サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 凛珠さんのレビュー一覧

凛珠さんのレビュー一覧

投稿者:凛珠

441 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本悲恋斬るべし

2002/07/26 00:20

切ない激情の悲恋。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「なぜ人は、穏やかな幸せに満足せず、短くて辛いばかりの情熱をもとめるのだろうか──」
 江戸時代、主に武家の男女の、激しくも哀しく切なく、皮肉的で絶望的な悲恋が描かれている。たとえ深い愛が無くとも、時が流れれば情が生まれる。しかしそれを待てず、絶望的でありながらも、現在の真の気持ちに従順な者たち。それゆえにか、時は彼らに味方をしない。
 どの話も残酷で、残酷なだけに美しい。安西篤子氏は武家の男女の悲劇を書いたシリーズを長年書き続けておられるが、そのシリーズが好きな方にも向いているだろう。著者の滝沢美恵子氏には、是非また時代小説を書いて欲しいのだが、最近は小説すらあまり書かれていないようだ。読者として、好きな作家が存命でありながら新作が出ないほど哀しいことは無い。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本黒髪 宮田雅之美人画集

2002/07/13 14:18

白い肌にまとわりつく黒髪の妖美な世界。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 画家・宮田雅之氏の作品集。それぞれ「艶」「雅」「麗」「妖」「粋」「竹取物語」「裸婦」「黒髪」「飛天」「文学の中の女たち」をテーマに作品が数点づつ配置されている。
 特に中世の女性の黒髪の妖しさが圧巻。十二単の上を、時には白い肌の上を、黒髪はのたうちまつわりつく。女性の顔は無表情に近いが、口元の僅かな笑みは酷薄に見える。
 それにしても、勿論どの作品も切り絵として素晴らしいのだが、線の細かい作品は切り絵というよりもペンで描いた絵のように見える。切り絵というと黒髪に白い艶を入れず、平面的に仕上げるのが普通だという意識があったのだが、そうではなかった。日本髪の艶やかさを現す細かな艶。そして「静御前」という作品では、静御前が下に着ている赤い着物が、上に着ている白い着物を薄紅に染めている様子までが表現されている。
 鑑賞する分にも目の保養だし、絵を描く人はとても勉強になると思う。「艶」「雅」「麗」「妖」「粋」がここにはある。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本嵐が丘 下

2002/07/10 01:19

地下の嵐。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 物語は次世代の人々が中心となる。それでもヒースクリフは影で爪を研ぎ、ついには嵐が丘だけでなくスランシュクロス屋敷をも手に入れることになる。彼は復讐を遂げたわけだが、最後まで読んでしまえば、結局復讐は完遂しなかったということが分かるだろう。憎い者でありながら、歴然として現れている、今は亡き愛しい人の面影。ヒースクリフは復讐よりも、静かでありながら陰鬱で激しい嵐のような愛情に殉じたのだろう。
 原題「ワザリング・ハイツ」を「嵐が丘」と訳したのは斎藤勇という方だそうだが、全く素晴らしい訳だと思う。嵐といってもただ激しいだけではない。陰鬱に曇り、何か得体の知れないものを孕んだような空模様をもイメージさせる。陰鬱な大地、そして陰鬱な人々の激しい葛藤。地上の嵐は、「彼ら」が眠る大地の下で眠ることとなったのか。広大な大地とその上に屹立する墓標が目に浮かぶようで、この静かに激しい物語の締めくくりにあまりに相応しい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本嵐が丘 上

2002/07/10 00:52

地上の嵐。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 虐げられ恋人を失った男が数年後に舞い戻り、かつて己を痛めつけた者どもに壮絶な復讐を果たす。陰鬱と愛憎が全面を支配した物語──と聞いていて、中学生の頃から読みたいと思っていたのだが、何故か今まで読む機会が無かった。
 物語の始めからクセのある人間たちが登場し、これは普通の小説ではない、と思わせる。ロックウッドがキャサリンの幽霊に出会う場面は、ゴシック風で何とも不気味で印象に残った。
 ヒースクリフのキャサリンへの強烈な愛情は読み取れたのだが、壮絶な執念を燃やすほどの憎しみや恨みの心情はあまり描かれておらず、少し説得力に乏しいような気がした。だが、これは「第三者からの聞き書き」という形態を取っているゆえ、仕方が無いのだろう。
 ヒースクリフとキャサリンの絶望的な愛は破局し、物語は下巻へと続いてゆく。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本牢獄の花嫁

2002/07/06 23:59

絶望は幸福へと繋がる。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 黒岩涙香の翻案小説「死美人」をさらに翻案して江戸時代を舞台にした作品。今は隠居して、息子と婚約者の幸福を見守るばかりの身となった元凄腕与力の塙江漢。だが、突如幸福は打ち壊された。息子の郁次郎は冤罪で捕らわれの身となり、婚約者の花世の身にも危機が。江漢は肉親の愛情の為に老骨に鞭打ち、再び巨悪に立ち向かうこととなった……。
 昔の大衆小説らしく波乱万丈のストーリーで、次から次へと飛び出す謎の魅力に、息をもつかせずに読み進ませる。現代はこういう小説は殆ど無いと思うと少し淋しくもある。いくつもの謎が乱れからまり、少しづつ解けてゆく。
 読んでいて、家族の為に奔走する老いた江漢を応援したくなった。江漢以外にも清廉で実直な人々が登場する。たまには勧善懲悪も良いものだ。
 

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本寛政・お庭番秘聞

2002/07/06 23:06

影は走る。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は以前に「相模国に斬る」「薩摩国に倒す」という2冊シリーズで出版され、その後に「影は走る」と題して1冊にまとめられたものを、文庫化に際して改題した作品である。
 主人公はお庭番の寅こと伊吹竜之介。収められた作品は、それぞれ独立した短編として読むことが出来るが、伊吹が実の兄を見つけて斬るという目的を達成するまでを描いた連作長編にもなっている。
 お庭番とは、江戸幕府のスパイのようなもので、目的地に秘密裏に侵入して内情を探り、幕府に報告することが務めである。それによって幕府は藩を取り潰したりする。しかし、藩の方も取り潰されては困るから、お庭番の存在を察知すれば密かに始末してしまう。お庭番は過酷な任務であった。
 そうしてこの作品全体も、虚無と陰鬱な雰囲気が漂っているのが心地良い。話も勿論面白いが、主人公がとりわけ格好よいのだ。著者が一番円熟していた頃の傑作だろう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

愛情が強ければ強いほど。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「愛と憎しみ」──ベタな言葉だが、決して滅びない言葉であると思う。対象への愛情が強ければ強いほど、それが報われぬ場合、対象への憎悪がつのるのだろうか。
 本書収録作品では、インドの作家、クリシャン・チャンダルの「ピレートゥー」が優れていた。一見幸福そうに見える恋人同士。だが、嬉しげに微笑む娘の心底はどうなのか……。作中の台詞「女を嫁入り行列の駕籠に乗せ、寝台に寝かせ、そして四人の子供を産ませたら彼女の心の望みが奪えると思っている者は、女というものをまったく知らないのだ。女は決して忘れない!」──この言葉を、女である私は忘れないと思う。導入部を裏切る結末も効果的で、完璧な仕上がりである。
 そしてラードナーの「愛の巣」も、愛情溢れる家族という虚飾を剥ぎ、現実を描いている。妖女を描いた円地文子の「耳瓔珞」、愛する男を妹に譲って無理解な男と結婚し、文学も諦めさせられ、自己犠牲に生きる姉の、愛と心にきざした哀しみ、憎しみを描いて、寂しさが全面を支配している、芥川龍之介の「秋」、美少年兄弟の愛憎を第三者の女の視点から描く、岡本かの子の「過去世」など、収録作品は一級品ぞろい。レベルの高いアンソロジーに仕上がっているのは、流石この出版社と言うべきだろう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本宮田雅之切り絵の世界

2002/07/03 23:39

凄絶なまでな妖艶さ。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ペンでも切り絵らしく描くことは出来ように、それでも切り絵にこだわる宮田氏の姿勢は素晴らしい。絵だけでなく文字までが妖艶で神秘的であり、素晴らしい作品だ。
 切り絵というとカクカクしたイメージがあるが、宮田氏の作品は女性の黒髪の柔らかさなども見事に表現されている。黒髪は柔らかそうなだけでなく、繊細で妖しく、濡れているような質感までが伝わってきて、息を呑むばかりだ。それでいてシャープな線も勿論素晴らしい効果をあげている。
「墨東綺譚」の始めの絵、お雪が雨の中を走っている作品で、お雪の腰が思い切り柔らかそうに曲がっているところが小村雪岱に似ていると思ったのだが、やはり影響を受けたのだと、後のページでご自身が語っていらした。
 どの作品も全くもって素晴らしく、挿絵の元の作品も読みたくなった。宮田氏の他の本も、絶対に入手しようと思う。やたらと「素晴らしい」という言葉が重なったが、本書の感想はその言葉に尽きる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本智内兄助画集

2002/07/03 23:18

土俗的な神秘の世界にたゆたう童女たち。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 坂東真砂子氏の「死国狗神」や、皆川博子氏の「巫女」の表紙にも採用されている画家・智内兄助氏の画集。氏の作品の魅力である、土俗的で神秘的な世界と着物姿の童女の姿が満載である。
 しどけなく寝そべり、乱れた着物から、白く細い手足や胸元を露出させ、画面を見ている者の顔を、無表情でじっと見つめる童女たち──。色気がありながらも「狙っている感じ」は全く無い。妖しく蠱惑的な世界に目が惹き付けられ、心までが絵の中の世界に浮遊して行ってしまいそうだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本春琴抄 改版

2002/06/30 01:04

闇の中こそ至高の世界。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 句読点や改行が非常に少なく、台詞の記号も殆ど無いという作品で、1頁丸々文字だけという頁もある。最初手に取った時は、正直「読み辛そう……」と思ったが、いざ読むと物語調の文章が流れるようで、スイスイと読めてしまった。
 素人の推測でしかないが、前年に書かれた中里介山の「大菩薩峠」(顔面が焼け爛れたお嬢様、彼女の忠実な奉公人、盲目の男と結ばれる……)や、江戸川乱歩の「盲獣」の影響を受けているのだろうか?
 妖しく凄絶なまでに奥深い至高の物語が、鬱陶しい心情説明無しに描かれており、完璧なまでの美の世界を構築している。本作品は心情描写がなされていないことで批判されたそうだが、本作品においては「心情描写」は必要無いのだ。いや、盲目の世界にこそ全てがあるというのが本作品の主題であり、それは取りも直さず、ストレートな心情描写(目に見えるもの)無しに、地の文章で十二分に佐助と春琴の心情を「理解出来る」作りになっているということなのだ。それが谷崎の狙いであろう。心情描写をすれば、佐助が崇める春琴も途端に俗っぽくなってしまうだろう。同時に作品自体も。
 そして生への痛烈な問いかけと訴えがなされていない、という批判も当てはまらない。この作品は、これで完璧なのである。佐助と春琴の至高の世界に、部外者がどうして否を唱えることが出来ようか。それほどまで本作品は素晴らしい。佐助と春琴の至高の世界を描いているこの作品自体が、既に二人の世界になっているのである。その世界においては二人の間の子供などは、単なる副産物ですらない。全く存在意義が無いのだ。子供に価値を見出せば俗に堕してしまうだろう。佐助と春琴の至高の世界である盲目の世界は、俗からは解放された別天地なのである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

きらびやかな櫛、簪、笄、いち止、印籠……。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 美しい櫛、簪、笄、いち止、印籠が、オールカラーで紹介されている。少々値は張るが、それに見合うだけのボリュームと美しさだ。そして珍しい。隠れキリシタンが使ったと思われる、ロケットペンダントのように蓋をはずすと十字架が現れる簪や、魚の形をした櫛、螺鈿で花びらや蝶を表した櫛、水晶やびいどろの涼しげな簪、珊瑚玉が柿の実に見立てられた櫛、豪奢なびらびら簪……本当に美しく芸が細かくて、まさしく芸術品だと思う。
 日本髪を結わなくなった現代では、こうした簪や櫛などは見かけなくなってしまったわけだが、小さい簪なら現代でも流行って良いのではないかと思ってしまうほどである。これほど素晴らしいものを知らないのは勿体無い。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本藤十郎の恋・恩讐の彼方に 改版

2002/06/15 00:03

近代的時代小説。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

江戸時代というと仇討が持て囃されたと思われがちだが、実際は滅多に起こることでもなければ、喜んで仇討旅に出かける者もおらず、敵を討ち果たしたという例も殆ど無い。殆どは路銀に窮し、志なかばにして果てるのだ。仇討に出かけた(出かけさせられた)者は恐らく、敵を討ち果たして故人の恨みを晴らし武士としての面目を施すというよりも、自分を辛くあてどの無い境遇へ追いやった相手への私的な怨念、早く元の生活に戻る為に敵を討ち果たしたいという思いの方が強かったのではないかと私は思う。
 恩讐の彼方にと忠直卿行状記は、私が大好きな作品だ。特に前者は子供の頃に読み(子供向けに書き直したものだが)、ひどく感動したことを覚えている。
 忠直卿行状記は以前に映画を観て感動し、原作を読んだ。前者は安易な仇討物語になっていない点が新しいし、後者は権力者の寂寥を描いた点が新鮮だった。菊池寛の時代物は近代人の発想が色濃いということで批判されたこともあるようだ。確かに一理はあるが、文学であるし、何より現代人に共感されぬ作品を書いても仕方が無いのではないか。少なくとも私は菊池寛の時代物が好きである。それは近代的発想があるゆえだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本メドゥサ、鏡をごらん

2002/06/12 00:05

ミステリーではなくホラー。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 よく、ミステリーだと思って読んでいたら、途中から実はホラーだったと分かり、「夢オチ」のように拍子抜けしてしまうことがある。本書もそれなのだが、ホラーとしての出来が素晴らしい為、五つ星を付けた。それほど気持ちの悪い描写をしているわけでもなく、それでいて「本当に怖い思い」をした小説は、今のところ本書のみだ。
 読んでいて、メドゥサの恨みに満ちた表情が眼前に浮かんできたのは、まさしく恐怖だった。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本雪国 改版

2002/06/06 17:50

徒労とエゴイズムと破滅。

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私は川端康成の作品をそれほど沢山読んだわけではないが、川端は女性の自由をある程度書いてはいるが、女性を満足に受け入れることの出来る男性を書いていないように思われる。それゆえ作品には女性へのある種の厳しさ、冷たさがあり、読んでいて満たされた思いになることは殆ど無く、いささか苦しい。川端が幼児の頃に死んだ母への憧れと処罰願望を併せ持ち、同性愛経験者であったことと関係があるのだろう。
 この雪国、描写はとにかく素晴らしい。省略が多いので、やはり難解ではあるが。駒子の生真面目さを全て徒労と判断し、彼女のもとに通いながらも受け入れようとしない、昔の男らしいエゴに満ちた島村は、最後に駒子の清冽さに打ちのめされることになる。
 それでも、検梅で泣いた経験を語ったり、乳房が片方だけ大きくなったり、身体を大切にする為に無理をしないと言う駒子の姿には、痛々しいものがある。川端がどれだけ芸者の哀しみを理解していたかは不明だが。
 昔の男は女性の純潔を重んじながらも、自分のために芸娼妓に貞操を許さず、借金に縛られていたり奴隷のように扱われていた娼婦も平気で、誇らしげに買っていた。フェミニストでなくとも理解不能だが、そういう時代だったのだろう。買春の罪悪性に気付かない人間。現代の男は娼婦の自由意志を買春の言い訳にしているようだが、せめて恥ずかしいことだとは思って頂きたい。羞恥と、強制売春婦を買うことに嫌悪を覚えない人間には、自由意志でも買春を許してはならないだろう。純文学で書かれていることは、文学でも、実生活で肯定せねばならないような雰囲気だが、それは危険で、買春を肯定する必要は無い。
 作品が書かれたのは昭和初期。現実の芸娼妓がどのような思いでどのように暮らしていたかに思いを馳せ、「同じ位置に立って彼女たちの苦しみに共感し」、「間違った理想化をせず」、現実の彼女たちを鎮魂しようと思う。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本大菩薩峠 1

2002/04/30 21:44

現代でも充分すぎるほど通用する心理時代小説。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 理由のない殺人をし、哀願をしてくる女性を暴行し、その夫も打ち殺す、冷徹で感情の無い男、机龍之介。時たま見せる狂乱は、人間性との戦いの苦悩か。
 長い作品として有名ではあるが、有名な理由ゆえに読んだ人は少ないかもしれない。1〜2巻で挫折してしまったり。私は全巻読破するつもりでいるのだが。
 このちくま文庫版は、表紙の写真が市川雷蔵氏主演の映画「大菩薩峠」からというのが嬉しい。この映画では中村珠緒氏も作中人物と非常によく合っていて良かった。
 もう90年も前の小説だというのに、心理描写(特に机龍之介やお浜)が驚くほど優れている。作者・中里介山が、本作に様々の思想を盛り込んだことが窺える。
 是非20巻読破したいと思う。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

441 件中 31 件~ 45 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。