軍記読みさんのレビュー一覧
投稿者:軍記読み
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近世農書「清良記」巻七の研究
2006/09/09 23:43
軍記物の中の1巻だけが研究できるのか・近世の南伊予を掌握されているのかなどの疑問
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『清良記』は現存しているものは30巻本が多い。永井氏はこれを「現存『清良記』」として、その中の第7巻に書かれた農業に関する部分を検討されれている。
第7巻の記述の一部に瀧本誠一氏が酷似した内容を持つ『耕作時記』があるとされ、愛媛県農学の第一人者であった菅菊太郎氏が、『耕作時記』は『清良記』を抜粋したものだとされていたのを是正された。しかしながら、全巻軍記物には第7巻の「農」を語る福主人公の松浦宗案が架空の人物であることや、軍記物特有の空想が混ぜられていることを読む人に気付き易く書かれており、第7巻にも空想が多数混在している。これを整理することなく第7巻に限定して先輩の揚げ足とりに終始し、「古堅田」の定義も現在の聞き取りをそのまま何のためらいもなく受容されている。
田1町畑2反5畝の耕作労力を男子811人役と述べているが、『日本農書全集第10巻清良記』解題で徳永光俊氏が今後の研究の参考資料として近世初期の当地の軒数・家族構成・牛馬構成を示しておられるが、村には811人役の労働人口もなく、牛馬各1頭を飼うことを条件としているにも関わらず1頭飼っているのは庄屋だけでその他の農家では0.5頭飼っているのは良いほうで、牛をまったく飼わない本百姓もいることになる。この検討がまったくなされていない。軍記物なので扱いには注意が必要だとされているが、ご本人は軍記物(講談)を読まれたことはないようで、編著者の「空想」をそのままに解釈されているのは大きな問題である。また、成立年代の考証に琉球芋が薩摩土産の元禄14年にすえられ、傍証として『不鳴条』のはるか後の琉球芋が伝わっていなかったからだろうとする推測の文書の年代を削除して発表されている。「伊予史談」321.326.336.339号参考とすべきであろう。
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