檜さんのレビュー一覧
投稿者:檜
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紙の本タクラマカン
2001/02/17 01:30
全方位の視線
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著者序文の日本礼賛がこそばゆい。
不況にあえぎ政治の混迷する日本にスターリングはエールを送ってくれているのだとは思う。
でもやっぱりこそばゆい。
目玉であるチャタヌーガ三部作は、なにかを書くにはぼくの手に余るので——正直なところ、スターリングのとっつきにくさ大爆発だ。わからないということはないが、疲れる。表題作「タクラマカン」は文句なしにおもしろいけど。大森望氏は「自転車修理人」のラストで爆笑したそうだ。なにがそんなに可笑しかったのだろう?——冒頭の「招き猫」に触れたいと思う。
最初に日本に書き下ろされたこの小品は、ネット社会の未来についておもしろい視点を持っている。
ぼくたちが思い描くコンピュータ未来社会は——サイバーパンクの悪影響かもしれないけれど——いささか暗い。深刻なプライバシー侵害、ネット詐欺、クラッカーの暗躍。
しかし「招き猫」が描く日本はそれと正反対だ。
そこにあるのは善意なのである。ネットを通じてだれもがその人が必要としているものを知ることができ、それを融通しあっている。アメリカのエージェントは既存の秩序を守ろうと汲々としていて、やりこめられる。
スターリングの視線は全方位に向いている。
あと、テクノスリラー「小さな、小さなジャッカル」も楽しい。だってほんとうに“テクノ”だから。
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