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yu-Iさんのレビュー一覧

投稿者:yu-I

35 件中 31 件~ 35 件を表示

紙の本エロティシズム12幻想

2006/07/10 09:18

一冊でお腹いっぱいになれる、大満足アンソロジー

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エロティシズム、エロス、官能、等々…同じような意味合いで使われることの多い語であるが、どれもニュアンスが違う。本書には“エロティシズム”の名が掲げられているが、収録作は多種多様。“エロティシズム”という言葉の響きにとらわれない、バリエーション豊かな競作集となっている。その中の何作かを紹介させていただく。
「インキュバス言語」 牧野修
とにかくぶっ飛んだ発想である。とんでもない奇想を躊躇なく展開させてゆく力強さ、抱腹したくなるのにどことなくブラックなストーリー、珍妙な非日常感などは“ドタバタ”と評された頃の筒井康隆をすら彷彿とさせる。とにかくインパクト大、の作品。
「恋人」 有栖川有栖
この作者らしいリリカルでノスタルジックな物語—かと思いきや、終盤に思いがけない罠が待ち受けている。ひそかに罠をしかけて読者を驚かす手法はいかにも本格ミステリー作家らしいが、その驚きがぐっと本作の官能性を高めているところに手腕が光る。
「和服継承」 菅浩江
和装の女性というものは実に色っぽいものである。その端整な艶に女の狂気が被さって、不気味にじんわりと濃厚な色香を放つ一篇である。
「FLUSH(水洗装置)」 南智子
この作者の作品に触れたのは実はこれが初めてだったのだが、こんなに強烈なものを書く人だったのか、と正直仰天した。
“エロティシズム”と呼ぶにはあまりにも暴力的で、衝動的。それでいて、幻想的。どこまでが夢なのか?どちらが現実なのか?魅惑的な混乱を誘う、読まなければ損をする傑作。
「活人画」 作者不詳/北原尚彦・訳
前半のロマンティシズムを、後半の展開が鮮やかに、猟奇的に、くらくくらく裏切ってゆく。
ひんやりと冷たい美しさにグロテスクが混じりあうこの物語の、作者が不詳であるという事実が、よりいっそう本作に後ろ暗い背徳的な深みを与えていると思う。粋な計らいである。
「鬼交」 京極夏彦
“エロティシズム”という言葉のニュアンスを丹念に、実に細やかに追っていった作品だと思う。
ストーリーらしいストーリーは存在しない。直接的な官能描写も見当たらない。
それでいて“エロティシズム”の欠片を寄せ集め、物凄い技量でもって組み上げた本作は、息詰まるほど濃密なエロスに満ち満ちている。さすが京極夏彦、である。
その他にも津原泰水の「アルバトロス」は短編でありながら、重厚、と呼びたくなるような力作だし、森奈津子の「翼人たち」はいかにも森奈津子らしい、キュートでエッチな作品に仕上がっているし…捨て作なしの粒ぞろい。一冊でお腹いっぱいになれる、大満足アンソロジーである。

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紙の本ひらけ!勝鬨橋 新装版

2005/10/06 19:06

何てカッコイイユーモア小説なんだ!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ユーモア長編ミステリー、と銘打たれている。
たしかに前半はとぼけた味わいがあり、ユーモラス。
舞台はとある老人ホーム。その中でも、物忘れも激しく会話はちんぷんかんぷんでゲートボールもからっきし、という、ホームの中でもバカにされっぱなしの老人たちが主役だ。
とはいえいつか見返してやろうなどと心燃やすこともなく、のほほんと暮らしているのだが、ある日館長が悪質な詐欺にひっかかり、ヤクザにホームの引渡しを要求されてしまう。
そして老人たちとヤクザの攻防戦がはじまる。そして…
この本の魅力を知ってもらうために、あえて書いてしまおう。
実はこの老人たち、若かりし日はスポーツカーをさんざん乗り回した大の車好きグループなのです。
そして最後にはポルシェに乗り込んで、ヤクザのベンツと激しいカーチェイスを繰り広げるのだ!
これがもう、実にカッコイイ。スピード感と正義感のあふれる名シーンの連続に、つい熱くなってしまう。
だけど運転しているのは老人たちなんだよなぁ、という、格好良さとユーモアの絶妙な融合。
「占星術殺人事件」でデビューし、大トリックを駆使した推理小説を次々に発表してきた著者であるが、なんと20年前にはこんな作品も書いていたのだ。
意外なふうでもあるが、読んでみれば骨太な構成や力強い描写、豪快なストーリーテリングはまさしく島田荘司。あとがきで著者自身も「自分の作品のベストに入れたい」と書いているが、楽しく読めて熱く興奮できて、最後にはぐっとくる感動。これぞエンターテイメント、である。

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紙の本殺人鬼

2005/10/15 05:58

悪趣味を楽しむ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

端整な本格ミステリを書く著者が、元来好きであるというスプラッターのジャンルで徹底的に遊び倒した作品。
スプラッターであるから、誰彼かまわずすすめられるものではない。正直本当に気持ち悪い。非常に好みの分かれる作品だと思う。
しかし、好みの分かれる、というのは、ただたんに残虐なスプラッター描写のゆえだけではない。
たとえば、キャンプをしにやってきたメンバーが山に閉じ込められ、次々に襲われて…なんていうあらかさまに「十三日の金曜日」を彷彿とさせる設定。
たとえば、「殺人鬼」なんてあまりにも明快なタイトルをつけてしまう点。
恐怖をいったん取り除いて冷静に見てみれば、ほとんど冗談みたいな話である。
読みすすめてみても、展開はB級ホラーそのもの。なんていうと貶しているみたいだが、ホラー映画好きの作家が好きな世界でとにかく無邪気に遊んだという、その遊び心がこの作品のいちばんの魅力であろうと思う。
またこの作品には、ラストの大どんでん返しを得意とする著者の作品の中でも、ある意味では随一かと思われる大トリックが仕掛けられている。
このトリックがまた、すごいのである。
後に「あんな馬鹿なネタを本格ではやれないので」というようなことを著者自らがインタビューで語っていたが、そうだろうなあと思う。
それ自体が悪趣味な気もする、そんな途方もないラスト。やっぱり一歩間違えれば冗談みたいなネタである。
このB級感をあえて楽しむ遊び心を持てるかどうか、というのが、この作品を楽しめるかどうかの分かれ道だと思う。

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紙の本クー

2005/10/09 17:30

躍動感溢れる陰惨さが強烈な印象を残すSF

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

濃密な本格ミステリを書く作家というイメージの強い竹本健治であるが、実は同じくらいSF作品も多く手がけている。
本書は荒廃した未来世界を舞台、非人道的な戦闘訓練を受けた美女を主人公に設定しており、長さも四百枚程度であろうか著者の作品の中では比較的短く、内容も躍動感に富んでいてエンタテイメント性の強い一冊になっている。
ただし、ライトノベルのような作風を期待して手にとると大きく裏切られることとなる。“荒廃した”未来世界が舞台で、“非人道的な”戦闘訓練を受けた(しかも本人の意思に反して)美女が主人公なのである。なんだか他にも見られそうな設定ではあるが、これははっきり言って非常に暗澹たる物語である。それもなるほど「あとがき」を読んでみれば、そもそも「思いっきり救いのない、八方塞がりな話を書いてみたい」というのが執筆の動機だったと著者本人が述べている。
また、重く暗いテーマと派手な戦闘シーンという取り合わせは同著者の「パーミリオンのネコ」シリーズにも見られる(その他設定にも似通ったところが多くあるので、本書が気に入った方は手にとってみると良いかもしれない)が、本書をとりわけ強く印象づけているのは随所に散りばめられた官能的なシーンであろう。この著者の作品では、官能描写は倒錯したシーンのスパイス的に用いられることが多いと感じているのだが、本作ではいかにもエンタテイメントらしい、ストレートなベッドシーンにかなりのページが割かれている。
しかしその描写も、
“眼の前が真っ白な光に包まれ、次にそれは砕け散って、闇に流れる無数の赤い星になった。星ぼしはうねり、逆巻き、巨大な波となって、彼女の意識を呑みこんだ。”
のようなSF的表現が駆使されており、死と隣り合わせの危機的状況下であることなどと融合して、一種異様な効果をあげている。
この点は個性的な登場人物たちが次々に戦闘を繰り広げてゆく躍動感と、陰惨で重苦しいテーマがあいまって生まれるこの作品の異様な雰囲気を、そのまま象徴しているといっていいだろう。

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著者は死刑廃止論者です

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おそらく、本としては失敗作であろう。
死刑廃止を訴えている本ではあるのだが、内容にお互い殺しあっている部分が多々あり、全体として主題の明確さに欠けている。
そもそもタイトルがどうもサブカルチャー的で、悪趣味で不謹慎な娯楽本だと思って手にとる人がいるのでは……って、実は筆者がそうだったのであるが。
著者は、奈良時代から現代にいたるまでの残酷な処刑制度・処刑法の紹介に、本書の半分以上のページを割いている。
ホラー小説のような過激な描写こそないものの、赤ん坊ですら容赦なく首をはねられたとか、少しでも長く生かして苦痛を与え続けるためになされた工夫だとか、ここに書かれた事実だけで十二分にショッキング。死刑廃止を訴える本であってサブカル本ではないと先に書いたが、実はこれで猟奇的な興味もけっこう充たされる。
しかし死刑の歴史を追っていって現代に近づくにつれ、「身の毛もよだつ」というよりはセンチメンタルな表現が目につくようになる。
これが本書のいちばんの失敗だと思う。
終盤に展開される著者の死刑廃止論が、まるでただかわいそうだから言っているかのような印象を与えてしまう。
死刑廃止を訴えるにしては前半の猟奇趣味が邪魔になり、悪趣味な娯楽として愉しむには後半が深刻すぎ、読みやすい軽妙な文体や感傷的な逸話は、「人命尊重」「人権意識」という言葉を安っぽくしてしまう。
しかしこの本は、この失敗ゆえに、ある一つの価値をもったのではないかと思う。
たとえば、サブカルチャー的な猟奇趣味を期待して手にとった読者が、後半に述べられる筆者の意見に触れ、死刑史や死刑廃止論に興味を持つようになったなら。
あるいは、これは著者の意図とはかけ離れたことであろうが、死刑廃止論を読みたくて手にとった読者が、前半のサディズムに触れ、闇に遊ぶ愉しみを新しく知ったなら。
それは一冊の本として、確実に成功であると思うのだ。

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