的な市場に依存する「政治家・官僚」は、「名誉」や「国家の威信」を求める。この感覚の差が、自由主義国家が行う「専制国家である中国政府の意図の分析」を誤らせることになる。
そして、これこそが、日本にとって不利な結果をまねく「中国政府の対外戦略(瀬戸際戦略としての)」の採用の理由、さらに、その戦略が成功する要因となっている。
日本で取得が可能な情報は、日本人の軍事軽視・歴史軽視の状況から偏ることが多く、それによる誤判断により国益・社益を損なう結果を生んできた。「国益」「社益」に対する影響から中国政府の行動を考慮に入れる必要のある人達にとって、必須な知識であることは間違いないであろう。
ただし、この本の内容を理解するには、かなりの世界史の知識や、国際政治・戦略に関する知識が必要であり、内容の完全理解を行う場合には、参考とすべき文献が大量に必要である。参考文献として記載されている資料が、防衛庁防衛研究所教育資料「核抑止下における瀬戸際戦略」(一般人には入手困難)、IISSミリタリーバランス、各種統計資料だけでは、上記の必要知識の参考とはならず、この分についても、参考文献名の記載を希望したいところである。
軍事軽視・国家戦略軽視の日本人にとって一般的でない考え方を前提としているため、一般企業人に対しての説得力が低いことが残念である。
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