ぺんぎんさんのレビュー一覧
投稿者:ぺんぎん
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静子との日々
2007/01/05 01:08
きわめて上質な恋愛文学
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
1969年。それは学生運動の時代の物語。
その時代に生まれていなかった僕のような若い世代からすると、その年代の印象は「現実感のない時代」の話だ。実際、テレビなどで報道されるその年は、安田講堂での機動隊との衝突や、翌年のよど号事件などから、ほとんど絶望的に暗い時代にも思える。しかし、この本を読むと、そうではないことがはっきりとわかる。
時代は関係ない。我々は時代とともに歩んでいる。しかしその中で若者は時代と関係なく恋をしていくのかもしれない。ここには政治運動の喧噪も、学生の奏でるフォークソングも届いてこない。ただ淡々と、しかし確実に育まれていく愛情のやりとりが綴られている。回想だけではなく、日記や書簡、ノートなどから書き起こされた「事実に基づいた物語」。
筆者は、奥様(この作品のヒロインである)を亡くされ、その時々の心象を所々に挿入している。そのことが、この作品を亡き奥様へのレクイエムとして位置づけている。しかし、この作品は幸せな結末を迎える上質な恋愛文学として読まれるべきだろう。恋愛とは常に最後は死によって別れねばならない運命のものであるからだ。
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