すなすなさんのレビュー一覧
投稿者:すなすな
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月の夜に洪水が
2006/11/27 23:16
泣いてしまった
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冒頭から屋上というあやうげな場所で展開されるこれからの物語を思って心を奪われました。読み始めるとひりひりと胸が痛くて、突き放したくなるほどのせつなさに襲われました。屋上もよかったけれどドブ川もよかった。でも、屋上での描写がどれも好きで、分けてもダイモを打つところと仕事の合間にカラスを見ているところが気に入りました。声に出して読んでしまったくらい。
高校時代の事件に登場する雅美は私にとってとても身近でいやらしい存在でした。職場の人間関係と重なってリアルだったのです。大人の世界では、雅美のように妊娠して退学せずに、もっと巧妙に予防線をめぐらせながら支配したり操作したりしていくのでたちが悪いのです。でも、そんな職場にいて雅美のような気持ちに私もなったことがあるから、実行はしていなくても、とても怖いものとして迫ってきました。
実際に起きた事件や漫画を用いて語らせる場面も生きているし、東急百貨店の屋上なんかも凄く感覚としてわかったし、場面が変わっても、どの場面にもすぐ取り込まれていきました。
そして、ラストシーン、泣いてしまいました。はじめは気が付かなかったのですが、泣き止んで何だかどこかで見たことあると思ったらはじめに出てきた屋上で、再度この小説の完成度の高さを認識しました。本当によかった。
本の中扉(というの?)に桜と給水塔が描かれていて何のことかと思っていたのですが、読み終わってみて納得しました。これからは、この絵を見るたび、桜の花の散るようにあっけなく死んでしまった男の子をきっかけとして、屋上という、到達するまでには距離のある処だけど街や世間を俯瞰できる、そして危うげだけど明るく開かれていて空に近い、生と死の境界のような微妙な空間で展開された物語を思い出すような気がします。
それにしても男の人がここまで女性の繊細なこころの動きまで捉えることができるなんて見事です。女として恥ずかしかった。
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