凡愚さんのレビュー一覧

「天台止観」の実践的な解説書

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　タイトルに惹かれて読んでみた。長いプロローグとエピローグはわかりやすいし、修行をしないと仏教はわからないという著者の主張に納得がいく。
本論を通読するのにハードルが高いのは、学位論文がベースになっているからのようだが、とくに著者が重要視した天台止観をもう少し一般人にもわかりやすく噛み砕いて示してほしい気がした。
　原始仏教あるいは初期仏教の瞑想法から、インドのヨーガ、チベット密教の瞑想法、禅の呼吸法、新しくはニューエイジャーとか精神世界を説く欧米人のものなどなど、さまざまな修行法が紹介されている今、なぜ「天台止観」なのかということも説明不足ではないだろうか。
　著者は、次の書で「変成意識」への入り方を解説したいと言っている。それは楽しみだが、欲をいえば本書でそれをしてほしかった。
　ところで、プロローグでオウム真理教事件について長々と論じているが、このとき仏教学者や仏教僧がほとんど発言しなかった、というより発言できなかったことも、なるほどと本書を読んで少し合点がいった。「修行者」の次元で見ないとわからないものなのだと。また、伝統教団の現状分析もおもしろい。
　いずれにせよ、著者の今後の著作を楽しみにしたい。