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さあちゃんさんのレビュー一覧

投稿者:さあちゃん

112 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本仏果を得ず

2008/01/29 00:35

ありがとう三浦しをんさん。この作品のおかげで文楽に巡り会えることができました。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 恥ずかしいことにもう何十年と日本人をやっていながら文楽を一度も観たことがない。勿論知ってはいる。しかしその知識は教科書で習った文字としての薄っぺらい物だった。この作品を読んだことで文楽について悟った訳ではない。ただほんの糸口をつかませて貰えただけだがそれで充分。この作品に出会えなければおそらく私は文楽に出会えずに一生を終えてしまったことだろう。
 高校生の時に文楽を観たことがきっかけとなり太夫になった健。彼が考えるのはただ義太夫として上手くなりたいという一心の文楽バカ。その彼の相三味線として選ばれたのは腕はよいが変人との噂も高い兎一郎。そんな二人が徐々に互いを認め合い信頼をよせていくのを軸として洒脱な師匠や兄弟子達や文楽好きな小学生の女の子や一目惚れしたその母親との物語がまさに文楽の演目と共に綴られていく。
 私みたいにへえ~文楽って三味線と義太夫さんがセットになってるんだあなんて知っている人からみたら失笑をかうような超ど素人でも充分に楽しめる作品だ。それどころかこれを呼んだら是非一度観てみたいと思った。今では古典だが文楽ができた当時は現代劇。いま私達が観ているテレビドラマみたいな物。時代背景は変わろうとも人の愛や憎しみは変わらない。それをどうやって自分の語りで伝えるのか。舞台の上でどうやって息を吹き込み蘇らせるのか。そんな文楽の世界に生きていこうとする健達の姿を熱情を持って清々しく描いている。
 それぞれ文楽の演目についても簡単な粗筋が紹介されているので素人でも判りやすい。是非一度舞台を観てみたいという気持ちにさせた作品である。

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紙の本ありがとう、さようなら

2007/09/27 00:41

まいこ先生からの学級通信です

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「辞めたいと思うこともあるけど先生をしててよかったと思う」そんな気持ちが溢れているエッセイ集。
 自分が中学生の時「ああこんなことあったあった」なんてエピソード満載。しかしそれを先生の視点からみるとこんな感じだったんだなあなんて改めて自分の中学生時代の教師達の苦労?に想いを馳せた。そういえばN先生どうしてるかなあ・・・
 中学生ってエネルギーの塊のような生徒達に対する愛情が感じられる作品だ。こんな素敵な先生のクラスになってみたいな。最近教師というと報われない職業のように思われるけど教師であるが故に味わえるたくさんの出会に対して素直にありがとうと思う気持ちが響いてくる作品だと思う。

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紙の本ぼくと1ルピーの神様

2007/03/28 00:44

インドといえばカレーぐらいしか馴染みのない人に是非お勧めです

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 主人公はラム・ムハンマド・トーマスという少年。この名前には秘密がある。イスラム・キリスト・ヒンドゥー教とすべての宗教に受け入れられる名前なのだ。孤児だった主人公は宗教紛争を避けるためにこの名前を与えられる。孤児でストリートチルドレンの主人公がクイズ番組で何故10億ルピーもの賞金を手に入れることができたのか?10億ルピーというのがどれほどの額なのか想像もつかない。クイズ番組はあの某局でやっているミリオネアみたいなものでなんと13問連続正解しなければならない。学校へ行ったこともないしがないバーテンダーの少年が何故答えを導きだすことができたのか?
 この作品は13の問題に合わせてそれぞれのエピソードが語られている。それは主人公が遭遇した出来事で、幼児虐待・近親相姦・殺人・強盗とどれも悲惨な出来事ばかりである。なのに読後爽やかなのはこの何も持ってない主人公の体当たりで前向きに生きるエネルギーやたくましさやユーモアが心地よいのである。そしてなによりも人に対する優しさが満ちている。
 どれも素敵な物語だが私は最後の方のエクス・グクルッツ・オプクヌという話が好きだ。とても悲しく切ない愛の物語である。またエピソードが年代順にではなく問題に合わせてならんでいるので主人公の年代があちこち飛ぶが逆にそこが新鮮だった。そして最後に[そうだったのか!」と叫ぶ驚きが待っている。
 1枚のコインだけを頼りに生きてきた主人公が最後にコインを投げ捨てて叫ぶ。「運は自分で作り出すものなんだ」と。この気持ち見習わなくちゃね。

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紙の本楽園のカンヴァス

2012/03/27 20:14

ルソーって誰?

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは間もなく開催されるルソー展の準備に追われる日々を過ごしていた。そんな彼の元にある日一通の招待状が届く。差出人は名前は広く知られるも誰も見たこともない伝説のコレクター。彼が所有するルソーの名作の真偽を鑑定してほしいとの依頼だった。しかし内容からするとこの依頼は明らかに彼のボスであり主任キュレーターとしての名声を得ているティムとは一字違いであるトム・ブラウンにあてられたもの。しかしルソーはティムの憧れの存在であり特にその作品「夢」を観た時の衝撃が彼をこの世界に進ませたきっかけである。「これは運命なのかもしれない。」トムになりすますことを決意しティムはスイスに飛び伝説のコレクターであるバトラーの屋敷で一人の東洋人の女性と出会う。彼女の名は早川織絵。美術学会を騒がせている新進気鋭のルソー学者である。そして二人の前に現れたルソーの作品とは「夢のあと」
ティムの勤めるニューヨーク近代美術館が所有するルソーの傑作「夢」と同じ構図の作品だった。この作品の真偽を二人は7つの章からなる古書を交互に読みそれをもとに講評しなければならない。そしてどちらか優れた講評をしたものにこの作品の取り扱い権を譲るという。この意外な申し出に秘められた謎とは・・・
 ルソーって誰?こんな一般常識もないような美術のことに全然興味のない私でも面白く読めた。ルソーを語っているのだがそのうんちくが専門的ではなくわかりやすい。そして作品の真偽が一つの物語を通して語られるという構成の素晴らしさがこの作品の魅力だと思う。この謎に加え主人公達が一つの作品を通して心を通わせるようになる様子もいい。上質のミステリーのように謎に引き込まれページをめくるてが止まらない。耳慣れない美術用語もでてくるが読み進むなかで苦労にはならなかった。特に監視員という美術品を鑑賞する人の為に静かな環境を見守る仕事があるということは初めて教えられた。
 ルソーの「夢」私もこの作品の前に立ち作品の声に耳を傾けてみたい。作者の情熱を感じてみたい。美術音痴?の私にもこの作品は語りかけてくれるだろうか?そんな夢をみさせてくれる作品だと思う。

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紙の本極北クレイマー

2009/06/02 00:38

海堂ワールドへようこそ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 北海道極北市。地場産業に乏しく観光誘致には失敗。過疎と高齢化が進むこの街は住民がこのままでは財政破綻するかもと冗談のように囁きあっている。
 そんな赤字の五つ星と揶揄されている極北市民病院に大学から一人の医師が赴任してくる。外見からクマのプーさんとあだ名されるこの男の名は今中良夫。外科医になって8年目だがこんな北の果てにとばされてくるぐらいだから勿論医局では本流ではない。むしろ教授の逆鱗にふれたのだ。
 財政圧迫の病院において今中の肩書は外科部長。肩書きは立派だが実態は非常勤。給料は事務員よりも安い。そんな病院に集う様々な人達。互いに牽制しあう赤鬼インチ用とコマネズミ事務長。薬局のダンゴ三兄弟。妖怪のような看護師長。でっぷりしたワンマン市長に腰ぎんちゃくの赤鼻課長。誰もがわがままでいい加減。そんな人々が繰り広げるドタバタな毎日の中で静かに進められていた官僚による陰謀。それが病院の良心ともいうべき三枝医師の逮捕という事態になった時大きなうねり北の大地を襲う。
 お馴染みの海堂ワールドが繰り広げられ懐かしい顔があちこちにででくる。官僚による医療の破壊というおなじみの持論も健在だ。確かにこの作品では出産時の医療ミスというテーマが描かれているがお産は昔は命がけだった。しかし今では無事であるのが当たり前。お産で亡くなったという話をほとんど聞くことがない。しかしそれは現場に携わる医師や看護師の方たちの努力の賜物であってのこと。医療技術が進んだ現代においてもお産というものには常に不確定の部分がつきまとう。だが私たちはただお産は安全だという認識しかない。だから異常事態に直面するとすぐ医師を責める。そんな厳しいストレスにさらされる産科医になろうという人は減りそれによりまたお産の現場はますます不安定要素が増えていく。そんな負の循環に陥っていく。
 作中にこんな言葉がある。「天国と地獄は隣同士。どちらにも御馳走と長い箸が用意されている。地獄の亡者達は自分のことしか考えず自分の口にはいれられない長い箸で食べ物を争って飢える。天国では長い箸で他人に食べさせてもらい自分も食べさせてもらう。」心衝かれる。
 今の世の中何かあると自分以外の人間を責め立てる。それはマスコミも私たちも変わらない。みんなが何かを求めているだけで何かをしようと思わない。そんな私たちの意識をかえていかなければもっと貧しい社会になってしまうという警告が感じられる作品だと思う。

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紙の本聖女の救済

2008/12/13 22:25

女って恐いでしょ?

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本を読み終えた時思わずそっかーと叫んでしまった。それぐらいこのタイトルの付け方は素晴らしいと思う。トリックには目新しさがあるわけではないのだがその方法が斬新だ。
 誰もが羨む結婚をした綾音。しかし結婚前にある約束を夫と交わしていた。それは一年たって子供ができなかった場合には離婚するという事。そして約束の期日が迫ったある日夫から離婚をきりだされた綾音は夫を殺す決意を固める・・・
 犯人とガリレオの静かなる対決。焦点は犯人が使ったトリックだ。物理的には可能でも実行不可能と言わしめたその方法とは?中盤から一気に畳みかける展開には目が離せない。ただ謎解き部分になるとちょっと単調かな。でも内海刑事が福山雅治の曲を聞くシーンなどにはニヤリとさせられてしまう。ファンの心理をよんでるよね。素直に面白いといえる作品だ。
 
 

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紙の本傍聞き

2008/12/06 21:46

後悔させない一冊です

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表題作の他3編からなる短編集。保護司・消防士・刑事・救命救急士といずれも人との関わりが深い職業の人を主人公としている。どれも面白いが特に表題作が印象深い。
 傍聞きとは聞き慣れぬ言葉だがどうしても相手に信じさせたい情報を別の人を介して相手に伝えるというテクニックらしい。つまり漏れ聞き効果。相手から直接聞くよりも別の人から聞いた方が信じやすいということらしい。主人公の刑事は同僚だった夫に先立たれ今は女手ひとつで小学生の娘を育てている。娘は何か母親に腹をたてると口をきかなくなり代わりにハガキを書く。だからハガキが届くまでは何に怒っているのか解らない。これをやられるとかなりイライラするので文句があるのならちゃんと口で言いなさいと常々言い聞かせているのだが一向に直らない。そんな中隣家の一人暮らしの老女の所へ泥棒が入る。一人で留守番をしている娘の事が気にかかりつつも仕事のため連日帰りが遅い日々。そんな時にまた娘からのハガキが舞い込むようになる・・・
 意外な展開で読者を飽きさせない。特に最後にわかる娘の気持ちがいじらしくていい。寄り添い助け合う気持ちが伝わってくる。刑事物であると同時に親子物でもあり人情物でもある。短いけれどすごく感性されてると思う。
 どの物語にも共通しているのは主人公達がみな背筋をピンとはったような生き方をしていることだ。だから読後感が清々しいのだろう。出会えてよかったとおもえる一冊だ。

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紙の本東京島

2008/07/08 00:44

人間は食欲と性欲からは逃れられない

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 最初に島に漂着したのは隆と清子だった。会社を早期退職してヨットでの旅行中に遭難したのだ。やがて20人を越す日本人の若者達と10人位の中国人達も別々に漂着する。日本人達は島を東京島と名付けコウキョマエとかオダイバとかトーカイムラなどという地名をつける。島の周りは流れが早くて脱出は不可能。しかし砂浜に謎のドラム缶が多数転がっているところをみると誰かが島に不法投棄にやってきたらしい。待ち続けるものの助けは一向に来ず次第に絶望感だけが募っていく。そんな中唯一の女として清子は奔放に振る舞い隆はだんだん力を無くしていく。それから5年。隆と2番目の清子の夫は謎の死をとげ唯一の女として男達の間に君臨してきた清子の地位ももはや落ち目。そんな中誰が父親かわからない子供を身ごもってしまう。これは島の意志であるとして妊娠を期に自分の存在を神格化しようとする清子。そんな時新たに島に漂着してきた者がいた・・・・
 島での生活がリアル。とにかく何もない島なのだ。とれる魚は不味いし果物がたわわに実っているということもない。熱くて何もなく食欲に常に悩まされている。そして自分で食料を調達しなければ生きていけない。病気になることは死に直面することだ。そんな中食べたいと願うのが山崎の食パンだったりケンタッキーだったりで身近に想像できるものばかり。
 身勝手でわがままでバイタリティ溢れた清子。彼女は女を武器に日本人と中国人のグループを渡り歩く。一方男達はというと集団で行動し生活力に優れた中国人達に比べ日本人の男達はブクロだのシンジュクだのと名付けた所に個々に暮らしそれぞれが自分の趣味や内面生活に没頭する。けっして統率もされないバラバラの共同体。そこには助け合いの心などは既に無くあるのは他人に対する猜疑心と欲望だけ。そこにみえるのは現代社会における私達の姿なのか?
 相変わらす桐野夏生は居心地の悪い作品を投げかけてくる。

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紙の本木洩れ日に泳ぐ魚

2007/09/08 21:22

真実は何よりも大切?

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ある部屋の一室。明日別れる二人が最後の夜にお酒を酌み交わしている。荷物が運び出されたがらんとした部屋で向き合う男と女。探り合うような二人の会話はいつしか一年前のある出来事について語られていく・・・
 登場人物は二人だけ。その二人の視点で交互に語られていてその会話の中から二人の関係が徐々に浮き上がってくる。まるで深い湖の底から魚がふわりと浮き上がってきて鱗が陽の光にきらりと反射しては消えていくように新しい事実が次々に読者に提示されていく。その不思議な感覚にいつの間にか引き込まれていくのだ。それが真実なのか空想なのか現実なのか夢なのか。確かなことは示されない。ただ二人の感情と記憶が語られていく。
 ゆらゆらと魚が泳ぐようにゆったりとした展開だ。木漏れ日の中で泳いでいるのは鯉?そんなイメージを抱いたのだが。すべての真実があかされる様な展開ではない。そもそも真実は重要ではないのだ。二人の濃密とした感情がむき出しになっていく。
 深い森の中で湖のほとりにじっとたたずんで湖面を眺めている。湖面は静かでさざ波もたたない。しかし奥底には大きくうごめく魚が潜んでいる。そんなたたずまいの作品だ。こんな恩田陸も悪くないと思う。

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紙の本家日和

2007/07/10 00:25

家族って一番近しい他人?

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 さらっと読めちゃう6つの短編集。ネットオークションにはまる主婦、主夫生活に楽しみを見いだす営業マン、別居をきっかけに自分の趣味にどっぷりつかる夫、若い男性とのほんのささやかな接触で夢想にふける妻、思いついたらすぐ転職してしまう夫に振り回される妻、妻のロハスな生活についていけない夫。どこの家でもありそうな話である。それをユーモアたっぶりに描いている。読後韓もとてもいい・どの作品も前向きな結末なので明るい気分になる。
 考えてみれば夫婦って不思議。最も近しいのに何考えているんだかわかんなくなる。他人のはずなのにお互いに知り尽くしたつもりでいる。空気みたいな存在だなんて誉めてるのかけなしているのかわかんない事を平気で行ったりする。一緒に暮らしていても観ている方向がだんだんずれてくる。
 夫婦にも定期点検が必要じゃないかな。修理できるとこ、できないとこ、リニューアルするとこ、保存すべきとこまず状態をきちんと把握しとかなくちゃね。以心伝心言わなくてもわかるなんて思っちゃダメ。わかってるだろうと思っていることでもちゃんと相手に伝えなきゃだめなんだなあとこの作品を読んで感じた。
 家族って時に鬱陶しくて腹が立ってイライラするけどでもやっぱり自分の拠り所なんだなあ。

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紙の本心にナイフをしのばせて

2007/01/17 01:19

歳月は遺族を癒さない

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 あの酒鬼薔薇事件よりも前にこんな猟奇的な殺人事件があったことを本書で初めて知りました。それも犯人が少年であったということも。その当時この事件はかなりセンセーショナルに扱われたのではないでしょうか。しかし今どれだけの人が覚えているのでしょうか。
 人は忘れる生物です。でも本書は忘れることによって社会的に成功をおさめた加害者と忘れることを許されずに葛藤を抱えて生きてきた被害者の生々しい記録だと思います。
 残された遺族の苦しみは長い年月をへても少しも癒されていないのです。それほどの衝撃と混乱を抱えながらなおかつ地道に一歩一歩のたうつように生きている被害者の家族。一方少年法により守られわずか数年で社会復帰を果たし地位も名誉も手に入れながら被害者に一度も謝罪せずに暮らしている加害者。法律上はともあれ人間的にこれが更正したといえるのでしょうか。しかし現実問題として私達の国はこれを更正と呼ぶのです。一方何の罪もなく突然家族を奪われた被害者はその混乱の中でただ必死に生きていくだけです。これではあまりに不公平ではないでしょうか。本書の中でも述べられているように国が少年法によって加害者を守るのなら同様に被害者も守るべきではないのでしょうか。
 人は決して忘れてはいけないことがあると私達に問いかけてくれる記録だと思います。

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紙の本三匹のおっさん 1

2009/04/21 21:11

これシリーズになりませんか?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 若い時には60歳なんてホントおじいさんだと思っていた。しかしいざ自分がだんだんその年代に近くなってくると還暦に赤いチャンチャンコなんてまっぴらごめんである。そりゃ若い時みたいに体は動かないかもしれないけれどまだまだ席は譲られるよりも譲る側だと思っている。そんな私にとってこの作品のおっさんたちの活躍劇は痛快だ。
 昔は悪ガキで鳴らした御町内の還暦トリオが町内で起こる様々な事件を解決していく全部で6つの物語である。警察に被害届をだすような事件ではないが当事者にとっては深刻な問題を知恵と経験そしてちょっぴりの腕力で解決に導く。まさにバッタバッタという感じで快刀乱麻読後感は爽快だ。文章もユーモアたっぷりで読んでいて思わずにやりとする場面やそうそうわかるわかると相槌をうちたくなるところも満載だ。ただじいさんの世代とその孫に当たる世代が生き生きと描かれているのに対してその息子夫婦がちょっと情けなく描かれているのが同世代としてはちょっと痛いところかな。
 おっさんという響きがこんなに温かく感じさせる物語を送り出した作者に感謝。
 
 

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紙の本5年3組リョウタ組

2008/02/22 22:48

日々普通に頑張っているすべての先生に対する応援が感じられる作品です

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 中道良太25歳。5年3組は今まで低学年ばかりだった良太が初めてもつ高学年だ。勤めているのは希望の丘小学校。東京から新幹線で1時間半ほどの県庁所在地にある市で一番の伝統を誇る公立小学校だ。各学年ではクラスごとに成績とか生活態度などの競争が行われている。良太はのクラスは毎年ビリだ。影ではバカ組リョウタ組などと呼ばれている。それを気にかけぬふりをしているがでは今年こそは最下位から脱出したいと思っている。そんな良太のクラスに新学期早々教室から脱出する児童がでてきてしまう・・・
 主人公のリョウタは何となく小学校教師という職業を選んだ。いわば成り行きである。理想や夢があるわけでもない。小学校は楽しいけど教師というのは自分が生きていくための仕事として選んだのであっていい教師にはなりたいと思うけど生活のすべてを捧げるのはちょっと違うと思っている。髪は少し茶髪に染めジャージの下にはお気に入りのシルバーのネックレスをしているような今時の若者である。そんな彼が学級崩壊の危機やいじめなどの様々な問題に同僚の教師と共に立ち向かっていく姿が四季を通じて描かれている。
 リョウタ先生は決してスーパー先生ではない。どこにでもいる普通の先生だ。毎日のペーパーワークにくたびれ果て問題が起きるたびにあたふたと慌てる。でも決して逃げない。頭の中であれこれ考えるより自分の気持ちに正直にぶつかっていく。その姿が爽やかで共感を呼ぶ。昨日できなかったことができるようになるその瞬間の子供達の喜びや驚きの顔を観られることが教師としての醍醐味であるというリョウタの姿に熱いエールを贈りたくなった
 教師という職業。大変な割には給料もそんなに貰えるわけではない。でも日々感じるやりがいは生涯賃金などでは表せないものがあるんじゃないだろうか。誰の心の中にも大事な思い出と共にしまい込まれている先生の姿が一人でもいるはずだ。生きている限り忘れられない存在になれる。なんと素晴らしい職業だろう。
 これから教師を目指そうと思っている人はとくに是非読んで欲しいと思う。現実は厳しい。でもリョウタ先生のような先生が一人でも多く現れて欲しいと思う。

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自分だけは違うという思いこみは危ない?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 クレーマー。最近よく耳にする言葉だ。本書は百貨店のお客様相談係として様々なクレームに対処してきた作者が具体的なケースと対応の仕方を丁寧に教えてくれている。これは単に販売業だけの問題ではない。今や学校や病院など様々なところにまで広がっているクレーマーの本質をきちんと見極め対処するための指南書なのだ。
 泣き寝入り。ちょっと前まではよく聞いた言葉だ。今や泣き寝入りせずに正々堂々と自分の意見を主張する人が増えてきた。とても素晴らしい事だと思う。でもちょっと間違った事を主張する人も増えてきた。いや本人にとってはすこぶる当たり前のことだろうけどもそれはちょっとおかしいんじゃないと思えるような事も多々ある。人の立場に立てないというか客観性を持てない人が増えたのだろうか。
 少し前までの私達の住む社会は地域社会だった。つまり隣は何をしている人かがわかっていたし顔見知りがあちこちにいる集団社会だったし家族の構成人数も様々な世代にわたっていた。つまり立場の違う意見をきくことが出来たと思う。しかし核家族化が進み家族単位の構成人数も少なくなり隣はなにをする人ぞという現代社会において他人を思いやる気持ちが薄れてきているような気がする。また近頃社会の風潮が所謂言った者勝ち黙っていると損をするという風になってきてはいないだろうか?物事を損得で考えるという経済観念がこういう事態を引き起こしているような気がする。
 自分の意見を主張するということは素晴らしい事だ。でも同時に他人の意見も聞き入れられるという柔軟な発想を持つことこれも大事なことではないだろうか?決して人ごとではなく他山の石として読むことをお勧めする。

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紙の本春を待つ谷間で

2007/10/05 22:56

決してベストセラーにも平積みにもされることのないこのシリーズの熱烈なファンの一人なのです。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 チャイナタウン生まれの中国系フメリカ人リディアとアイルランド系アメリカ人ビルの私立探偵が活躍するシリーズの第6作目。毎回交互に語り口が交代するが今回はビルの視点から。
 季節はもうすぐ厳しい寒さを迎える頃。ビルはいつも休暇を過ごす山小屋に向かうが、今回初めてこの地で仕事を引き受ける。依頼人はイブという女性。自宅から盗まれた品物を取り戻して欲しいという。たが調査を始めた途端友人の酒場の地下室で死体を発見する羽目になってしまう・・・・
 いつものマンハッタンから離れて今回は立ち寄るつもりがない限り通らないまた立ち寄る理由もないような辺鄙な片田舎である。そこに依頼者である女農場主、その町を牛耳る企業経営者、ビルの友人の警察の捜査官、縄張り意識の強い保安官、けちなギャング、不良少年など個性溢れる面々が登場する。所謂アメリカの片田舎にいそうなステレオタイプな登場人物達が共感または反感にしろ感情移入できる人間として描かれている。
 特に見かけはがさつそうな大男だが実はモーッアルトやシューベルトを愛しきちんと調律されたピアノを弾くビルと小柄で辛辣なしかし心根の優しいリディアのコンビがすごくいい。二人の丁々発止のやり取りの中にもお互いに対する深い信頼感と信頼しているが故に尊重して立ち入らない距離感をもつというスタンスが素敵だ。ビルが口説きリディアがかわすという構図は一作目から変わらないが二人の関係にも微妙な変化がみえ謎解きとはまた別に興味をそそられる。
 私の大好きなこのシリーズ。次はどんな舞台で出会えるのだろうか。とても楽しみである。

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